金属加工、工作機械や住設機器、建材などの流通商社である山善は2月1日、「中小企業の脱炭素課題/脱炭素の『見える化』」をテーマにオンラインカンファレンスを実施した。ゲストに岸博幸氏を招き、山善 執行役員営業本部グリーンリカバリー・ビジネス部長の松田慎二氏とトークセッションも行われた。
山善では、2030年までに50%削減、2050年までに±ZERO カーボンニュートラルを目指すというロードマップを描いており、2022年7月1日より大阪本社、第1ビル、第2ビル、第3ビルを、同11月4日よりロジス大阪の購入電気を大阪ガスの再生可能エネルギー電気である「D-Green RE100」へと切り替えるなどの取り組みを実施しているという。
2022年度からはTCFD(Task force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同。サプライチェーン全体での排出抑制が求められているとし、松田氏は「大企業が賛同すれば、他人ごとではなく、中小取引先やサプライヤーも脱炭素化への取り組みが必然的に求められる」と中小企業における脱炭素化取り組みの重要性を話した。
独自のグリーン戦略として、排出量と削減量を見える化する「GBP(Green Ball Project)」専用アプリを用意し、GBP参加企業に無償で提供しているとのこと。現在約400アカウントを提供しており、「見える化のお手伝いからスタートしている」(松田氏)とした。
ゲストとして登場した岸氏は「脱炭素化は非常に重要な経済社会における構造変化の1つが始まったと捉えるべき。経済社会は構造変化が起き、それをベースに進化していく。最近では約30年前、1990年代に大きな構造変化があった。それはグローバル化とデジタル化。今の時代、グローバル化、デジタル化は当たり前のこと。これにより30年で世の中は変わった」と、脱炭素化が与えるであろう影響の大きさについて話した。
菅(義偉)政権で、内閣官房参与として環境問題に携わっていた岸氏は「実は最近までの不満は政府の取り組みが遅かったこと。しかし、2022年の半ばくらいからGX(Green Transformation)の取り組みが加速している。経済産業省は、日本でGXを実装していくための準備母体として『GXリーグ基本構想』を作り、脱炭素を実現した未来像はどうなるか、規制はどうあるべきかなどを議論している。大事なのはGXリーグで、炭素の取引市場を確立すること」とポイントを示す。
さらに企業の取り組みについては「大企業は意識を持って動き出しているが、中小企業はどう動いていいのか理解が十分でない状態。企業によっては『うちはやらない』というスタンスもあるが、それが一番危険。大企業が対応すれば、当然取引先となる中小企業も巻き込まれる」と指摘した。
岸氏と松田氏のトークセッションでも、松田氏が「大企業と中小企業に脱炭素への認識が違いあると感じる」と切り出すと、岸氏は「避けては通れない問題で、やって当たり前という感じになる。脱炭素に取り組んでいない企業はビジネスプロセスから外されるリスクがある。逆に言えば、中小でもしっかりと取り組んでいれば、今まで以上に大企業のバリューチェーンの中で大事な位置づけを与えられる」とコメント。
山善のGBP専用アプリの提供について松田氏が「非常に高評価を頂いている会社がある一方、どうやって使うのかと聞かれるなど温度差がある」と話すと、「脱炭素化への取り組みがわかっている会社とそうでない会社で差が出る。アプリの提供はとても意味があること」とした。
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