シャープ、売上高が伸長し大幅な増益に--呉CEOが社長を兼務

 シャープは、2022年3月期(2021年4月~2022年3月)連結業績を発表した。売上高は前年比2.9%増の2兆4955億円、営業利益は1.9%増の847億円、経常利益は82.0%増の1149億円、当期純利益は61.0%増の857億円となった。

2021年度連結業績概要
2021年度連結業績概要

 シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏は、「厳しい事業環境のなか、2021年度は売上高が伸長し、経常利益および最終利益は、公表値を上回る大幅な増益となった。だが、中国でのロックダウンやウクライナ情勢などの影響により、2月から3月にかけて、サプライチェーンが想定以上に混乱したことから、売上高、営業利益は公表値を下回った。白物家電は、原材料価格高騰の影響があるなか、2桁の利益率を維持した。ディスプレイデバイスはモデルミックスの改善により、利益が大幅に伸長した」と総括した。

シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏
シャープ 代表取締役社長兼COOの野村勝明氏

 ブランド事業の売上高が前年比3.5%増の1兆3378億円、営業利益は13.9%減の772億円。そのうち、スマートライフの売上高が前年比2.1%増の4461億円、営業利益は18.0%減の482億円。「白物家電事業は減収となった。欧米の調理家電やアジアの洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどは増収となったが、前年度に国内で大きく成長したプラズマクラスターの反動で減収になった。エネルギーソリューション事業は半導体不足の影響があったが、国内EPC事業が牽引して増収になった。また、半導体や原材料価格の高騰、商品ミックスの変化で減益になった。だが、10%台の高い営業利益率を維持している」などと述べた。

2021年度セグメント別売上高
2021年度セグメント別売上高
2021年度セグメント別営業利益
2021年度セグメント別営業利益

 8Kエコシステムの売上高は前年比15.1%増の5676億円、営業利益は60.8%増の249億円。「テレビが欧州やアジア、日本で伸長し、高付加価値化が進んだほか、MFP事業が米州、欧州、日本で伸長し、プリントボリュームも回復した。シャープNECディスプレイソリューションズの連結効果もあった」とした。

 ICTは、売上高が前年比5.7%減の3240億円、営業利益が73.8%減の40億円。「米国、アジア、中国の法人向けPC事業が伸長したが、通信事業やPC事業での半導体隘路の影響が大きかったこと、第4四半期における中国でのロックダウンの影響があったこと、GIGAスクール構想に伴う国内PC需要の一服によって減収になった。半導体価格の上昇が減益に影響した」という。

 一方、デバイス事業の売上高は前年比1.2%増の1兆2565億円、営業利益は前年比87.6%増の273億円。そのうち、ディスプレイデバイスは、売上高が前年比5.8%増の8596億円、営業利益が前年比992.3%増の203億円。「スマホ向けの小型パネルの販売が減少。車載向けや、PCおよびタブレット向けの中型パネルが伸長。営業利益は、販売に占める中型パネルの比率が増加したことで、モデルミックスの改善が進み、前年比10.9倍になった」と述べた。

 エレクトロニックデバイスは、売上高が前年比7.4%減の3968億円、営業利益が44.9%減の69億円となった。「第2四半期から第3四半期の期初にかけて、新型コロナウイルスによる生産影響があり減収になった」という。

 部材価格の高騰や物流費用の向上、半導体不足の影響については、「2022年2月時点では、年間530億円の影響を見込んでいたが、実績はそれを40億円上回り、570億円のマイナス影響があった。2月の中国深センでのロックダウンなどが響いて増加した。コストダウンへの取り組み、設計変更などで対応している。足元では白物家電への価格転嫁は行っていないが、この状況が続けば、新製品への切り替えにあわせてさまざまな対応を検討していくことになる」とした。同社では、これらの影響は当面続くと見ているが、2021年度よりは回復傾向にあると予測している。

