ソフトバンクグループで代表取締役会長兼社長を務める孫正義氏は11月11日、決算会見の冒頭に登壇。自身の情熱を今後は投資ではなくArmの成長に向けると明かした。また、次回以降の決算会見には登壇せず、同社で専務執行役員CFOを務める後藤芳光氏にプレゼンテーションを任せるとも明かした。
孫正義氏は、コロナ禍の反動による消費の増加や、ウクライナ情勢に起因するインフレによって、株式市場が大きなダメージを受けた指摘。「数年前からビジョンファンドでどんどん投資する方針を発表していたが、今の情勢は上場株であれ未上場株であれ、投資していた会社はほとんど全滅に近い成績になっている。世界中の投資家も大なり小なり傷んでいる」述べた。
続けて「この厳しい情勢のなかで、ソフトバンクとして取るべき道はなにか。ビジョンファンドでこのまま投資を続けるべきなのか、それとも、負債の比率を下げて、手元のキャッシュを厚くして、安全運転に舵を切るべきなのか。社内でも議論した」とした。
その上で孫正義氏は「出した結論は、インフレは当分収まらない。上場株ですらしばらく大変。まして、未上場株は時差があるから当分大変。だから守りを固める。新たな投資はより慎重にし、ビジョンファンドのマネジメント社員の規模も縮小する」とした。
一方、「これでは事業家として、そして経営者として力を持て余してしまう」と孫正義氏は前置きしたうえで、向こう数年間はArmの成長に注力すると明かした。孫正義氏はArmを一旦NVIDIAに売却することを決めたが、その後、各国政府の反対により売却が頓挫した経緯がある。
Armの売却については「コロナ禍に備え、キャッシュを厚くし守りを固めるための決定だった」としたうえで「コロナの谷は思ったほど深くなかったので、(売却の頓挫によって)結果的にArmが手元に残ってよかった」とコメント。
続けて「Armのこれからの技術革新や成長機会は爆発的なものがあると心の底から再発見した。Armには買収前から惚れ込んでいたが、最近バージョン9が出てきて、Armをどのように活用したら画期的な技術やサービスが生まれるか、ものすごい技術革新を心の底から見出すことができた」と述べた。
その上で「Armの爆発的な次の成長にこれから没頭すると。その他の経営については守りを徹する。守りに徹するには私よりも後藤くんがCFOとして守りをしっかり固めて皆さんに報告するのが適切」と述べた。
また、「Armの攻めのところに集中したい、事業計画の深い所まで没頭している。これが私の幸せであり、ソフトバンクの次の成長に最も貢献できるのは、私がArmとArmの周辺に集中すること。これがソフトバンクの株主にとっても情報革命にとっても未来の人にとっても最も役に立てると心の底から思った」とした。
孫正義氏に代わり、ソフトバンクグループの決算概要を説明した後藤CFOは「昨日の米国CPI(消費者物価指数)が予想より下振れしたことには少し安心したが、依然として金利環境は厳しいことを想定している」とコメント。また、米中摩擦などもマイナス要因になるという。
同社が経営の最重要指標に位置づけるNAV(時価純資産)は、2022年3月末から約1.8兆円減少し、2022年9月末では約16.7兆円となった。
なお、後藤氏によると「ソフトバンクグループの歴史上、今の財務状態は最も安全で安定している状態」だという。「時価純資産は16.7兆円をキープ。LTVも15.7%、手元の預金も4.3兆円ある」と述べた。なお、今後ビジョンファンドにおける新規投資は控えつつ、既存の投資先の価値を高めるためのコミュニケーションに専念するとした。
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