米FRB、中銀デジタル通貨について討議資料を公開--意見を公募

Liam Tung (ZDNET.com) 翻訳校正: 矢倉美登里 高森郁哉 湯本牧子 (ガリレオ)2022年01月24日 10時59分

 米連邦準備制度理事会(FRB)が、国内決済用に中央銀行デジタル通貨(CBDC)を発行することのメリットとデメリットを検討している。

 FRBによって発行されるCBDCは、電子決済をより容易に、より迅速にする可能性がある。一方で、既存通貨での取引と比べて、金融が不安定になったり、プライバシーが損なわれたりする懸念もある。

 FRBは米国時間1月20日に討議資料を公開し、パブリックコメントの募集を開始した。

 FRBはCBDC発行に対する立場を明確にしていないが、発行する場合は、「プライバシーが保護され、仲介され、広く移転可能で、本人確認ができるという条件下で、米国のニーズに最もかなうだろう」とした。

 既存の通貨と異なり、一般に利用可能なCBDCは、預金を原資に融資を行う商業銀行の負債ではなく、FRBの負債となる。そのため、CBDCは商業銀行の預金を減らし、信用と融資をより希少で、より高価なものにする可能性がある。

 「CBDCは、米国の金融システムの構造を根本的に変え、民間部門と中央銀行の役割と責任を変容させる可能性がある」(FRB)

 FRBは、CBDCが無利子であれば預金に与える影響はより小さくなる可能性があると示唆している。また、中央銀行はエンドユーザーが保有できるCBDCの額に上限を設けることもできるとしている。

 FRBがCBDCの検討を始めていることは、デジタル通貨分野で重要な意味を持つ。これまでは、中国がこの分野をリードして「デジタル人民元」の実証実験を進めてきた。人民元はドルとは違い、貿易や世界の準備通貨の中核ではないが、米国以外のデジタル通貨が支配的になればドルの覇権が揺らぐ可能性がある。

 「重要なのは、多くの諸外国や通貨連合がCBDCを導入した場合の未来像を描き、その影響を検討することだ。一部で示唆されてきたように、これらの新たなCBDCが既存通貨の米ドルより魅力的になれば、世界でドルの使用が減少する可能性がある。そこで、米国のCBDCがあれば、ドルの国際的な役割を維持するのに役立つかもしれない」(FRB)

 Gartnerの調査によると、これまでに83カ国がCBDCを検討または実験しているという。

 FRBは5月20日まで、金融の安定性にCBDCが与える影響、決済の匿名性に関する疑問、CBDCネットワークへのサイバー攻撃に対する防御、ファイナンシャルインクルージョン(誰もが金融サービスを利用できるようにすること)、CBDCの代替手段、FRBの金融政策決定能力などの問題を取り上げた22の質問についてパブリックコメントを募集している。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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