Eco-Porkは1月11日、繁殖するための母豚が自由に動ける「フリーストール」飼いの環境下でも、「発情検知」「個体体識別」を可能とするAI技術を開発したと発表した。すでに実証を完了しており、国内では初という。
国内で飼養される繁殖豚(=母豚)のほとんどは、飼養管理の効率性・困難性の面から1頭のみを収容する「ストール」と呼ばれる柵で飼われている。また、ストールの中で受胎から出産までの繁殖サイクルを6回〜7回程度繰り返して飼養されることが一般的となっている。
しかし近年、家畜を快適な環境下で飼養する動物福祉「アニマルウェルフェア」の観点から、欧州では2013年1月より、原則的に繁殖母豚を群れで飼育すること(ストール飼いの禁止)が完全施行されている。変わる繁殖豚の飼養方法として、動物が動物らしく自由に活動できる大きさの区画内で多頭飼養するフリーストールへの転換が図られている。
農林水産省でも、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた飼養管理を普及するべく、2020年3月に「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」の技術指導通知や、「アニマルウェルフェアに関する意見交換会」を2021年度より開催している。
従来のストールでは、1頭ごとに区切られた区画で飼養されるため、それぞれの状態に合わせた管理が可能だった。しかし、フリーストールでは、大きな区画において複数頭を群飼養するため、1頭1頭に合わせたきめ細やかな管理が難しいという課題がある。
今回開発した技術は、生物系特定産業技術研究支援センターの「令和3年度スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)」の支援を受け開発したもので、フリーストールで飼養する繁殖豚の管理に対応する。
具体的には、AIカメラが、区画内にいる繁殖豚を自動でみつけ、それぞれの繁殖豚の耳に取り付けた識別子(耳標の色組みあわせ)を検出。その色味の組みあわせパターンを用いて、個体を特定する。
移動する繁殖豚をAI技術で自動追跡し、複数の画像を用いて判断することで、99.7%の精度で個体の特定が可能だという。これにより、フリーストール内に豚が複数飼われている状態でも、特定の豚を識別することが可能となった。
また、AIカメラが、繁殖豚の生殖器の状態をAI技術により分析し、発情/非発情のいずれであるかを判別する。生殖器の状態を適切に捉えるための最適な静止画を、AIが動画から自動取得し発情判定を行うことで、判定精度98.3%を実現。豚舎の明るさや環境が異なる場合でも、判別精度を保つ事が可能だという。
国内養豚農家は、配合飼料価格・生産資材の価格上昇や労働力の不足などにより、効率化が強く求められている。同技術は養豚農家の効率化を支援するものであり、アニマルウェルフェアに養豚農家が対応する際のソリューションとして、2023年度内の製品化を目標に開発を継続していくとしている。
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