ジョブズ氏らITの巨人が集ったクラブの会報に見るPCの黎明期

Leslie Katz (CNET News) 翻訳校正: 編集部2023年02月10日 08時00分

 2022年12月にシリコンバレーの友人宅を車で訪れたとき、ある「名所」を通りかかった。故Steve Jobs氏が若かりし頃に住んでいた家だ。庶民的な住宅街に建つ、ありふれた家だが、1970年代にJobs氏とAppleの共同設立者Steve Wozniak氏が最初の50台の8ビットデスクトップコンピューター「Apple I」を組み立てたガレージのある場所として、テクノロジーの歴史に名を刻んでいる。Apple Iは、1976年7月に666.66ドル(当時のレートで約19万6000円)で発売されたAppleの最初の製品だ。

 この平屋で、歴史を作ったコーディングや会話が行われたのかと思うと感慨深い。ガレージの作業台で半導体チップを分析している2人の姿を想像しながら、ゆっくり車を走らせていると、胸がいっぱいになった。最近Arkiveに掲載された「ホームブリューコンピュータークラブ」(Homebrew Computer Club)の初期の会報を眺めていたときも、同じような感慨に打たれた。Arkiveは、コレクションの入手や投票に誰もが参加できるようにすることでアートの分散化を目指す、新しいグローバルコミュニティだ。ホームブリューコンピュータークラブの会報は、「市民がキュレーションする博物館」を自認するArkiveの最初の所蔵品の1つで、創刊号から第6号までがデジタルスキャンされて収蔵されている。米CNETでは、このコレクションについてArkiveに独占取材を行った。

ホームブリューコンピュータークラブの会報
ホームブリューコンピュータークラブの会報第5号
提供:Arkive

 1970年代に結成されたホームブリューコンピュータークラブは、コンピューターの愛好家たちがアイデアやコード、ハードウェアを交換する場として、当時大きな影響力をふるった。同クラブの会員には、後にテクノロジー業界の立役者となる面々が名を連ねている。Jobs氏、Wozniak氏、世界初の量産型ポータブルコンピューター「Osborne 1」を開発したLee Felsenstein氏、PCネットワークの初期の開発者で、現在はコンピューター歴史博物館(Computer History Museum)の名誉初代会長を務めるLen Shustek氏などだ。当時の会報からはPC革命の黎明期、後世に大きな影響を与えた革新的な時代の息づかいが感じられる。

 1975年3月5日にクラブの初会合が開催されると、そのわずか10日後に初の会報が発行された。創刊号は宝の山だ。ページを開くと会員名簿があり、各自の名前や住所、興味などが掲載されている。数名の会員は、1974年にMicro Instrumentation and Telemetry Systemsが設計し、個人向けに組み立てキットが販売されたマイクロコンピューター「Altair 8800」を所有していると書かれている。プログラム可能な端末向け8ビットマイクロプロセッサー「Intel 8008」を所有している会員もいる。

 創刊号を読むと、初会合では将来、ホームコンピューターを使って、どのようなことが行われるかというテーマで活発に意見が交わされたようだ。

 「この質問への答えはバラエティに富むものだった。人間の想像力は、考えられているよりずっと豊かなようだ」と会報は記している。「会員の答えは多岐にわたった。文書の作成、大量のデータの保管や記憶といった事務的な用途から、家事全般、例えば暖房や警報装置、スプリンクラーの制御や自動調整、料理、それからゲーム」

 会報の第2号には、マイクロプロセッサーの比較表と、7人の会員の似顔絵が掲載されている。髪型やメガネがいかにも70年代だ。他にもコンピューターやパーツ類を調達できる地元の店の情報や、メールや電話での注文先も掲載されている。クラブ名として、「8ビットバイトバンガーズ」(Eight-Bit Byte Bangers)などが候補に上がっていたことも書かれている。

ホームブリューコンピュータークラブの会報
メンバーの似顔絵が描かれた貴重な会報第2号
提供:Arkive

 実際の会報はタイプライターで作成されている。デジタル化したものはCHMなどのウェブサイトでも閲覧できるが、Arkiveに掲載されているものは細部までデジタル化されているため、まるで実物を手に取って見ているかのような気分になる。10セント切手とにじんだ消印、緑色のペンで引かれた下線、ページのあちこちに飛び散ったコーヒーの染みまでが、しっかりと記録されている。

提供:Daniel Terdiman/CNET
Lee Felsenstein氏によって開発されたOsborne 1。写真は同クラブの初会合から38年を経て2013年に再結集したときに撮影されたもの
提供:Daniel Terdiman/CNET

 Arkiveには現在、約1500人が参加している。メンバーとなっているのは、アーティストや個人のアートディーラー、美術館の元キュレーター、Web3の専門家、プログラマーをはじめ、文化的に重要な作品、広く知られるべき作品の決定には誰もが参加できるようにするべきだと信じる人々だ。Arkiveは2022年12月、米国有数のアートフェア、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチで初のコレクション「When Technology Was a Game Changer」を発表した。コレクションに含まれているのは、「テクノロジーの進歩が引き起こしたアートや文化の転換点を反映し、体現し、証明する」作品群だ。

 このコレクションには、デジタルスキャンされたホームブリューコンピュータークラブの会報のほか、第2次世界大戦中に作られ、1946年に公開された世界初のプログラム可能な汎用電子計算機「ENIAC」(Electronic Numerical Integrator and Computer)の188ページにわたる特許などが含まれている。

 Fast Companyのグローバルテクノロジーエディター、Harry McCrackeon氏はかつて、ホームブリューコンピュータークラブを「業界のるつぼ」と呼んだ。Arkiveのメンバーが、クラブの会報の色あせたページが持つ価値を正しく認識していることは間違いない。ある人は、この会報が持つ文化的価値を、「テクノロジーは、コミュニティや人間同士のつながりなしには存在しえないことを気付かせてくれる、美しくてつつましいもの」と語った。別の人はこう言った。「当時の会員たちが共有していたモノづくりへの好奇心と未来への希望、底抜けに善良で限界知らずのオタク魂は、今も生き続けている」

ホームブリューコンピュータークラブの会報
コーヒーのしみがついた会報第6号
提供:Arkive

 

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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