スウェーデン王立科学アカデミーは現地時間10月4日、量子コンピューティングの基礎を築く研究に貢献した3人の科学者に2022年のノーベル物理学賞を授与すると発表した。
Alain Aspect、John Clauser、Anton Zeilingerの各氏は、2つの小さな粒子の振る舞いを結びつける「量子もつれ」と呼ばれる特異な現象を実証した。この現象は現在、量子計算の実行に応用されている。
量子もつれは、光の最小単位である光子など、2つの小さな粒子の状態を結びつける現象だ。
Albert Einstein(アインシュタイン)は、この現象に懐疑的だったが、後に実在することが証明され、量子もつれを「不気味な遠隔作用」と表現したことがよく知られる。ある粒子の性質が別の粒子の性質と結びつく現象が、たとえその2つが隔離されていて一方の粒子に関する情報がもう一方の粒子に届かない場合でも起こり得る事実が、極めて奇異に思えたからだ。
Aspect、Clauser、Zeilingerの3氏は1970年代から1990年代にかけて、ますます高度化する一連の実験を主導して量子もつれを調査した。アインシュタインとその研究仲間らは、量子力学を超えて「隠れた変数」と呼ばれる何かが量子もつれの説明になるとの見方を示していた。Aspect氏らの実験では、量子物理学の理論を詳細に示して隠れた変数を否定し、その後、量子操作に不可欠な量子テレポーテーションという手法を開発した。
こうした研究が、今日の量子コンピューティング産業への道を開くことに貢献した。この分野では、ますます増加する量子ビットと呼ばれるもつれた粒子を利用してデータを処理できる。この技術はまだ初期段階にあるが、テクノロジー各社は大手も新興企業も着実な前進を遂げており、数十億ドルを投じて量子コンピューターを開発しているため、数年後には従来のコンピューターではできなかった計算を行えるようになる可能性がある。
毎年ノーベル賞を授与しているスウェーデン王立科学アカデミーは、隠れた変数をテストする実験を、アリスとボブという2人に白と黒の2つのボールを投げる機械に例えている。アリスが白いボールをキャッチした場合、彼女にはボブが黒いボールをキャッチしたことが分かる。しかし、ボールを見るまでは、どちらのボールも実際は未知のグレーの状態だ。
隠れた変数の考え方では、ボールが投げられる前の時点で、双方ともそれが白になるか黒になるかは事実上分かっていると仮定する。これに対し量子力学では、これら2つのボールがもつれた状態で、無作為に白または黒になると考える。
Aspect氏らは、どちらの説明が正しいかを判断するのに役立つ「ベルの不等式」と呼ばれる理論を研究した。研究により、ベルの不等式が破れている(成り立たない)ことが示され、量子もつれが実証された。
Aspect氏はフランスのパリ・サクレー大学およびエコール・ポリテクニークで、Clauser氏は米カリフォルニア州ウォールナットクリークにあるJ・F・クラウザー&アソシエイツで、Zeilinger氏はオーストリアのウィーン大学でそれぞれ研究に従事している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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