この1年で様変わり--スタートアップ、組合、官公庁が語る建設現場のDX

加納恵 (編集部)2021年08月17日 08時30分
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 リモート、デジタル活用など多くの業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、対面、アナログのイメージが強い建設現場のDXはどうなっているのだろうか。

 ConTech LAB主催によるオンラインイベント「デジタルが変える建設現場の未来」では、建設現場におけるデジタル化の現状を紹介。「建設業界におけるDXの今後の方向性」をテーマにパネルディスカッションを実施した。パネリストとして、日本耐震天井施工協同組合(JACCA)理事長の中上裕氏、建設現場における安全書類の作成、管理、運用するウェブサービス「Greenfile.work」を提供するシェルフィー 取締役COOの松井将浩氏、ドローンを使った測量、点検などを手掛けるテラDX Solutionsテラドローン代表取締役社長の徳重徹氏、国土交通省 都市局都市政策課課長補佐の内山裕弥氏が登壇し、モデレーターは、デジタルベースキャピタル 代表パートナーの桜井駿氏が務めた。

上段左から、国土交通省 都市局都市政策課課長補佐の内山裕弥氏、テラDX Solutions/テラドローン 代表取締役社長の徳重徹氏、デジタルベースキャピタル 代表パートナーの桜井駿氏、下段左から、シェルフィー 取締役COOの松井将浩氏、日本耐震天井施工協同組合 理事長の中上裕氏
上段左から、国土交通省 都市局都市政策課課長補佐の内山裕弥氏、テラDX Solutions/テラドローン 代表取締役社長の徳重徹氏、デジタルベースキャピタル 代表パートナーの桜井駿氏、下段左から、シェルフィー 取締役COOの松井将浩氏、日本耐震天井施工協同組合 理事長の中上裕氏

Q1:さまざまな業界に変化をもたらした新型コロナウイルス。その前後で建設業界にどんな変化があったか。

徳重氏:建築DXを推進するテラDX Solutionsを設立したのが2021年で、コロナの真っ只中。お付き合いのある屋根業界は、建設の中でも歴史ある業界の1つで、当初は対面での営業がほとんど。しかし、この1年でその形は大きく変わり、オンライン会議が当たり前になった。そういう意味でコロナの影響は大きく、営業の仕方一つとってもインパクトがあったと思っている。

松井氏:シェルフィーでは、マッチングサービス「内装建築.com」も運営しているが、これは医療系や中長期の投資が必要になる建築案件が増えるなど、変化が見られた。安全書類作成のGreenfile.workは、業界のDXが2~3年早まったような体感がある。もちろんハードルはあり、爆発的に伸びてはいないが、今まで10年かけてやらなければと考えていたことが、6~7年で実現できるのでは、という感覚はある。

 問い合わせの切り口も変わってきており、従来はピンポイントで課題を認識している人が多かったが、最近は「業務の効率化をしたい」など、漠然としたものも増えてきた。マジョリティ層が動き出したという感覚がある。

中上氏:コロナ前とは大きく変わった。セミナーや研修会などは対面が基本だったが、コロナの感染拡大防止にあわせ、急遽、整備し直しリモート対応などをはじめた。リモートにしてみると気づきもあり、改善やさらに動員を増やせるのではというヒントもあったと思う。

 工事店目線では、二極化していると感じる。DXを理解し進めている会社がある一方、未着手のところがある。進めている会社については、活用する度合いが細分化しているように感じる。

内山氏:国交省では日本全国の3D都市モデルの整備、活用し、オープンデータ化するプロジェクト「プラトー」を、少人数で進めている。そのため民間企業とのつながりは非常に大事で、新技術を教えてもらったり、ディスカッションしたりしながら案件を組成していくが、その際に必須なのがウェブミーティング。そのほかスラックなども活用している。

 そうしたやりとりを見ると、民間企業の方のデジタル化は進んでいるなと感じる。役所ではまだ説明が必要な部分もあり、どうやってデジタルツールを浸透させていったか教えてほしい。

Q2:変化のスタートラインに立った今、どこに変化のチャンスを感じているか。

徳重氏:私自身、建設業界とは違う領域から入ってきているので、変化の余地は膨大だと思っている。他業種ではとことん効率化しているところもあるが、建設業界ではまだ絞れば水がでそうなところもある。

 大事なのは言葉に踊らされず、現場と向き合ってマネタイズすること。建設業界に特化したスタートアップもあるが、そのほとんどがマネタイズでうまくいっていないと感じる。マネタイズできなければ、大きな資金調達はできず、インパクトも出せない。

