アパレル業界も「メタバース」へ--三越伊勢丹の仮想空間から見えてくるファッションの未来 - (page 2)

購入ページへのクリックレートは「約3倍」

 ビジネス視点でも、仮想空間には大きなメリットがあることが実証されつつある。REV WORLDSでは、アバターで商品に近づくと値札が表示され、それをタップすると現れるアイコンから商品を購入できるECサイトにアクセスできるが、そのクリックレートは「通常のメルマガなどの約3倍」に達するという。

 従来のプロモーション方法より高い効果が得られている理由としては、仮想空間の売り場に配置した装飾什器でブランドの世界観を作り込める点を挙げる。また、仮想空間を歩き回って他の売り場を「ついで見」することも多く、ユーザーの知らなかった商品との「思わぬ出会い」を自然に演出できることも要因だとし、一般的なECサイトなどとは「使える武器の数が違う」と仲田氏はアピールする。

高画質版REV WORLDSのコンセプト画面より。歩き回れる仮想空間では、「ついで見」することも多い
高画質版REV WORLDSのコンセプト画面より。歩き回れる仮想空間では、「ついで見」することも多い

 REV WORLDSを見た大橋氏は、こうした仮想空間をプラットフォームとして展開するにあたっては、知名度、集客力とともに、決済を担う部分もあることから、運営元、販売元の信頼性が最も重要になると指摘。その意味で三越伊勢丹は、リアル店舗で信頼ある商品を販売しており、各社ブランドとの密な関係性を保っていて、一定の顧客がついているなど、すでに高い信頼度があるため安心感は大きいと話す。

Apparel Play Office 代表取締役 大橋めぐみ氏
Apparel Play Office 代表取締役 大橋めぐみ氏

 さらに、たとえばリアル店舗でボディスキャンして自分の体型をデータ化できれば、仮想空間の自分にそっくりなアバターに着せるだけでなく、スーツをオーダーするときにもデータを活用できるとし、「バーチャル空間とリアル店舗との間で回遊する流れも作りやすいのでは」とも付け加える。

 一方の堀江氏は、REV WORLDSのアバター用ファッションを誰でも自由に作れるようになれば、ファッションデザイナーが「自分の作品を送り合ったり、発表しあったりする場にできる」のはもちろん、昨今のアパレル業界で課題になっているファッションロスの解決にもつながる可能性もあるとする。「自分のボディスキャンデータから服をオーダーメイドできることになれば、在庫が減り、価格も下がる。同じ金額でもクオリティが上がることになる。環境も含め、未来のファッションに向けたいい取り組みだと思う」

大伸社コミュニケーションデザイン 3DCGディレクター/クリエイター 堀江雅也氏
大伸社コミュニケーションデザイン 3DCGディレクター/クリエイター 堀江雅也氏

生地のロスだけでなくアイデアのロスも守る

 大橋氏によると、近年のアパレル業界では、デザインについて「そのブランドの特徴があるものではなく、売れ筋に寄せる傾向がある」とのこと。ファッションデザイナーが「自由度のないものを作らざるを得ない」状況だが、この状況に慣れていくと、デザイナーが新しい発想でものづくりできなくなってしまうという危機感もある。

 デザイナーとして認められるためには「自分が発想したものをどんどん世に出していき、自分が志向しているのはこういうものである、というアピールをしていくことが大事」と大橋氏。着るものとしてのファッションではなく、あえてアートとしてのファッションを志向することもでき、それをリスクなしに試せるという意味でもREV WORLDSの価値は高いと同氏は見ている。

 また、現実で着用するものではないため、最初から完成した製品として出す必要がないことも利点となる。堀江氏は、たとえば「検討段階のものからバーチャルで出して、評価を受けながら形にしていく」といったファッションの作り方もありえるとし、「学生が作ったものについてプロが意見し、ブラッシュアップして製品にしていくような動きも増えるのでは」という期待感を示した。

REV WORLDSのアバター用のファッションアイテムは1カ月に20~30種類ずつ追加している
REV WORLDSのアバター用のファッションアイテムは1カ月に20~30種類ずつ追加している

 現在のところREV WORLDSのアバターのファッションは運営側で随時追加していく形だが、将来的には企業や個人によるデータ販売も視野に入れている。いずれは仮想伊勢丹新宿店に、ファッションパーツを販売するカテゴリーごとの専門フロアを用意する、といった仮想空間ならではの“店舗づくり”もしてみたいと仲田氏は意気込む。

 誰もが自分のアイデアを実現できる場を用意し「生地のロスだけでなくアイデアのロスも守る」ことも狙っているという同氏。REV WORLDSを通じてそれを可能にすることで、「若者にファッションのポテンシャルを伝えていきたい」という野望も口にした。

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高画質版REV WORLDSのコンセプト画面より。このクオリティで楽しめるPC版などの登場にも期待が高まる
高画質版REV WORLDSのコンセプト画面より。このクオリティで楽しめるPC版などの登場にも期待が高まる

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