パイロットが挑戦する「ドローン」民間資格の取得(前編)--スクール選定から座学試験まで

 空からの美しい広大な景色の撮影から荷物運搬、農薬散布などあらゆるシーンで活用されているドローン。筆者は2022年にドローンの民間資格を取得した。ここでは、資格の検討から実際に取得するまでの体験をお伝えしたい。

民間のドローン民間資格を持つメリットとは

 現状あるドローンの資格はすべて民間資格だ。以前、あるドローンの実証実験を積極的に手がける会社の担当者に民間資格について質問したところ「中にはラジコンヘリ出身者など、取得していない人も多い」と言われたことがある。現状は公的な資格ではないので、すでに飛ばす技能を持っている人の中には資格の取得に懐疑的な人も多いとのことだった。

 2022年6月の航空法改正により、車や航空機の操縦士免許などと同様に「国家資格化」が予定されている。そうした中で、民間資格をなぜ取得するのか、という声もありそうだが、民間資格を保有するメリットは大きく2つあると感じた。

「空の産業革命に向けたロードマップ2021」より。「操縦者の技能確保」として、ライセンス化が予定されている
「空の産業革命に向けたロードマップ2021」より。「操縦者の技能確保」として、ライセンス化が予定されている

 「(一定の)技量証明になる」「飛行前申請の簡略」の2点だ。国土交通省の認定団体であれば、ほとんどの団体で10時間以上の飛行訓練を義務付けているため、民間資格の保有者は少なくとも10時間以上の飛行経験があるとみなされる。

 そのため、既存の民間資格は技量を証明するものとして使える。団体によっては、経験者として上級コースへの飛び級も可能な場合がある。また、空撮や農薬散布などの仕事を請け負う際の「保証」にもなるので、仕事で活用を検討している人には有用だろう。

 また、高度150m以上の飛行や空港周辺空域での飛行など、特定条件下で申請しなければならない申請書類のいくつかが提出不要になる。とはいえ、記入しなければならない書類量がもとから多いので、こちらのメリットはあまり期待できない。

 なお、ドローンスクールには、自動車教習所の「指定自動車教習所」「指定外自動車教習所」と同じように、国土交通省の認定を受けているスクール以外にも、大きな管理団体に属さずに独自の民間資格を発行するスクールもあるようだ。ただ、認定を受けているスクールが大半なので、スクールの案内などでは「国土交通省認定」や「国土交通省登録管理団体」といった表記を目にすることが多い。

 国土交通省航空局が認定する団体で資格を取得した場合、航空法で規制されている飛行空域や飛行方法でドローンを運航する際に必要な国土交通省への書類申請が一部免除になる。

 4月現在、掲載されているのは1292団体。150ページにわたるリストは、ウェブサイト(PDF)から確認できる。もし、受講を検討しているスクールがあれば、リストに掲載されているか、念のために確認をおすすめする。

民間資格の取得を決意するまで

 なぜ法改正目前のタイミングにもかかわらず取得を決意したのか、簡単な自己紹介を兼ねて述べさせてほしい。現在25才で、過去にエアラインでパイロットの訓練生をしていた「飛びモノ」好きでもある。

 航空業界では昨今、空飛ぶクルマとも言われるeVTOL(電動垂直離着陸機)とドローンが注目されており、日本ではANAやJALもドローン事業に相次いで参入している。また、航空機メーカーのボーイングが1人での乗務や自動操縦を試行しているとの話もあり、大型機の世界でもソロフライトが主流になるかもしれないことから、ドローンには興味を持っていた。

 しかし、実際にドローンとの接点はほぼなく、パイロットの訓練生時代に、ドローンとの衝突事例などを勉強した程度だった。同じ空を飛ぶものというイメージで、詳しいのではないかと誤解されがちだが、じつは今回の資格を取得するまではトイドローンさえ操縦したことがなかった。

 そうした中で、固定翼機だけではなくドローンも自在に操れたらいいなというパイロット的好奇心。また、取材をする中でもっとドローンを勉強して記事を書きたくなり、将来的にドローンを活用した実証実験に参加してみたい気持ちがあった。

 ただ、かなりの受講費用が必要なこと、「国家資格化」までは決定事項なのだが、具体的な話が一切出てこないこともあり迷っていたところ、航空関係に勤める友人からの後押しがあり、民間資格の取得を決めた。

講習で操縦している様子
講習で操縦している様子

ドローンスクールの選び方--受講費用は10万円以下から40万円超えも

 ドローンの知識はほぼなく、スクールの選び方もわからなかったため、Googleで「ドローン スクール 選び方」で片っ端から検索し、さらにInstagram、YouTubeなど、ありとあらゆるもので検索を繰り返した。

 検索すると、さまざまなドローン団体があることがわかる。有名どころでは、JUIDA、DPA、DPCAなどがあり、団体が公式にうたっているわけではないが、業務向けが強い、ホビー寄りなどの傾向があるようだ。ドローンを安全に飛ばす技術はどこの団体でも教えてくれるので、あまり団体にこだわらなくてもよさそうだ。

 ただし、農薬散布をしたいといった専門的な用途の場合、団体によっては対応していないところもあるので注意が必要だ。なお、農薬散布に関しては、NTTが運営するNTT e-Drone Technologyが農業従事者向けに民間資格を発行している。

 筆者は、ドローン団体よりも“スクールの質”を重視して検討し、いくつか検索して気になったスクールに問い合わせた。実際にメールや電話で問い合わせたり実際に足を運んだりして感じたのは、よいスクールと悪いスクールが意外なほどはっきりと分かれたことだ。

 除外した条件の一つに「極端に費用が安い」スクールがある。費用だけを考えた場合、10万円を切るものも複数存在したが、座学のみならず実技も簡略化されており、講師1人が10人を担当するようなスクールが多かった。確かに安価なのは魅力的だが、本格的にドローンを飛ばしたいと考えていた筆者には不向きと考えた。

 一方で、30~40万ほどするスクールの内訳を見ると、不透明なコストが加算されていることも多々あることから高いからよいとも限らないと感じ、「価格の最適解はなく、標準は20~30万円」と定めた。

 費用面の条件を絞って探すと、候補は30校ほどに限定できた。問い合わせでは、きちんと運営しているスクールかどうかを確認する目的と、専門知識のあるスタッフが多いスクールかどうかを確かめた。ちなみに、メールでの問い合わせも20校ほどにしたが、回答があったのはわずか7校だった。

 問い合わせの対応が遅い、もしくは返答がないスクールが意外と多いことに驚いた。ドローンスクールをサブ事業的に運営する会社も多く、良い印象ではなかったので除外した。

 ドローンの民間資格を取得しようと考えたとき、懸念事項に「取得費用」が挙がるのではないだろうか。自動車の運転免許と異なり「免許ローン」の用意がなく、基本的には一括で支払うことが多いからだ。

 30校ほどのスクールに問い合わせをしたが、クレジットカードで支払えるスクールもあり、分割を希望する場合はクレジットカードなどの「あとから分割」を利用する形になるとの話だった。手数料がかかるため、賢い選択肢ではないかもしれないが、一括の出費を抑える選択肢としては有用だと感じた。

 費用については、厚生労働省の「人材開発支援助成金」特定訓練コースの給付金が受けられる可能性もあるので、確認しておくとよいだろう。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画広告

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]