フィリップス×東北大学、7年間の戦略的研究契約を締結--遠隔教育やAIデータ解析で

 フィリップス・ジャパンと東北大学は12月8日、共同で「麻酔科医の遠隔教育」と「慢性心不全病態のAIデータ解析」をテーマにプロジェクトを進めることを発表した。

フィリップスが掲げるデジタル技術の活用
フィリップスが掲げるデジタル技術の活用

 共同プロジェクトは、2020年10月にロイヤルフィリップスが主催するイノベーション推進のためのプログラム「Clinical Research Board」(CRB)の日本初の認定パートナーとして、東北大学が選定されたことを受けて実施するものとなる。

 今回の契約は、7年の長期契約となっており、東北大学が持つ高度医療と地域の医療に関する豊富な知識と経験、卓越したユーザーエクスペリエンスを生み出せる環境と、同社のグローバルでの知見や研究開発機能を融合させ、医療現場、健康・予防領域のアンメットニーズ(未充足の課題)を解決。さらには、世界に向けて、先進事例となるような新しいソリューションやサービスモデルの創出を目指す。

 選定テーマである麻酔科医の遠隔教育については、日本が慢性的な麻酔科医不足の状態にあることから選ばれた。麻酔科医の20〜30歳代の半数以上が女性で、増加しているにもかかわらず、出産や育児に伴い、単位不足や専従医不足で専門医の更新に支障をきたす事例も少なくないという。

 また、広大な面積の割に専門教育の施設が少ない東北地方では、引越しや移動など、モビリティに関する課題も多い。人生とキャリアの重要な局面においても、働き方を犠牲にせず、専門性を高め、維持することは困難が伴うという。

 加えて、コロナ禍で、臨床現場での実習が実施できず、確立された代替手段がない中で、医学生や研修医の育成が求められ、「教える側」の働き方にはかつてない大きなプレッシャーが生じている。

 そこで両者は、麻酔科医を取り巻く課題を解決する手段として、実習者と指導者が時間や地理的制約を受けず、現場実習相当の学びを再現できる仕組みをAR/VR技術を用いて実現する方針。まずは、プロトタイプの開発と実証から開始し、将来的には海外CRBパートナーと連携し、国際基準での教育を実現する次世代教育プラットフォームへと繋げて行くことを目指す。

 もうひとつのテーマである慢性心不全病態のAIデータ解析については、心不全患者の増加が世界的な問題であることから選ばれた。

 日本の心不全患者数は、およそ100万人。超高齢化により、更に増加するといわれており、病気と生きる患者と家族にとってだけでなく、医療提供体制の観点からも社会的に大きな課題となっている。

 東北大学には、東北6県の関連24施設における心不全患者の病気の発症から進行を追いかけた日本最大の前向き登録観察研究のデータと、治療に携わってきた医師の知見に加え、部門や診療科横断での研究を推進するために設立された「AI Lab」がある。

 東北大学の貴重な資産と、同社の国内外におけるデータサイエンス領域での知見・技術力を掛け合わせ、心不全患者の患者体験・アウトカムの向上や、医療提供体制上の課題を解消するための仕組みの開発を目指すという。

インテグリティ・ヘルスケアとも提携拡大--遠隔医療の共同開発を加速

 加えて、ロイヤルフィリップスは、革新的な遠隔医療の共同開発を加速するため、日本のヘルスケアインフォマティクス・パートナーであるインテグリティ・ヘルスケアとの提携拡大を発表した。同提携によって、インテグリティ・ヘルスケアの疾患管理システムを同社の在宅ケアソリューションと進化させながら、更なる統合に向けてフォーカスしていくという。

 契約の一環として、同社はインテグリティ・ヘルスケアの少数株主持分を取得している。

 同社とインテグリティ・ヘルスケアはこれまで、在宅呼吸ケアに関わる医療従事者と患者をつなぐ遠隔医療システム「eHomeCare呼吸管理プログラム」を共同で開発してきた。今回の資本提携により、コロナ禍でオンライン診療を希望される在宅患者、通院が困難な地域や高齢者など、多様なニーズに迅速に対応していくという。

 さらに、2022年にはeHomeCare呼吸管理プログラムに「睡眠時無呼吸管理プログラム」「心不全管理プログラム」「抗がん剤服薬管理プログラム」を追加した「統合版eHomeCare」の展開を予定している。

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