VRで認知症患者の記憶をサポート--米スタートアップRendeverの取り組み

Greg Nichols (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部2021年10月29日 07時30分

 社会的孤立の影響を軽減するための仮想現実(VR)ソリューションを手掛ける米スタートアップRendeverは、その技術を高齢者介護施設のVantage Point Retirement Livingに提供している。両社の提携の目的は、アルツハイマー病などの認知症を患う人々のための記憶サポートプログラムなどを通じて、こうした症状で大きな影響を受けている高齢者の生活を改善することだ。

Rendever
提供:Rendever

 記憶機能に与えるVRの有効性に関する研究が増えている。米メリーランド大学の研究者は2018年、没入型のVR環境が従来のプラットフォームよりも学習と記憶保持に優れているかどうかを判断するための初の詳細な調査を実施した。「Virtual Reality」誌に掲載された調査結果は、PCの画面よりも「没入型器具」の方が空間認識を可能にするため、記憶を支援する記憶術「記憶の宮殿」を使いやすいことを示した。

 RendeverのVR技術は、社会的孤立による影響に対処することを目的としており、よく知られる複数の高齢者施設で採用されている。同社は米国立衛生研究所(NIH)および米国立老化研究所(NIA)から研究資金を援助され、全米退職者協会(AARP)やVerizonなどの大規模な組織と商業的提携を結んでいる。

 Rendeverの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のKyle Rand氏は「毎年何百万人もの米国人がアルツハイマー病や認知症の影響を受けている。われわれは、苦しんでいる人々を助けるツールを開発することに誇りを持って日々取り組んでいる。Rendeverのプラットフォームは社会的孤立を減らすよう設計されているが、高齢者の総合的な精神と肉体の健康を改善することに特化しているため、Vantage Pointのような優れた組織と提携し、社会的孤立に関連する他の健康の課題にも取り組むことができる」と語った。

 なお、この技術は少なくとも初期段階でプラスの影響を与えているようだ。

 「ある入所者は、Rendeverのプログラムの開始段階では2、3の言葉しか話さなかった。彼女は今、会話し、過去の思い出を語れるようになった」と、Vantage Pointの共同創業者で同社のNew Directionsプログラムを統括するRita Stevens氏は語った。New Directionsは、アルツハイマー病や認知症を患う人々のためのプログラムだ。「Rendeverの没入型プラットフォームを使った後、入所者が会話できるようになったのは素晴らしいことだ。彼女はバーチャルで遠い国々を訪れ、象に乗るなどの楽しい活動をした。家族は愛する人の個性が戻ったのを見て感動する。これはRendeverとのパートナーシップの真の証だ」

 メリーランド大学の研究によると、記憶力のテストでは、VRを使ったグループは統計的に明らかな改善があり、PCの画面を使ったグループよりも8.8%高いスコアを獲得した。

 同大学におけるコンピューターサイエンスの博士課程の学生で、この研究論文の筆頭著者のEric Krokos氏は「人類は常に、情報を覚えるために視覚ベースの方法を利用してきた。洞窟の壁画も、粘土板も、紙に印刷た絵と文字も、動画もそうだ。われわれは、VRがこの進化の次の論理的な段階になるかどうかを知りたかった」と語った。

 すべての新しいテクノロジーと同様に、VRによる記憶補助について実際の有効性を認める前に、さらなる研究が必要だ。2020年のある研究では、VRが視覚的記憶に干渉する可能性があるという調査結果が示され、VRが効率的な学習に役立つという一般的な社会通念に異議を唱えている

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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