オムロン ソーシアルソリューションズ(OSS)は11月28日、アドレス、machimoriとともに、静岡県熱海市で共助とDXによるプロジェクトを開始すると発表した。ワーケーション等で地域を訪れる人々に対し、住民がドライバーとなり移動手段を提供するMaaSサービス「meemo(ミーモ)」の実証実験を開始する。
オムロン ソーシアルソリューションズは、オムロンのグループ会社。社会システム事業を担い、1964年には電子式自動感応信号機、1967年には無人駅システムを開発している。「今では当たり前の技術だが、これが社会システム事業の原点。その時々の社会課題の解決に向き合ってきた。2019年には地域創生事業に参入し『稼ぐ力』『支える力』『拓く力』をつけ、まちを強化していく必要があると考えている」(オムロン ソーシアルソリューションズ 代表取締役社長の細井俊夫氏)と地域創生に取り組む理由を話した。
実証実験meemoは、熱海に別荘を持つ人、ワーケーションで訪れている人などを対象にした地域内の移動サービス。地元住民ともっとコミュニケーションをとりたいと考えている来訪者に対して、住民がドライバーを担うmeemoを提供することで、移動とコミュニケーションする機会を提供する仕組み。利用者と住民ドライバーは、専用アプリを使ってマッチングする。
2022年12月1日から2023年2月17日までの2.5カ月を実証実験期間と定め、熱海市全域で実施する計画。熱海住民の50名がドライバーになり、利用者は60名を想定している。OSSが実施主体者となり、地元の小形タクシーが住民ドライバーの審査、教育や遠隔点呼などを請け負う。
このほか、熱海のまちなかの再生を目的にした民間まちづくり会社であるmachimoriが地元でのネットワークをいかし、コンタクトセンターや会員獲得の広報などを担当。定額住み放題の多拠点生活プラットフォームであるアドレスは、拠点を活用した広報活動や検証、ヒアリングなどのアンケート調査を担う。
アドレス 代表取締役社長の佐別当隆志氏は「コロナ以降、地方に移住したい人が増えているが、東京生まれ、育ちの人は田舎がないため、地方に住む場所がない。将来の移住先を探すために多拠点生活を始める人もいる」と、多拠点居住の現状を話す。
実証実験期間中のサービスは無償で提供し、ドライバーには利用者から、感謝の気持ちをデジタル化した「mee(ミー)」が渡されるとのこと。「meeは地域通貨とは異なり、今まで価値にならなかった誰かの行動や感謝する気持ちを価値化するもの。アプリ内でやりとりができるようになっている」(オムロン ソーシアルソリューションズ 事業開発統轄本部ソーシャルデザインセンタ地域創生グループの横田美希氏)と説明する。住民ドライバーには、ガソリン代などの実費をOSSが実証実験後に支給するという。
OSSは、人口増、経済活動増の高度成長期では公助、自助の仕組みが機能してきたが、人口減、経済活動減となった現在の成熟期では、公助、自助に加え共助の仕組みを作る必要があると考えており、「これらで地域課題を解決し、感謝経済圏をつくっていきたい」(細井氏)とコメント。その感謝経済のための共生プラットフォームとしてmeeを提供していく考えだ。
machimori 代表取締役の市来広一郎氏は「熱海は課題先進地。高齢化率、空き家率が高く、日本の50年後の姿と言えるような状況だった。これを脱するために自治体の補助金や大企業に依存するとうまくいかないこともある。そのため民間主導で、リスクをとって、町に投資しながら再生することが大事。空き物件を借り、投資、再生して、店舗や宿を経営する。この取り組みをしていく中で、移住したり、起業したりといった新たなプレーヤーが生まれてくる。その結果空き店舗がなくなり、地域内に雇用も生まれた」と熱海地域における再生の過程を説明した。
OSSでは、利用者60名、住民ドライバー50名で、送迎回数は2.5カ月で250回を目標にしているとのこと。事業化については「大事なのは地域根ざす仕組みを作ること。そうでないと続かない。しっかりと価値検証し、事業化に向けて進めていこうと考えている」(細井氏)とした。
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