クラウド型ドローン測量サービス「くみき」を展開するスカイマティクスは1月18日、「建設DX 記者説明会」を開催した。「建設DXの現状と推進の課題、今後の展望」をテーマに建設土木業技術職へのアンケート調査結果を発表したほか、くみきのデモンストレーションなどを実施した。
スカイマティクスは、2016年10月に設立した建設テック関連のスタートアップ。産業用リモートセンシングサービスの企画、開発、販売を手掛け、くみきは、2017年12月に汎用ドローンに対応した国産初のクラウド型ドローン測量サービスとしてリリースした。
くみきは、専門知識なしで地形データを簡単に生成できるサービス。ドローン画像をアップロードするだけでオルソ画像や3D点群といった地形データを自動で生成でき、数クリックの操作で面積、体積、断面などのドローン測量が可能だ。
画像はドローン撮影のほか、スマートフォンや360度カメラからも取り込みができ、ハッシュタグをつけて保存管理できるほか、画像データに記録された位置情報を読み取り、地図の緯度経度情報とマッチングもできる。
現在、建設現場などに利用されているほか、電力会社やトンネル工事会社など、幅広い業界での活用が進んでいるとのことだ。
同日結果を発表した「建設DXの現状と推進の課題、今後の展望」調査は、全国の建設業の企業に勤務する1039名を対象に、2022年11月に実施。建設ICTツールの導入状況や生産性向上への寄与度が大きい建設ICTツールや導入の成果などについて聞いた。
調査結果によると、建設ICTツールで導入率が高いのは「3D CAD等」40.0%、「ドローン」38.4%となっており、ドローンで取得した地形データを3D CAD等で用いるケースが多いと想定されるとのこと。また、生産性向上への寄与度が大きい建設ICTツールについても、生産性向上の寄与度が大きいのは「ドローン」23.2%、次いで「3D CAD等」20.9%という結果になった。
これに対し、スカイマティクス 代表取締役社長の渡邉善太郎氏は「建設現場において、ドローンと3Dデータの活用が中心になっているのは、ドローンが効果をイメージしやすいから。また初期投資も20〜30万円程度で抑えられ、最も簡単に建設DXがはじめられる環境が整っているのがドローン」と導入のしやすさを説明した。
一方で3Dデータの活用については、取り組んでいない企業があるとの回答に対し「ドローンで撮影したら自動的に3次元化できるのではなく、ソフトが必要になる。その瞬間にICTツール導入へのハードルが高くなってしまう。ドローンはECでも買えるようになり、ハードのハードルは下がったが、次に取り組むべきはソフトのハードルを下げること。これが建設DX普及の鍵になると考えている」(渡邉氏)と課題点をあげた。
一方、建設ICTツール導入の成果について聞くと、「工数削減」41.2%や「コスト削減」26.1%という費用に関する成果だけでなく、「情報共有」33.2%や「安全性向上」25.8%という費用で表しにくい成果も認識されていることがわかった。
ゲストとして登場した九州大学都市開発センター長、教授の馬奈木俊介氏は「ドローンは、初期導入コストがそれほど高くないが、工数や時間は大きく削減でき、メリットが大きい。加えて情報共有にもドローンが使え、安全管理などにも役立つ。建設業に携わる人々は安全性の面から人材確保が大変。ドローン関連技術を活用することで、安全性にもつながるのは大きい」と指摘した。
ただし、建設ICTツール普及に必要な業界の取り組みについては、「使いこなせるまでサポート」や「事例共有」など、導入支援体制のないことが、中小規模企業の建設ICTツール普及のネックになっているという結果が出た。
馬奈木氏は「中小規模の会社こそドローンなどのICTツールを導入することによって生産性は上がる。しかし経営者が課題と感じているのは、そうしたツールを現場が理解できるかどうか。その部分を解決できれば、ドローンなどの導入は必須になる」とコメント。加えて渡邉氏も「中小企業への導入が難しいことが浮き彫りになった。建設DXと大きく身構えずに最も身近な、やりやすそうなところから取り組めば小規模の企業でも使えるようになる」とした。
なお、2023年からBIM/CIMに「対応できる」割合については、「対応できる」のは、全体で16.2%。大規模企業は30.1%、小規模企業は3.9%。小規模企業の対応の遅れが目立つ結果となった。
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