 円安の影響については、「ドルに対してはネガティブ、ユーロに対してはプラス。デバイス事業はプラスになるが、ブランド事業にとってはネガティブに働く。海外販売の拡大、AIoTによる付加価値展開、コストダウンや経費削減により、為替の影響をミニマイズしたい」(シャープ 常務執行役員管理統轄本部長の小坂祥夫氏)と述べた。

 また、減損損失として、第4四半期に149億円、通期で227億円を計上しているが、「第4四半期は、堺工場の有機ELの生産設備の減損がほとんどを占めている」(小坂氏)とした。

シャープ 常務執行役員管理統轄本部長の小坂祥夫氏
シャープ 常務執行役員管理統轄本部長の小坂祥夫氏

戴会長退任へ、副会長呉氏が社長兼CEOに就任

 一方、2023年3月期度(2022年4月~2023年3月)通期業績見通しは公表しなかった。野村社長兼CEOは、「新たな経営体制への移行とともに、中国のロックダウンやウクライナ情勢の影響も含め、事業計画などを改めて精査しているところである。2022年度の業績予想は、1カ月後を目途に公表を予定している」と述べた。

 なお、6月23日に開催予定の定時株主総会にあわせて、代表取締役会長の戴正呉氏、野村社長兼COOが退任。副会長兼CEOの呉柏勲氏が、代表取締役 社長執行役員兼CEOに、専務執行役員の沖津雅浩氏が代表取締役 副社長執行役員に就任することも発表した。

シャープ 副会長兼CEOの呉柏勲氏
シャープ 副会長兼CEOの呉柏勲氏

 呉柏勲副会長兼CEOは、今回の人事について、「新たなシャープが成長をするために、ESGをベースにした経営に移行することを考えている。ヘルスケアやカーボンニュートラル、HITO(人)、グローバルに力を注ぐことになる。それに向けた人事である」と説明。「私自身は、CEOとして経営全体を担い、海外事業の拡大も担当する。副社長に昇格する沖津専務は、デジタルヘルスおよび国内事業、カーボンニュートラルを担当することになる。白物家電、ソーラーなどの開発、製造、販売、国内外での経験を生かしてもらう」と語った。

 また、4月にCEOに就任してからの1カ月間については、「シャープのさまざまな拠点を訪問し、会社の状況を把握した。社員との対話のなかで感じることもあり、改革も必要だが、シャープの将来については、期待を持っている。4月に発表したように、経営方針は、ESGをベースにした成長戦略を描くことである。ヘルスケアやカーボンニュートラルにはこれまで以上に力を注ぐことになる。また、HITOに対しては、国内外の課題に対して、先頭に立って改革を行っていく」と抱負を述べた。

 北米でのテレビ事業やB2B事業については、「積極的に展開していく考えであり、量よりも質を重視することで他社と差別化をしていく。テレビ事業はフラッグシップの『AQUOS XLED』を最初に投入する。パートナーとの連携によって、北米での事業を展開していく」と語った。

 完全子会社化を計画している堺ディスプレイプロダクト(SDP)については、「方針に変更はない。シャープのテレビ事業に対してパネルを安定的に供給できるほか、B2B向けディスプレイパネルの安定供給にもつなげることができる。また、新興市場向けには、PC向けパネル、車載用パネルの拡大を計画している。亀山工場がフル稼働しており、キャパシティは飽和状態である。設計、開発、製造面で共有し、シナジーを持たせ、コストダウンや競争力強化につなげたい。SDPを加えて、パネル生産の最大化を図りたい。パネルやモジュールを垂直統合することにより、競争力を生み、シャープブランドを強化していきたい」とした。

 なお、当初、1年間は会長を続けるとしていた戴会長兼CEOは、シャープの子会社に在籍することになるとし、「アドバイスを得ることになる」とした。また、野村社長兼COOは、現在も兼務で就いている子会社のシャープマーケティングジャパンの会長として、「ブランド戦略を推進してもらい、国内市場の拡大を担当してもらう」と述べた。

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