われわれの生活基盤が地球から宇宙へ移り変わるのはいつのことだろう――。そんな夢を掲げながら、地球軌道上宇宙ホテルサービスの開発に努める東北大学発宇宙スタートアップ企業「ElevationSpace(エレベーションスペース)」。同社代表取締役 最高経営責任者(CEO)の小林稜平氏に話を聞いた。
――ElevationSpaceはどのような企業でしょうか。
2021年2月に東北大学 吉田・桒原(くわはら)研究室の衛星開発技術から創業しました。取締役 CTO(最高技術責任者)である東北大学 大学院 航空宇宙工学専攻 准教授 桒原聡文とともに、研究室で培ってきた人工衛星開発実績の事業化を目指しています。一言で述べれば、ISS(国際宇宙ステーション)で行われている宇宙実験などを小型人工衛星内で実施するビジネスですね。
――小林さんはおいくつでしょうか。
24歳です。3月に東北大学大学院を卒業しましたが、創業時は(東北大学)大学院 航空宇宙工学専攻に在席していました。これまで大学院生とスタートアップ企業のCEO、二足の草鞋を履いてきましたが、大半の時間はElevationSpaceに費やしていました。とは言え、正確にアウトプットしないと卒業できないので、空いている時間で計画的に論文を作成してきました。修士論文に費やした1年間は苦労しましたね。
――ElevationSpaceの規模はどれくらいでしょうか。
役員も含む正社員で10人で、インターン生や外部業務委託を含めると25人程度ですね。数か月前までは正社員はほとんどいなかったため、組織として成長が始まっている段階になります。
――どのようなきっかけでElevationSpaceを起業したのでしょうか。
私のバックグラウンドは建築学ですが、19歳当時に人々が宇宙で暮らすための構造物を扱う宇宙建築分野に出会い、本当に人生が変わりました。どうやったら実現できるか思案していた頃、ビジネスを勉強する上でスタートアップ企業に関心を持ち、友人と検討していたときも研究ではなく、ビジネスとして宇宙建築に関わりたいと思いました。
その頃に出会ったのが、ElevationSpace共同創業者である桒原先生です。宇宙で生活するための構造物を目指しつつも、ビジネス化を踏まえると、段階的にステップアップしてくのが現実的だと思っています。また、宇宙ビジネスは膨大な資金を必要になってきますが、投資資金を得るのは人生を捧げられる事業でなければならない、との考えが自分の中にあります。
創業する1年半以上前から、顧客が必要とする技術要素や市場可能性を探りつつ、宇宙建築という目標から逆算して、たどり着いたのが「ELS-R」です。創業1年目ですが、個人的には3年ほど働いている感覚ですね。
――宇宙ビジネスに携わるスタートアップ企業や大手企業に参画する方法もあったと思います。そこで創業を選んだ理由はどういったものでしょうか。
大手企業の方々ともお話させていただきましたが、宇宙建築に対する門戸の狭さを感じました。当然ながら、大企業はリスクを取って新領域を切り開く事業に向いていないと思っています。当時は宇宙建築を目指したスタートアップ企業も存在していませんでした。
大学4年生のときに研究者か起業家、どちらを選ぶか逡巡しましたが、大学院へ進むことは決まっていましたので、その間にスモールビジネスに取り組んでみようと思いました。研究者として(宇宙建築に)関わると限定されるので、ビジネス面から接しようと考えました。
――とは言え、1年半の間で思い悩む場面もあったのではないでしょうか。
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