Intelは米国時間9月30日、「Loihi 2」チップを発表した。Loihi 2は、従来のエレクトロニクスを人間の脳の構造と結びつけて、コンピューティング業界に何らかの新しい進歩をもたらそうとするプロセッサーの第2世代だ。
Intelによると、ニューロモーフィック(神経形態学的)コンピューティングと呼ばれる技術の一例であるLoihi 2は、旧世代の「Loihi」よりも最大10倍速いという。速度が向上したのは、人間の脳細胞に相当し、脳による情報処理方法を模倣したチップ「デジタルニューロン」の数を8倍に増やしたためだ。このチップは、研究者がより多くのコンピューティングタスクに取り組めるように、プログラミングもしやすくなっている。
Loihi 2も、「Intel 4」製造プロセスの試作バージョンで作られている。Intel 4は、Intelが2023年に発売する主力プロセッサーの生産に利用する予定の最新製造プロセスだ。Intel 4プロセスでは、チップにエッチングする電子回路の密度を高められる。これは、30平方ミリメートルのチップに100万個のデジタルニューロンを搭載したいIntelのニーズに不可欠なメリットだ。
Loihiを開発したIntelのNeuromorphic Computing Labを率いるMike Davies氏によると、Loihiチップは、ジェスチャーや音、さらには匂いなどの感覚入力を素早く検知することに特に優れているという。ロボットの触覚を改善してくれるかもしれない人工皮膚に焦点を当てた実験も行われている。Davies氏は、「ロボットが片手でカップを持ち上げようとすると、その滑り具合を検知できる」と述べている。
ニューロモーフィックコンピューティングは、人間の大脳灰白質の物理的特性の方に重きを置くため、人工知能(AI)とは異なる。AIは、脳がどのように学習して反応するかという点を緩やかに基盤とする革新的なコンピューター技術だ。
従来のチップとも根本的に異なる。たとえば、Loihi 2はデータを従来の大容量のコンピューターメモリーではなく、ごく少量のニューロンのメッシュに分散して保存する。また、チップ上の演算ステップを同期させるための中央クロックも備えていない。
Loihi 2は、スマートフォンやノートPCに搭載されるものではない。自動車メーカーや研究所、大学の研究者を対象としている。ドイツ鉄道はLoihi 2を利用して、列車の運行スケジュールをどれほど最適化できるかをテストしている。このプロセッサーは、音の処理や手のジェスチャーの検出といったタスクを想定しており、しかも消費電力を大幅に抑えられるとDavies氏は述べている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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