 業界の風向きを変えるのはスタートアップの役割だと思っているが、まだ数が少ない。誰かが突破すれば、うまく流れる部分も大きいので、その役割をスタートアップが果たすべきだと思っている。

松井氏:変革のチャンスは本当に至るところにあると思っている。シェルフィーは内容的には地味だが(笑)、多分私たちがやらなければ実現が数年遅れると思う領域をやるべきだと考え、取り組んでいる。建設現場における事務作業や書類作成業務は、メイン業務ではないが、現場の声を聞いてみると、この業務に対するストレス値は高い。若手のスタッフに丸投げして、若手の育成を阻んだり、事務作業を得意とすることで経歴が異色になってしまったりと、現場が負担に感じている部分。だからこそ、私たちが取り組む意義は高いと思っている。

中上氏:徳重さんが話した「誰かが突破すれば」というのはすごく大事。工事店とスタートアップのギャップは大きく、生産性を改善するには、もっと認識、意識していくべき。ただ、工事店の規模も大小さまざまで、仕事の内容も異なる。個別最適化をしながら、みんなが抱えている問題をどう解決するか考えていかなければいけないと思う。

内山氏:スマートシティ化が1つのチャンスになってくると思う。デジタルツインなどが進めば、都市空間のデータが取れるようになってくる。そうすると個人の趣味嗜好がわかったり、建物の中身もレストランなのかシェアオフィスなのかといった詳細情報までが入手できる。こうしたデータがとれるようになってくれば、まちづくりも変わる。これを実現するのはデジタル技術なので、民間の企業のみなさんと関わっていきたい。

Q3:建設業界が共通の課題として取り組むべきこと。

徳重氏:一言でいうと、現場でのインストールの具現化。例えば施工管理ソフトは入れても20%くらいしか使われていない。現場にいかに使ってもらうかがすべてだと思う。そのためには、なるべく直感的に使えるプロダクトにすることが大切。

松井氏:私たちの取り組みは書類がキーワードになっているが、公共工事の書類周りはかなり複雑。地方自治体ごとに書式がバラバラということもある。実は、省庁レベルでは統一化する動きがあり、整備も進んでいるが、そこから地方、さらに市町村まで降りる段階で統一化の動きが止まってしまっている。

 現場で使ってもらえるプロダクトにするという状況は実現が見えてきた印象にあるが、さらに発注者側の体制も整えていかなければいけない。そうしないと普及のハードルは下がらないと思う。

中上氏:システム導入や使用のハードルは高くしないでほしい。使いこなせないのは使っている人が悪いとなると、使用率は落ちてしまう。入り口は広くすべき。

内山氏:プラトーに関しては、松井さんのお話と同様に、市町村との取り組みが必須になるので、各担当者の知識レベルや新しいものを取り入れるコストなど、さまざまな問題が生じてくる。担当者は説明責任も求められるし、プレッシャーはかかるが、それでも新しいことに取り組もうというアントレプレナーシップがほしい。日本の市町村はこのアントレプレナーシップが高いところばかりではない。そういう意識というか、やる気を養えるようなソリューションを役所として取り入れたいと思っている。

Q4:建設業界でDXに取り組む人たちに対するメッセージ。

徳重氏:大切なのはやはり現場。私が取り組む屋根業界は現場の職人が足りていない。収入を高くするなど、現場の環境を整えて未来のある業界にしていきたい。そういう意味ではドローンやAI、DXといった最新のテクノロジーを導入して「かっこいい」業界にしていくことも人を集まる上で重要だと思っている。何か一緒にやりたいなと感じる人がいれば気軽にメッセージなどを送ってほしい。

松井氏:私も徳重さんと同じく、いつでも連絡をしてきてほしい。公共事業における書類のフォーマット統一は事例がないと動きにくい部分もある。私たちでは民間で事例を量産し、公共事業にも浸透させていきたい。そういう意味では、できるだけ各地域の建設業の方と広くつながりをもちたい。

中上氏:私たちは協同組合ということで、引き続き天井の耐震化を進めていくのが大前提。そのためにDXをどう活用するのかも1つのテーマだ。組合の方の生産性を上げることは、今やらなければいけないこと。組合の役割として未来の満足度を上げていきたい。

内山氏:プラトーは、今まさしくいろいろな方と手を組み進めているところだが、まだ数は全然足りていない。面白いことができるプロジェクトだと思うので、いろいろな人に集まってほしい。ぜひ、気軽にメッセージなどをいただければと思う。

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