悪夢のようなシナリオを想像してみてほしい。険しい山を登っていて、道に迷ったり怪我をしたり、その場から動けなくなったりしたケースだ。何とか連絡が取れ、救助隊が助けに来ることになっても、到着までに時間がかかり、食料が尽きてしまう可能性もある。だがそんな時こそ、ブーンと音を立てながら遭難者の元へ飛んでくるドローンの出番だ。しかも搭載されていた非常食や水、医薬品が手に入るだけでなく、救助隊が来るまでドローンの翼を食べながら待つことができる。
こうしたシナリオが現実になるかもしれない。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のチームが、食べられるドローンの試作品を開発したからだ。この研究は、「RoboFood」と呼ばれる、より大規模なプロジェクトの一環として行われている。RoboFoodは、人間や動物が食べられるロボットや、ロボットのように動作する食品を研究しているプロジェクトだ。
EPFLの研究チームは、今回の研究成果をまとめた論文「Towards edible drones for rescue missions: design and flight of nutritional wings」(救助ミッション用の食べられるドローンの実現に向けて:栄養素を含む翼を使った設計と飛行)をオンラインで公開している。この研究の目的は、緊急事態に陥った人々の救助に必要な量の物資を商用ドローンで輸送するという課題に取り組むことだ。
このドローンには飛行機でおなじみの部品が使われているが、大きな違いは、固定翼が市販のライスクッキー(圧力をかけて膨らませた米をせんべい状に加工した食品)とゼラチンでできており、300キロカロリーのエネルギーを供給できることだ。米電気電子学会(IEEE)の学会誌「IEEE Spectrum」の取材に応じた論文の筆頭著者Bokeon Kwak氏によれば、「(このドローンは)歯ごたえのあるライスクリスプのような味がするが、やや生のゼラチンのような風味がある」という。遭難して空腹の状態なら、おいしく感じられるだろう。
この翼を制作するために、研究チームはレーザーカッターで丸いライスクッキーを六角形に加工し、ゼラチンでつなぎ合わせて、飛行に耐える強度を持つ翼の構造を作り上げた。米は丈夫だが軽量で、しかもそれなりに栄養がある。このドローンは片道飛行になるが、機体の一部が食べられるようになっているため、大量の残骸が放置されることはないだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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