空き家活用サービス「アキサポ」を手掛けるジェクトワンは12月1日、空き家活用ビジネスのこれまでと今後について話す、記者説明会を開催した。2021年は空き家所有者からの問い合わせが前年度比870%増と大幅にアップしたという。
ジェクトワンは、2009年に設立した不動産会社。住宅、ビル、商業、ホテルなどの総合不動産開発事業のほか、リノベーション事業などを幅広く手掛けている。空き家活用ビジネスについては、設立から8年目のタイミングで「新しい事業を始めたいと思った。当時から空き家は社会問題になっており、それならば空き家を活用する事業をやりたいと考えた」とジェクトワン 代表取締役の大河幹男氏は立ち上げの経緯を話す。
2021年度は、空き家物件情報800件、問い合わせ件数992件、活用実績43件と大きな反響を読んだアキサポだが、スタート当初は空き家の情報が全くなく、情報を集めるためにアルバイトを雇い、地図を見ながら空き家を探していたとのこと。「空き家と思われる家屋を地図上にプロットし、その上で謄本を調べ、所有者に飛び込み営業などをしていったが、かなりの確率で断られた。その理由は、不動産営業だと思われたから」と当時を振り返る。
その後、ダイレクトメールを送付したり、ラジオのCMを流すなど、積極的な広告活動も展開したが「反響はほとんどなく、これだけ費用対効果が合わない事業があるのかと思いながらやっていた」と明かす。
潮目が変わったのは、空き家問題が顕在化し、メディアなどで取り上げられるようになったこと。「空き家問題がメディアで取り上げられる度、その報道を目にした空き家の所有者の方が問い合わせてくれるようになった。全国の空き家率は2018年の調査で13.52%。846万戸あると言われている。しかし所有者の7割以上が『何もしていない』というのが現状。そうした人たちが報道を見て重い腰を上げるようになった」と説明する。
アキサポは、空き家を借り受け、全額費用負担してリノベーション工事を行い、一定期間転借するサービス。空き家所有者は、リノベーションを行い空き家の価値を高められるほか、リノベーション設計や施工、工事管理もすべてアキサポに任せられるというメリットがある。
アキサポは、所有者から空き家を借り上げ、工事費負担額を考慮した転貸料収入との差額収益で、初期投資費用を数年間かけて回収する。
「空き家はどんどん増えているのに、なぜ放置してしまうのか。それは、そのまま管理をし続ける、売却する、解体するといった選択肢しかなかったから。ここにアキサポという新しい選択肢を用意することで、空き家問題を解決していきたい。空き家活用事業で収益が得られれば、空き家が減る、そういう道筋を立てたいと思った」という。
事業開始から約5年を経て、空き家活用のノウハウも蓄積してきた。住宅のほか、クリニックだった建物をカフェとシェアハウスに、新聞の集配所を店舗とシェアハウスなど、「大事なのは企画力。住宅として再生するには限界があるので、非住宅の考え方を多く取り入れている。住宅をそれ以外に再生することで空き家の総数を減らしていく」とアイデアは豊富だ。
「空き家所有者の多くは空き家だから活用できないと思っている。例えば周辺に家が多ければ、家ではなくトランクルームにすることで周辺の住民の方に利用してもらえるし、3LDKの住宅を3つのシェアオフィスに再生して、近隣のリモートワークの方に使っていただいている。中には、更地にして駐車場にするケースもある」と知見を積み重ねる。
アキサポは、6月に全国展開として、各地の空き家事業者と提携する「アキサポネット」を本格始動。培った知見を地方の空き家再生にいかす考えだ。
「アキサポネットは初年度20社の提携を目標にしていたが、現時点で12社に加盟いただいている。今後3年で70社、5年で100社以上を目指したい。地域が抱える空き家問題をアキサポネットならば解決できる、そう思ってもらえる組織づくりを目指す」と今後を明確に描く。
大河氏は「アキサポ事業は空き家を活用することがゴールではなく、空き家をなくすことがゴール。空き家事業をはじめて、毎日の空き家のことを考えている。空き家は活用することが当たり前の世の中にしていきたい」とした。
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