P&GやFacebookを経て辿り着いた「デジタル時代のものづくり」--MOON-X・下村祐貴子氏

永井公成(フィラメント)2021年09月03日 09時00分

 企業の新規事業開発を幅広く支援するフィラメントCEOの角勝が、事業開発やリモートワークに通じた、各界の著名人と対談していく連載「事業開発の達人たち」。

 今回はP&GやFacebookを経て、日本のものづくりをデジタル時代の手法を用いて提供するMOON-Xの執行役員CCOである下村祐貴子​​さんです。P&Gでものづくりを学び、Facebookでアジャイルな開発手法を学んだ下村さんが、MOON-Xでどのように製品開発をしているかについてお聞きしました。

MOON-X下村祐貴子氏
MOON-X執行役員CCOの下村祐貴子さん

デジタル時代の作り方で、ものづくりを実践

角氏:下村さんはP&G、Facebookを経てMOON-Xに入社されたとのことですが、MOON-Xを始められて何年になるのでしょうか。

下村氏:MOON-Xは立ち上がったのが2019年の8月なので、丸2年弱ですね。私が入ったのはFacebookを辞めてからなので1年3〜4カ月ぐらいになります。

角氏:その間にいろいろ立ち上がっている事業もありそうですね。いまはいくつあるんですか。

下村氏:いまは3ブランドあります。「CRAFTX」と「SKIN X」と「BITOKA」というブランドです。当初はスキンケアだけだったのが、シャンプーやアルコール飲料も出すようになってきているので、初期の頃の製品数と比べると、とても増えていますね。

角氏:下村さんはMOON-Xでどういうお仕事をされているんですか。

下村氏:入社当初はBITOKAという女性用のスキンケアブランドの事業責任者を担当していましたので、そのブランディングも担当していました。いまは広報に軸を移し、資金調達や外部とのリレーションも担っています。

角氏:MOON-Xで作られているものについてぜひ詳しくお聞きしたいです。

下村氏:「CRAFTX」というブランドではビールを作っています。先日の父の日には、ありがたいことに全部品切れになるなど大変な人気でした。

角氏:全部品切れとはすごい!

下村氏:はい。この「CRYSTAL IPA」がうちのフラッグシップのビールです。実はこれ、横にロット番号が書いてあって。発売当時は「000」だったんですよ。それをお客様のフィードバックに合わせて、「001」「002」とアップデートしてきていて、次が「003」なんですね。そういうふうにして、たとえば「もう少し香りが立つものが欲しい」とか、缶のデザインとかも「富嶽三十六景はかっこいいけど、もっとちょっとモダンなものも見てみたい」という意見があったらそれを作ってみたりとか。そうやってどんどん進化させていくのがこのビールです。(※現在はデザインリニューアルのため、ロット番号は記載なし)

CRAFTXウェブサイトより
CRAFTXウェブサイトより

角氏:ITの世界で言うところのアジャイルな作り方ですね。

下村氏:そう、アジャイルなものづくりです。私たちはずっと「共創」と呼んでいます。お客様や生産者の方と“共に創る”ということです。九州ではナンバーワンのクラフトビールのメーカーさんや茨城の常陸野ネストさんとパートナーを組んでいます。私たちのレシピを彼らが作ってくださっているんですけど、そのレシピの改良もお客様のフィードバックを元に行います。「これとこれとこれをやったら良さそう。でも、これを取り入れたらちょっと味がボケる」というようなことを生産者の方たちと調整しながら共創しています。

角氏:すごいですね。やっていく途中で「あれ?もしかしたらこういうところにもニーズがあるかも」というものが発見されたら、そこで新しいものも作っていくという感じですか?

下村氏:そうなんです。まさにそれをやっていたのがレモンサワーのクラウドファンディングだったんです。お客様に聞いていても、ビールばかりずっと飲み続ける方ってあまりいないんです。1杯目にビール、2杯目はレモンサワーやワインが飲みたいという声が多くて、ヘルシーなレモンサワーを作ってみることになりました。でも、われわれはビールブランドと思われているため、本当にレモンサワーでいけるのかわからなかったので、試しにクラウドファンディングをすることになりました。

CAMPFIREウェブサイトより
CAMPFIREウェブサイトより

角氏:テストマーケティング的な意味合いですかね。

下村氏:そうですね。コンセプトにどれだけ共感していただいているのか、すぐわかるのがクラウドファンディングのメリットです。ブランドづくりの新しい形だと思います。資金が調達できるのはもちろんですが、たとえばハードセルツァー、ボタニカル、ヘルシーなど、お客様に何がフィットしたのかもよくわかります。

角氏:これがどんな製品なのか、「ハードセルツァー」という言葉も含めてご説明いただけますか?

下村氏:ハードセルツァーの「セルツァー」は「炭酸水」という意味で、ハードセルツァーは「アルコール入り炭酸水」と訳されることが多いです。ハードセルツァーの市場規模は4400億円で、2025年には3兆円に届くと言われています。実はいま、日本で売られているレモンサワーはかなり添加物が多く含まれているのですが、さっぱりした飲み心地だとあまりそう思わないですよね。海外では、グルテンフリーで、甘味料や香料などの添加物を使わず、ローカロリーなハードセルツァーの製品が流行っています。CRAFTXの製品はローカロリーとは言えないのですが、ハードセルツァーの考え方を初めてレモンサワーに取り入れた製品です。

角氏:なるほど。ハードセルツァーという言葉自体聞いたことがなかったです。

下村氏:そうですよね。まだそこまで浸透はしていないと思っています。

角氏:試作品を送っていただいて僕も妻も飲んだんですけど、めちゃくちゃ美味しかったです。すごく爽やかなソーダみたいな印象を受けました。変な甘さが入っていないのが最高です。

下村氏:ありがとうございます。

角氏:これ、だいぶ評判良かったんじゃないんですか?

下村氏:良かったですね。クラウドファンディングでは533人の方が支援してくださって400万円までいったので、とても良かったと思っています。なので無事に支援いただいたみなさんにご提供できました。

角氏:こうやって、いろいろな新製品の展開を次々とされているということですよね。

下村氏:そうですね。他に男性のスキンケアの製品も出しています。まず、「SKIN X」というスキンケアから始めたんですけど、男性の髪に対するニーズがあるのでスカルプシャンプーを出しました。特に最近はちょっとベトッとしたフケで悩まれている方が多いので、それにいい処方で出してみようと思ったのがこれです。

SKIN Xウェブサイトより
SKIN Xウェブサイトより

 また、コロナ禍でオンとオフの区別がつきにくくなっている中、このシャンプーのいい香りでリセットしてもらおうと思ってこれを出しています。500個限定で作っていて、お客様のフィードバックを聞かせていただいています。たとえば「香りがきつい」とか「もうちょっと大容量がいい」というお声をいただいて、9月に改良したものを出す予定です。

角氏:これもアジャイルですね。

下村氏:はい。

角氏:なるほど。これもどこかと組んで作られているのでしょうか?

下村氏:これは日本コルマーさんというスキンケアOEM最大手の企業と組んでいます。

角氏:この製品を作るに至った経緯をお聞かせいただけますか。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]