電気代高騰が業績直撃のNTT、長期化すれば値上げも?--デュアルSIMは「他社に遅れることなく」

 NTTは2月9日に2022年度第3四半期決算を発表。売上高は前年同期比7.3%増の9兆5726億円、営業利益は前年同期比1.2%減の1兆5208億円と、増収減益の決算となった。

決算説明会に登壇する島田氏
決算説明会に登壇する島田氏

 同日に実施した決算説明会に登壇したNTT 代表取締役社長の島田明氏によると、NTT Limitedを統合したNTTデータが、旺盛なデジタル化需要に応える形でグローバルソリューション事業の好調が続くなどで好調とのこと。ただNTT東日本・NTT西日本を主体とした地域通信事業が電気代高騰の影響を大きく受けており、それをカバーしきれず減益になったという。

NTTの収益、利益増減要因。グローバルソリューション事業が好調に伸びる一方、電気代高騰で地域通信事業が大幅な減益となっている
NTTの収益、利益増減要因。グローバルソリューション事業が好調に伸びる一方、電気代高騰で地域通信事業が大幅な減益となっている

 電気代高騰の影響は年間で600億円程度を見込んでおり、既に450億円程度の影響が出ているというが、2022年度に関してはコスト削減で対処していく方針だという。ただ電気代削減に向けた有効な施策は少ない様子で、2023年度に向けては「どういう形で電力のコストアップを吸収するか、知恵を絞らないといけない。正直、結構悩ましい」と島田氏は答えている。

 今後も可能な限りコスト吸収の努力をしていきたいと島田氏は話すが、一方で「継続して電気料金上がるようなら、どこかのタイミングで消費者にお願いしないといけない時が来るかもしれない」と、電気代高騰が長期化すれば何らかの値上げが必要となる可能性も示唆している。

 なおNTTグループでは社員の居住地を自由とするリモートスタンダード制度を2022年7月から導入しており、リモートと出社のハイブリッドで働く対象者数はおよそ3割に当たる1万人にまで拡大しているとのこと。それに伴い単身赴任者も900人減少したが、新たに単身赴任した人が500人いるため、トータルでは単身赴任者の1割に当たる400人が減少したとしている。

NTTグループではリモートスタンダード制度の導入により、ハイブリッドで働く人が1万人に達したほか、単身赴任者も400人減少したという
NTTグループではリモートスタンダード制度の導入により、ハイブリッドで働く人が1万人に達したほか、単身赴任者も400人減少したという

 制度導入前はあまり単身赴任者が減少しなかったことから効果はあるとしているが、単身赴任者をどこまで減らすかは「可能な限り少なくしたいと思うが、支店長やある程度責任あるポストに一定程度の単身赴任者(が着くこと)は致し方ないと思う」と島田氏は回答。なお島田氏自身は顧客と会うことも多いようで、「かなり出勤していることは事実」と話している。

 また、最近話題となっている「ChatGPT」などの対話型AIについての質問に島田氏は、「カスタマーセンターのシステムなど、私たちのサービスにもAIはずいぶん前から導入している」と話し、NTTグループでも法人向けを主体として、AIやそれを活用したサービスの開発、提供を進めていると回答。ただ、AIは学習のさせ方によって強みなどが決まってくることから、「さまざまなコラボをしていった方がいいと思っている」と、社内外のAIを組み合わせて活用することも考えている様子も示した。

デュアルSIMはまず3社で--MVNOは「次のフェーズ」

 同社の主力子会社となるNTTドコモの2022年度第3四半期の業績は、営業収益が前年同期比1.5%増の4兆4244億円、営業利益が前年同期比0.3%増の8888億円と、こちらは増収増益の決算となっている。政府主導の料金引き下げ影響もあってコンシューマ通信事業は減収減益だが、法人やスマートライフ事業は順調に伸び業績を支えている。

ドコモのセグメント別業績。料金引き下げ影響によるコンシューマ通信の不振が続く一方、法人やスマートライフ関連は好調に伸びている
ドコモのセグメント別業績。料金引き下げ影響によるコンシューマ通信の不振が続く一方、法人やスマートライフ関連は好調に伸びている

 ただ島田氏によると、「年度末まで見通さないといけないが、数値を見るとドコモのARPUも4080円から4090円に上がっている」とのこと。料金引き下げの影響が収束するとともに大容量プランの利用が増えていることで、ビジネス環境は改善傾向にあるとしている。

 一方、コンシューマ通信事業の設備投資が2021年度と比べ低下している点について問われた島田氏は「通信設備の効率化によってやや減少しているが、2022年度末に向けて一定程度戻ってくると認識している」と説明。5Gの整備がやや遅れている部分があることから、年度末に向け設備投資を増やし、それをキャッチアップしていきたいとしている。

 その携帯電話事業に関して、2023年2月2日にKDDIとソフトバンクが、デュアルSIMの仕組みを活用し他社回線を活用したバックアップ回線サービスの提供を明らかにしたが、ドコモはその枠組みに含まれていなかった。この点について問われた島田氏は「2社と)話し合いはしているので、そう遅れることなく、同じようなタイミングで(バックアップ回線を)展開できると思う」と答えている。

 そのサービス提供時期について、KDDIとソフトバンクは3月下旬を目指すとしているが、島田氏は「日程については定かではない」と回答、準備ができ次第、2社に大きく遅れることなく提供したい意向を示している。料金も2社のトップが「数百円と言っているので、それくらいになると思う」と、同水準での提供を示唆した。

 ただデュアルSIMによるバックアップ回線に関しては、各社の回線を借りているMVNOにまで提供の範囲が及んでいないことを懸念する声が出てきている。この点について島田氏は「少なくとも現在は、3社の中の整理をすることにフォーカスしてスペックを合わせないといけない段階」と説明。MVNOとの議論は「次のフェーズだと思う」と答え、やや時間がかかるとの認識を示した。

 一方でNTTグループも、2022年7月に発生したKDDIの大規模通信障害以降、ドコモやNTT西日本が通信障害を起こしている。それゆえ島田氏は「私たちのレジリエンス(回復力)をどう高めるかも議論している」と話し、検討段階ではあるがネットワーク強靭化のため、2025年頃までに1600億円程度の予算をかけて取り組みたいとの意向も示している。

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