米商務省は米国時間11月24日、米国企業が中国の8つの企業と研究所に量子コンピューティング技術を輸出することを禁じる措置を取ったと発表した。米国がやりとりする機密通信の暗号解読を防ぐとともに、中国による新たな軍事技術の開発を阻止しようとするものだ。
Gina Raimondo商務長官は声明で、「世界の通商貿易が支えるべきなのは平和、繁栄、高給の雇用であり、国家安全保障上のリスクではない」と声明で述べた。
量子コンピューターは技術的にまだ成熟していないとはいえ、いずれ従来型の暗号を解読する能力を持つ可能性を秘めている。米国政府は量子コンピューターを使った攻撃でも解読が困難なポスト量子暗号を開発する現在進行中のプログラムを主導しているものの、量子コンピューターの性能が十分に上がると、傍受された通信の内容が第3者に読み取られるおそれがある。
量子コンピューターは極小の物質にはたらく物理学の法則を利用して、現在のスマートフォン、ノートPC、スーパーコンピューターなどに使われている従来のコンピューターチップとは根本的に異なる方法で計算を実行する。しかし、今のところは小規模な環境での稼働にとどまっており、演算の失敗を招くエラーが起きやすいほか、設置場所には細かい条件があり、超低温の環境が必須だ。
商務省は「対ステルス、対潜水艦への応用」など、量子コンピューティングの軍事面でのリスクも指摘している。今回、輸出規制に関するエンティティーリストに追加された中国の機関については、米連邦官報に詳しい情報が掲載されている。
量子コンピューターが潜在力を持つもう1つの市場は、新素材の開発につながる可能性がある分子構造のシミュレーションだ。軍事技術はこれまでも材料科学から大きな恩恵を受けてきた実績があり、量子コンピューティングは新たなブレイクスルーにつながる可能性がある。
これらのブレイクスルーから利益を得ようと、多くの米国企業が量子コンピューターの開発に多額の資金を投じている。こうした企業にはGoogle、IBM、Microsoft、Honeywell、IonQ、Rigetti Computing、D-Wave Systems、Intelが名を連ねる。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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