[ブックレビュー]聞く、聞いてもらうの循環がもたらすもの--「聞く技術 聞いてもらう技術」

フライヤー編集部2022年10月22日 08時00分
筑摩書房
内容:こんな経験はないだろうか。心に抱えたモヤモヤを友人に打ち明けると、「わかるよ、それは大変だね」と静かに頷いてくれた。それだけで心がすっと軽くなった――。「聞くこと」と「聞いてもらうこと」、このささやかな循環は、私たちの日常を少しだけやさしいものにしてくれる。

 こんな経験はないだろうか。心に抱えたモヤモヤを友人に打ち明けると、「わかるよ、それは大変だね」と静かに頷いてくれた。それだけで心がすっと軽くなった――。「聞くこと」と「聞いてもらうこと」、このささやかな循環は、私たちの日常を少しだけやさしいものにしてくれる。

 ところが、この循環がうまくいかなくなるときがある。ギスギスした職場、別居中の夫婦、子をコントロールしようとする親など、人間関係に不信が横たわるとき、当たり前のように行なわれていた「聞く」と「聞いてもらう」は不全に陥る。こうなると、どれだけ話しても言葉は相手に届かず、逆に傷つけ合ってしまうようになる。

 本書の著者は臨床心理士の東畑開人氏だ。東畑氏はまず、「聞く」ためには「聞いてもらうこと」が大切だと説く。人が耳を塞ぐのは、心が追い詰められているときである。周りの誰かに気持ちを共有して心のスペースをつくることで、ようやく相手の言葉を聞ける状態になるという。

 とはいえ、いきなり「話を聞いて」と言うのも気が引ける。そこで役立つのは「単純作業を一緒にする」「黒いマスクをしてみる」などといった「聞いてもらう技術」である。著者は「小手先の技術」と銘打っているが、そこには心理士としての経験に裏付けされた説得力がある。

 聞くこと、聞いてもらうことは思いのほか難しい。しかし、本書の声を「聞く」ことで、心をほどくきっかけが見つかるかもしれない。

今回ご紹介した「聞く技術 聞いてもらう技術」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。

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