不在時にはオフになり、部屋に入ると素早く明るくなるトイレなどの照明や人がいなくなると省エネ運転に切り替わる空気清浄機や暖房機器など、近年、人感センサーを搭載する家電製品やIoT機器、そして産業用デバイスが急増している。背景にあるのが、省エネや省人化などの追求だ。
パナソニック エレクトリックワークス社(EW社)は数多くの照明機器や家電、IoT機器などに採用されている「焦電型赤外線センサ」PaPIRs(パピルス)の説明会と工場見学会を生産拠点でもある三重県津市の津工場にて開催した。
津工場はパナソニック創業商品の一つである配線器具(アタッチメントプラグ)の製造と伝統を引き継ぐ、パナソニックEW社を支えるグローバルマザー工場で、PaPIRsもここで製造されている。
PaPIRsは1998年より製造が始まった小型高性能の焦電型赤外線センサー。元々のブランド名は「NaPiOn」だったが、2008年の社名変更に伴い、ブランド名もPaPIRsに一新された。焦電型赤外線センサーとは、人体や物体から発生する熱を赤外線として検出して、信号として電流を流すセンサーのこと。主に人の存在、不在を検知し、機器の電源、照明などをオン・オフするために採用されている。
PaPIRsの最大の特徴は、「レンズ一体型になっているため、これ一つで人感センサーとして使えるオールインワンタイプ」(パナソニック EW社エナジーシステム事業部 デバイス技術開発課主幹の園孝浩氏) だということにある。
従来の焦電型赤外線センサーは赤外線を受光する素子と、素子から出力された電流を電圧に変換する回路のみで構成されていることが多く、それ以外の部分は別途、設計する必要があった。
PaPIRsは信号増幅部が内蔵された自社開発ASICやレンズが一体化しているため、別途設計などが不要で手軽にシステムに導入することができる。
現在、PaPIRsは低消費電力や高感度、汎用などの8種類センサーを用意。さらに14種類のレンズの種類や色を用意しており、それらを用途に応じて組み合わせることができる。この性能の高さと充実したラインアップ、そして、レンズや周辺回路の設計という手軽さにより、国内外の500社以上のメーカーの製品で採用され、5月には累計生産台数が1億個を達成しているというわけだ。
前述の通り、PaPIRsの最大の特徴は焦電素子や、人体検知に必要な回路、用途に応じたレンズがすべて一体化したオールインワンになっていることにある。さらに人感センサーの性能を決定づける焦電素子やI/V(電流/電圧)変換回路に関しても、PaPIRsならではのさまざまな特徴があるという。
「一般的な焦電素子は単に受光素子が配置されただけの構成だが、PaPIRsはスリット付きの小型のクワッド焦電素子となっており、約半分のサイズながら高感度を実現している。また、焦電素子が小さいのでレンズの焦点距離を短くすることができ、レンズの小型化もできる。下部のI/V変換部では独自の回路方式を採用することで、回路の低ノイズ化も実現している」(パナソニックEW社の園孝浩氏)
これらの機能を実現するのに欠かせないのが、津工場が長年培ってきた、金型技術や成形技術によるレンズ製造、金属加工技術、基盤、素子加工技術などだ。またこれらを自動で組み立てられる製造品質の高さだ。
例えば、レンズ自体の設計だけでなく、金型も自社設計となっている。高精度な三次元金型加工機を用いることで、より小型で高精度のレンズが開発できるという。
実際に津工場の中のPaPIRsの製造現場を見学した。基本的に全ての工程が自動化されており、工場スタッフが介在するのは製造機器の操作・メンテナンスと機器間の部品の移動のみ。後は自動化された機械が部品を製造し、PaPIRsを組み立てていく。
IoT機器の増加や家電のスマート化、オフィスの省人化、省エネなどによって右肩上がりで需要が伸びているという人感センサー。中でもPaPIRsはパナソニックグループの製品だけでなく、多くのメーカーから求められており、現在、約7割が海外メーカーからの注文だとか。津工場で作られたPaPIRsが世界中で人の動きや存在を検知して省エネや省人化に貢献しているのだ。
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