バルミューダ、記録的円安でインパクト大--「ブランドの歩みを止めず、強い製品を投入し続ける」

 バルミューダは、2022年度第3四半期(2022年1~9月)業績を発表。売上高は前年同期比12.7%増の124億9300万円、営業利益が63.7%減の1億5700万円、経常利益は81.8%減の7400万円、当期純利益が83.6%減の4300万円となった。

業績サマリー
業績サマリー

 バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏は、「売上高は国内、海外ともに2021年実績を上回った。2021年発売した『BALMUDA The Brew』の販売好調や、韓国での『BALMUDA The Range』での販売が牽引した。だが、為替の影響により、原価率が大幅に上昇し、これが減益につながっている。経費コントロールを強化しているが、記録的な円安が、事業に大きなインパクトを与えている」と総括した。

バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏
バルミューダ 代表取締役社長の寺尾玄氏

 売上原価率は、前年同期の59.5%から66.8%へと、7.3ポイント上昇。営業利益率は3.9%から1.3%へと、2.7ポイント悪化した。

 製品カテゴリー別売上高は、空調関連が前年同期比8.8%増の29億300万円、キッチン関連が21.5%増の77億6100円、携帯端末関連が3億5500万円。その他が27.4%減の14億7300万円となった。

製品カテゴリー別売上高推移
製品カテゴリー別売上高推移

 「キッチン製品は、すべての地域で売上げが上昇している。特に韓国での伸びが大きい。BALMUDA The Rangeに加えて、2022年9月に発売した『BALMUDA The Toaster Pro』の影響もある。その他カテゴリーが減少したのは、2022年5月に発売した『BALMUDA The Cleaner Lite』がプロモーション不足もあり、思ったほど伸びていないこと、前年同期に韓国向けに、クリーナーをまとまったロットで輸出した反動がある」とした。

 また、「クリーナーは、家電製品のなかでも現場の影響度が強いカテゴリーである。戦い慣れていないため、苦戦から脱却できていない。コストをかけて、現場の力を活用していくことが大切である。いい製品であることをお客様に伝えていきたい」語った。

 さらに、キッチン製品では、11月9日に炊飯器のフルモデルチェンジを発表する予定であり、「家で食べられる、最も良い、かためのご飯が実現できる」と述べた。

再度の値上げは「やりたくないが、状況によっては真剣な検討を」

 なお、バルミューダ製品の再度の値上げの可能性については、「明確に値上げする計画はない。だが、状況によっては真剣な検討をしなくてはならないかもしれない。できればやりたくない」と語った。

 地域別売上高は、日本が17.9%増の78億7000万円、韓国は35.7%増の30億7700万円、北米が58.4%増の4億4500万円、その他が36.8%増の11億万円となった。

地域カテゴリー別売上高推移
地域カテゴリー別売上高推移

 また、第3四半期累計の販管費比率は、前年同期の36.6%から32.0%へと減少。「販管費は抑え込んでいるように見えるが、前年同期にはスマホの仕込みのために試験研究費が増加していたことの反動である。上期は人的投資、試験研究への投資を進めていたが、第2四半期から経費を抑え込みはじめた。だが、いまの状況を見ると、32.0%という販管費比率は重たいと見ている」とした。

 第3四半期の販管費の内訳は、人件費は3億8200万円(前年同期は3億2200万円)、広告宣伝費は1億2400万円(同1億2900万円)、試験研究費は7400万円(同4億2400万円)となっている。また、従業員数は前年同期の131人から168人に増加。そのうち、エンジニアは89人、デザイナー14人、その他が65人となっている。

 一方、2022年度(2022年1~12月)の業績見通しを修正した。売上高は期初計画を据え置き、前年比0.2%増の184億1000万円としたが、営業利益は公表値から7億円減の前年比93.4%減の1億円、経常利益が7億8600万円減の前年比99.7%減の400万円、当期純利益が5億4800万円減の99.8%減の200万円とした。営業利益率は0.5%、売上原価率は68.9%を見込んでいる。

