東京海上グループが進める保険DX--加速する「デジタルとヒトのベストミックス」 - (page 2)

デジタルだからできる、新たな防災減災の取り組み

 続いて登壇した大島氏は、「防災コンソーシアム CORE」の構想や取り組みについて紹介した。防災・減災の領域で目指したいのは、「被災を半分にして、安心を2倍にすること」だという。



 防災コンソーシアム発足の背景には、社内での度重なる議論があった。大島氏は、このように振り返る。

 「防災減災は、現状把握、対策実行、避難、生活再建という4象限に分けられる。これまでも、保険会社として、被災状況の早期把握や保険金の円滑な支払いなど努力はしてきたが、それだけでは不十分。4象限すべてをカバーすることで、真の安心をお届けしたい。そのためには、自分たちが発起人となり、防災コンソーシアムを立ち上げようと考えた」(大島氏)。


 立ち上げでは、「地震や豪雨など、自然現象は待ってはくれない」と、スピードを重視。社内で発起してから約2カ月で発表に至ったという。想いを共にする多種多様な業界の13社(3月23日時点:14社)が結集し、2021年11月に防災コンソーシアムCOREが発足した。“CORE”(コア)という名称は、「防災・減災につながるコアとなるようなソリューションを共創し、中心(コア)にいる生活者や法人に安心を届けたい」との思いで名付けたという。


 そして大島氏は、コンソーシアムで取り組み始めたプロジェクトを2つ紹介した。一つは、「リアルタイムに、いま何が起きているのかを確認できる仕組み作り」だ。ハザードマップのような静的な情報では、いまこの瞬間の状況や、今後の予測といった動的な情報は届けられない。たとえば、川の水位や氾濫の状況をリアルタイムに把握できれば、自治体が正確な避難指示を発信でき、具体的な避難行動を促すことにつながるはずだ。また、日常の備えとしても、取組内容の解像度を上げることが見込める。いままさに、さまざまなセンサーの活用などを、コンソーシアム内で検討しているという。


 もう一つは、AI、ディープラーニング、IoT、センサーといった技術を活用して、建築物の劣化状況を解析する、デジタルツイン上で災害のシミュレーションを行うなど、予防保全の取り組みだ。デジタルを活用して、事前に対応していくことで、災害を物理的に減らすことを狙う。


 最後に大島氏は、「もともと東京海上グループは社会やお客様の声に耳を傾けて、社会課題に真摯に向き合っていきたいという思いが非常に強く、社内にも浸透している。今後も、社外の皆様と手を取り合って、自分たちだけでは取り組めないような課題も解決していきたい」と話した。

 今後、防災コンソーシアムCOREは、自治体との連携を通じた実証実験や創立メンバーに加えて、さまざまな技術を持つ企業の参画募集も実施していくという。具体的には、3D化、点群データ化、センシングなどの分野や“自然災害の原因は人間にもある”という仮説に立つと、CO2の削減など根本的な取組をしている企業も視野に入るとのことだ。大島氏は、「ぜひご提案いただきたい」と呼びかけた。

人類がリスクを乗り越える勇気を持つために

 講演に続く質疑応答では、本誌CNET Japan編集長の藤井涼がモデレーターをつとめた。藤井が「サイバー領域において、セキュリティ企業ではなく保険企業だからこその特徴や強みは」と尋ねると、生田目氏は「技術がどんどん向上するいま、セキュリティをブレイクするリスクは、いたちごっこのようにつねに存在する。高度なサイバー防御の仕組みをお持ちになった上で、被害を最小限にとどめるという形で保険の機能を活用いただければ」と回答した。

 また、「デジタルと防災減災の相性のよさについて、もう少し具体的にお伺いしたい」と投げかけると、大島氏は「たとえば、デジタルツインの仮想都市空間で自動運転車両を走らせ、意図的に災害を発生させると事故が起きるので、その事故情報をAIが学習して、自動運転のアルゴリズム開発に活かすことができるようになる。これは、デジタルだからこそできる仮説検証。防災減災の観点で、どこを優先的に補強するべきかなどの判断材料を前段階で得られる」と話した。

 最後に、カンファレンス共通の質問である「御社にとっての共創の一番の価値は」を聞くと、生田目氏はこのように答えた。

 「共創とは、保険企業の使命であるお客様の活動や生活を守るためには、必然のもの。あらゆる形でお客様のニーズに触れ、われわれが試作品を出し、改造し、より良いものにして世に問い、お客様の評価を得て、お客様の信頼につなげていくことで、内発的動機として保険を選択していただけることを目指したい。そして、保険が最後の最後に果たすべき役割とは、人類がリスクを回避するのみならず乗り越えるという勇気を持ち、さらに発展できるように貢献すること。ここに共創の価値があるのではないかと思っている」(生田目氏)

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