名称に「Pro」が付くデバイスは実際のところ何なのだろうか。
「Pro」は、消費者向けテクノロジー製品で最も一貫性のない使われ方をしている言葉かもしれない。もともとは、プロフェッショナル向け製品であることを示す言葉だったが、豪華さを表現するためにも使われる。Appleの32インチRetina 6Kディスプレイ「Pro Display XDR」の「Pro」はプロフェッショナル向けだ。「iPhone 13 Pro」の「Pro」は「iPhone 13」よりちょっと豪華であることを示している。カメラは本当に豪華だけれど。
「Pro」という用語は、同じシリーズ製品の違うモデルを意味することもある。ここ数年、「MacBook Pro」は「MacBook Air」の改良版だった。だが、10月に発表された新MacBook Proは、本当にプロフェッショナル向けモデルだ。多くのポートが復活し、驚くほど強力な「M1 Pro」と「M1 Max」チップを搭載し、「iPad Pro」と非常によく似たミニLED技術採用のディスプレイを備える。
そして、iPad Proだ。これはカテゴライズするのが難しい代物だ。タブレットとしてもラップトップとしても売り込まれている。名前に「Pro」が入っているものの、ほとんど同じデザインの「iPad Air」(およびその他のiPad)とどこが違うのか、すぐには把握できない。iPad Pro(第5世代)には、これまでのMacBook Proに搭載されているのと同じプロセッサーファミリーのM1チップも採用されている。そうすると、MacBookとiPadは将来的には統合されそうな気もする。だが、そういうわけでもない。
普段使いのノートPCの代わりを果たせるiPadだから「Pro」なのだろうか。iPadには性能が良くなった最新の「iPad mini」を含めて4モデルあることを考えると、Proは誰のためのものなのだろう。12.9インチのiPad Proを約2カ月使った結果、MacBookと共存するiPad Proの立ち位置やiPadの「Pro」の意味についての私の混乱が少し解消された。
まず、iPad ProはノートPCの代替手段ではない。次に、これはプロフェッショナル向けのデバイスだ。そして、そこが重要なポイントだ。本当のプロフェッショナル向けデバイスであるということは、万人向けではないということだ。
iPad Proは夢のマシンだ。私を含む多くの人々がノートPCの適切な代替品になると夢見ていた。キーボードを追加でき、メモを取るために「Apple Pencil」もサポートする、スタイリッシュなタブレットだ。では、キーとトラックパッドが付いたAppleの「Magic Keyboard」を装着すれば、iPad Proは普段使いのノートPCとして使えるかというと、残念ながらそうはいかない。
ハードウェアの問題ではない。Magic Keyboardは小さいながらも使い心地は十分いいし、バッテリー持続時間も問題ない。性能も十分だ。問題は、iPad ProのOSが「iPadOS」であるということだ。iPadOSは今のところ、コンピューターのOSよりもスマートフォンのOSに近い。
ほとんどの場合、iPadOSの癖は簡単な対策で回避できる。例えば「Googleドキュメント」を使う場合。iPadOS版アプリはブラウザーで利用する場合と比べると使いにくく、読み取りモードと書き込みモードを切り替えなければならない。すぐに見つけた解決策は、アプリではなく「Safari」ブラウザーでGoogleドキュメントを開くことだった。
ほとんど一事が万事だ。
私は自分の仕事の98%をiPad Proでこなせるが、残念なことに残りの2%は非常に重要なものだ。例えば、iPad Proで記事を快適に執筆できるが、それを米CNETのコンテンツシステムで公開しようとするとうまくいかないことが多い。これは明らかに問題だ。同様に、仕事で使っている「Outlook」のメールクライアントがうまくいかないことがよくある。Mac版Outlookではコピー&ペーストできるが、「iPhone」とiPad Proではうまくいかない。これらの問題は、Appleのせいではない。メーカーがiPadOSのようなハイブリッドなOSよりもコンピューターでまともに稼働するようにツールを構築するのは仕方のないことだが、現実として、ほとんどのメーカーはツールをiPad用に最適化しない。
Appleにできることの範囲で私がiPadに最も望む機能は、外部ディスプレイとのデュアルスクリーン対応だ。iPad Proの画面を外付けディスプレイにミラーリングすることは今でも可能だが、画面を拡張することはできない。iPad Proの性能とUSB-Type Cポートを備えていることを考えると、これはハードウェア的な制限ではなく、AppleがOSのアップデートで可能にできる(そして将来的にはしてくれるであろう)機能だろう。
多くのユーザーが、9月にリリースされた「iPadOS 15」で真のマルチディスプレイ機能をサポートすると期待していた。だが、そうはならなかった。その代わり、iPadOS 15はiPad Proをさらに快適に操作できるようにする幾つかの改善をもたらした。マルチタスクがより便利になり、ホーム画面にウィジェットを配置できるようになり、Apple Pencilを使っている際、画面の右下から斜めにスワイプすることでメモ用紙を表示できる便利な「クイックメモ」機能が追加された。
iPadOS 15のアップデートは、今更ながら便利になったウィジェットの新機能を含めて間違いなくiPad Proの使い勝手を改善したが、根本的に変えてはいない。だが、そこがポイントだ。ノートPCの代替にする目的でiPad Proを購入するべきではないのだ。
あいまいな言葉「Pro」の話に戻る。iPad Proの場合、「Pro」は「ハイエンド」という意味ではなく「プロフェッショナル向け」という意味だ。iPad Proの「Pro」は、Pro Display XDRの「Pro」と同じ意味だ。われわれ一般人はこのディスプレイの4999ドル(日本では税込58万2780円)という価格に呆れるが、一部のプロのクリエイターは、これを数万ドル台の業界レベルのディスプレイの代替と見る。プロフェッショナルはPro Display XDRを豪華なディスプレイではなく、問題を解決するディスプレイと見なす。構成によっては6000ドル(約69万円)になる新しい16インチのMacBook Proも同じだ。
多くのプロフェッショナルがiPad Proを問題解決のための製品と見なしている。プロのクリエイターは、最新iPad Proの高いプロセッサーパワーとRAM容量に注目している。これらは「Procreate」「LumaFusion」「Photoshop」などのアプリをより快適に実行するのに役立つ。プロテニスプレイヤーの中には、iPad ProのLIDARカメラを利用してフォームを解析するアプリを気に入るかもしれない。
MacBook Proはまだタッチスクリーン対応ではなく、Apple Pencilを使えず、iPadに搭載されているような高性能カメラを搭載していない。iPad Proは何よりもアートと写真のツールだ。それ以外については、他を当たる必要があるだろう。つまり、iPad Proで生産性を向上させる方法がまだ分からない場合は、iPad Air、iPad mini、あるいはそれ以外の旧式iPadを購入した方がいいだろう。
または、Macでもいい。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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