業績予想の修正
業績予想の修正

 「円安の進行が続き、原価率のさらなる上昇を見込み、利益の業績予想を修正した。原材料の高騰は2021年度から始まっており、サプライチェーンの混乱、物流の混乱などを背景にさまざまなものが高値になると想定し、2022年度の営業利益は抑えめに予想した。ここに為替が大きく影響した。期初予想の売上原価率の62.6%は、本来の姿から見ると悪い数字であったが、それを上回る68.9%にまで高まると見ている。かなり厳しい数字である」とした。

 寺尾社長は、「いま、バルミューダは、厳しい時間帯を過ごしている」と前置きし、「海外で家電を作り、それを日本で販売するのがバルミューダのビジネスモデルである。国内の売上高は約7割であり、これまでは国内で販売した方が利益率が高かったため、国内の売上げが増加すれば、利益が増えるという構造であった。2022年前半の110円台半ばの為替レートが基盤となった事業構造であった。しかし、為替によって、これが大きくマイナス方向に動いている。為替の状況が急激に良くなるとは思っていない。さらに、巣ごもり需要が終わったこと、世界中で物価高が進み、生活必需品を優先するため、高級家電にはお金が回らなくなったという状況も生まれている。新たな外部環境に対応し、利益を生み出す事業構造に進化させる必要があると強く感じている」と述べた。

10%前後の営業利益率確保前提を見直し、コストカットに取り組む

 ここでは、「原価、経費の最小化」、「家電事業の売上最大化」、「新たな価値の創造」の3点に取り組む考えを示した。

 「原価、経費の最小化」では、現在、販売している製品の設計変更や、新製品での原価率の追求をあげ、「かつてのような原価率が作れなくても、会社が成長していけるだけの原価率の確保と、経費構造の最適化による収益性改善に取り組む」とした。設計や購買部門の努力により、原価率を引き下げる取り組みも進めているという。

 バルミューダでは、これまでは10%前後の営業利益率を確保してきた経緯があり、それを前提とした人員配置、設備投資を行ってきた。これを見直し、本社経費を削減するなど、コストカットに積極的に取り組むという。

 「ベースとしていた原価率や販売台数が変わっており、開発の困難度があがっている」と述べたほか、すでに、試験研究費の抑え込みによって、BALMUDA Technologiesの製品投入時期が後ろ倒しになっていることも明らかにした。

 国内生産については、「かつての感覚では、中国生産や台湾生産に比べて、2~3割高いというものだったが、いまの為替レートでは、国内生産をしても作れるだろう。だが、日本で生産する際にも、部品の多くが海外から輸入するため、ひとつひとつの部品に円安の影響が出る。いくつかの会社と国内生産について話し合いをしたが、現状ではスタートしようという状況にはなっていない。いまの為替レートであれば、日本で生産し、海外に売れば利益の拡充になるが、全体的に国内生産はあわないのではないかという印象を持っている」とした。

 2つ目の「家電事業の売上最大化」については、製品ラインアップの拡充と、展開地域の拡大を含めた海外販売の強化を進める。「円安を利用することで、海外の顧客は、相対的にバルミューダの製品を安く購入できる。これまで販売をしてこなかった地域への進出の準備も開始している。早い段階で新たな地域に進出したい」と語った。

 3つ目の「新たな価値の創造」では、アイデア、デザイン、エンジニアリング力の統合と、BALMUDA Technologiesカテゴリーの強化、新たなジャンルへの継続的な挑戦をあげた。

 「ここまで厳しい局面を迎えて、いま感じていることは、バルミューダの強みはどこかということである。何度考えても、成長路線に戻す上で、一番頼りにするのは、アイデア力、デザインのクオリティ、それを実現するエンジニアリングの力を揃えている点になる。これが、バルミューダのいいところであり、強いところである。BALMUDA Technologiesカテゴリーの製品も仕込んでいる。家電やその他の製品領域においても、社会のニーズに対応したり、課題を解決したり、人々の役に立つ道具を作り出すのが、バルミューダの使命であり、唯一のやるべきことである。経費を削減しながらも、強い製品を出すことが必要な時期であると考えている。デザインチーム、エンジニアリングチームが総力をあげて、新たな次の製品づくりに取りかかっているところである。ブランドの歩みを止めてはいけない。それは死に近いことになる。工夫し、製品を投入し続けることに努力する」とした。

 急激な円安の影響が、バルミューダの業績を悪化させているが、バルミューダらしい製品づくりを継続することは譲らない考えを強調した。

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