ベテラン看護師がいきなり関電の新規事業担当者に--「くちびるが感動する」カトラリーを生み出した猫舌堂・柴田氏 - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2021年10月15日 09時00分
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「後戻りはできない」という言葉で覚悟が決まった

——関西電力のもとで起業したことによるメリットなどを感じるところはありますか。

 何もないゼロから会社を立ち上げるより、関西電力というバックがあることですごく助かっているところはあります。取引先などからは、関西電力の子会社だから手助けしたい、と言っていただけるときもありますし、応援もしてくれます。

 あとは、実証実験のとき「かんでん起業チャレンジ制度」のなかで、自分の業務時間の2割をそのお手伝いに割り当てられるという「デュアルワーク制度」もあるんです。それに猫舌堂の手伝いを割り当ててくれた人がいて、ちょうど私が孤独にやっていて一番つらかったタイミングだったので、すごく助けられましたね。

 経理処理の方法を教えてもらったり、ヒアリングのアポイントとって同行してもらったり。この制度のなかではメンターからアドバイスをいただけるものの、やるのは全部自分なんですよね。1人だと孤独ですし、パフォーマンスも上がりませんから、手伝ってもらえたのは本当にありがたかったです。

——ちなみに元いた病院の同僚からは、柴田さんが起業することについてどういう反応を受けましたか。

 そもそも「かんでん起業チャレンジ制度」というものがあることを教えてくれたのが病院の後輩でした。自分が患者側の立場になって以来、周囲には「今の病院ではできないこういうことを、いずれ自分でやりたいんだ」という夢をずっと語り続けていましたので、それを覚えていた後輩に「応募してみたら」と言われたんですよね。

 だから、言葉に出して伝えることって大事なんだなって思いました。言い続けることで、それに賛同してくれる人が少しずつでも増えていくんだと。それはすごく実感しましたね。

 慌ただしく異動することになりましたが、病院の同僚にはたくさん応援してもらえました。ただ、未知の世界に飛び出すわけで、看護部長からは「後戻りはできないから、しっかりやってきなさい」という厳しくも温かい言葉をいただきました。あの言葉がなかったら、「まあ失敗したら戻ってくればいいか」くらいに思って、生半可な気持ちでやっていたかもしれません。

——猫舌堂の今後の計画について教えてください。

 製品については、これからも「くちびるが感動する」というものに付随したプロダクトを考えていくつもりですが、一番大事にしていきたいのはコミュニティですね。コミュニティを作って活性化させ、そのなかから新しい価値を生み出せればと思っています。今までありそうでなかったよね、というアイデアを製品やサービスの形にしてければ。

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 それと、もともとはカフェを作りたいという思いで始めたことですので、カフェがやりたい(笑)。2人に1人はがんになると言われる時代です。みなさんやみなさんの周りで、がんに関わらない人はいないのではないかと思うんです。がん経験者や、その人を支える人たちのサポートができるカフェにできればと考えています。

 カフェの具体的な構想はちゃんと自分の頭にあります。あとはそれに適切な場所や人材を見つけられれば。飲食店のノウハウもありませんし、お手伝いしてあげるよ、という人がいればとてもうれしいんですけども、お客様のなかにはデリケートな方がいらっしゃることもあるので、その対応の仕方も考えると、ただ単に飲食店をオープンするのとは違うと思うんです。

 飲食店としては場所も大事でしょうから、焦らず、慌てず、諦めず、待っていればその時がきっとくるからと言い聞かせて、できることをちょっとずつやっていく、ということをしています。今のメンバーは3人ですが、事業を加速していくにはやっぱりもっとたくさんの人手が必要だと感じているところです。

——柴田さんにとって、イントレプレナーに必要なこととは何だと考えていますか。

 強い情熱をもっていること、「こうしなければならない」という枠に囚われないこと、本当に必要かどうかを見極められる力をもつこと、そして人と人とのつながりを大事にして、人からの評価を気にしないこと、でしょうか。

 「自分がこうすることで、周りからはこう評価されるかもしれない」という思いに囚われてしまうと、どうしても無駄な時間を過ごしてしまうんですよね。ですので、自分が本当に必要だと思ったことは、情熱と、枠に囚われない勇気をもって、まっすぐ立ち向かうことが大事ではないかと思います。

——ありがとうございました。それでは最後に、柴田さんが尊敬する他社のイントレプレナーをご紹介いただけますでしょうか。

 ポーラ・オルビスの社内ベンチャー制度で新会社encycloを立ち上げた、水田悠子さんをご紹介したいと思います。水田さん自身もがんを患い、その後遺症で弾性ストッキングで脚を圧迫し続ける必要があるのですが、医療用ということもあってストッキングが分厚く、機能性や履き心地、ファッション性に欠けているんですね。そういった点を解決した弾性ストッキングを開発されている方です。

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