記者からは、クルーの一人がロシア国籍であることがミッションに影響しないか?という質問があったが、「クルーはウクライナ侵攻後も共に訓練を続け、十分な時間をかけてチームワークを高めている」と強調した。また、米国の宇宙飛行士がロシアのソユーズ宇宙船に搭乗することが先日発表されており、ロバストの観点からもISSの運用に米露それぞれの参加することは不可欠だと述べる。
「ISSは計画当初から変わらず世界15カ国が協力してISSの利用成果を最大化できるよう努力している。国際協力プロジェクトは日常生活を豊かにする様々な技術を生み出すのと同時に、世界の人たちが協力してより平和な世界を築く重要な取り組みであり、そこに日本が入っていることが重要であると感じてもらいたい。」(若田氏)
日本の宇宙開発計画だが、近いところではアルテミス計画でまもなく打上げられる世界最大の新型ロケットSLSの初号機「アルテミス1号」に、超小型探査機「EQUULEUS(エクレウス)」と世界最小の月着陸機「OMOTENASHI(Outstanding Moon exploration TEchnologiesdemonstrated by NAno Semi-Hard Impactor)」が搭載される。
また、月や火星探査の中継基地となる月周回有人拠点(Gateway)の検討も進められており、日本人宇宙飛行士による月面活動の機会が訪れる可能性もあることから、JAXAでは13年ぶりに宇宙飛行士候補者を新規募集し、過去最多の4127名の応募があった。
若田氏は「自身が月に行く可能性は低いかもしれないが、生涯、有人宇宙飛行活動の現場で仕事をしていきたいと考えており、種子島から世界の宇宙飛行士を宇宙に送り届けるシステムを作り上げることが夢だ」と話す。すでに宇宙飛行士以外に、JAXAで技術部門長や理事などの仕事に付いており、ISSの運用など政策に近いことにも関わっている。
「それらの仕事は宇宙にいる時より苦労することも多いが、マネージメントの経験が宇宙でのコミュニケーションやトラブルの解決に役立てられるなどたくさん学びがあり、宇宙飛行士としてチーム全体のために何ができるかより明確に理解できるようになったと感じる。今回のミッションも月や火星探査に挑む若い世代の夢につながり、日本人が月に降り立つ日を楽しみしている。」(若田氏)
日本政府は2025年以降のISS運用を含む地球低軌道活動に参加する方針をこの夏に発表する予定だが、「日本の優れた技術をさらに伸ばし、独自の強みを活かして宇宙へ挑戦していくことは重要だ」と若田氏は強調する。最後に「日本という国が科学技術創造立国として果たしていかなければいけない責務の1つであり、プレゼンスを発揮できる現場だと考えている。ミッションの成果が月探査へとシームレスにつながるよう全力を尽くし、2023年に滞在予定の古川宇宙飛行士にきちんとバトンをつなげていけるよう、皆さんからの応援をこれからもよろしくお願いいたします」と若田氏は述べ、会見を締めくくった。
(この記事はUchuBizからの転載です)
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