KDDIは7月30日、2022年3月期第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比4.6%増の1兆3003億円、営業利益は前年同期比2.9%増の2992億円と、増収増益の決算となった。主力の通信事業が政府の要請による料金引き下げの影響を受け大幅に減少する一方、「ライフデザイン領域」や「ビジネスセグメント」といった成長領域の売上が大きく伸びたことが、好業績につながったという。
通信事業に関しては、「au」「UQ mobile」ブランドでの新料金プラン投入や、3月にサービスを開始したオンライン専用の低価格プラン「povo」の導入などによる顧客還元の影響で、マルチブランド通信ARPU収入が前年同期比116億円減の3999億円と大幅に落ち込んだという。今後も通信料収入減少の影響が大きく出てくるとしており、5Gの利用拡大によるデータ通信の増加を見込んでもなお、通期での通信量収入は600〜700億円の減少を見込んでいるとのことだ。
一方の成長領域に関しては、ライフデザイン領域が「auでんき」などの契約数や「au PAYカード」の会員数など主要なKPIが順調に増加しているほか、主力となる金融事業に関しても、決済・金融取扱高が前年同期比で1.3倍となる2.5兆円に拡大するなど好調を維持。menuへの出資によるフードデリバリー領域への進出や、ヘルスケアサービスの拡大などでau経済圏をより拡大する姿勢を見せている。
ビジネスセグメントに関しても、「NEXTコア事業」と位置付ける企業のデジタル化に関連する事業が前年同期比で18%と大幅な成長を記録。IoTや通信、クラウドなどを一括で提供できる体制を強みとして国内外でデジタル化需要を獲得していく姿勢を示している。
これら成長領域はコロナ禍による環境変化がポジティブに影響している部分も大きいと、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は説明する。とりわけライフデザイン領域は自宅でのスマートフォンによるエンタテインメントサービス利用拡大、ビジネスセグメントは企業のデジタル化需要の獲得が大きく影響しているとのことだ。
注目を集めたオンライン専用のpovoの動向について、高橋氏は契約数が「約100万」と回答。前回の決算発表時点では「100万が見えた」と答えていたことから伸びが鈍化しているように見えるが、同氏によると「まずUQ mobileに力を入れてモメンタムを回復する戦略を取り、そちらにプロモーションを振っている」とのことで、当面はUQ mobileに注力する姿勢を示している。
そのUQ mobileに関しては、auショップ全店でUQ mobileの取り扱いを開始したほか、au経済圏のサービスをUQ mobileに提供する施策にも力を入れているとのこと。特に「でんきセット割」が非常に好評を得ているそうで、契約は順調に拡大しているという。
ただpovoに関しても「戦略商品なのでテコ入れを検討している」と話しており、今後何らかのタイミングで強化していく姿勢も見せている。サービス提供開始以降増えていないトッピングについても、「povoは個人的に思い入れがあるし、こだわったトッピングを検討している」と答え、今後追加の可能性があることを示した。
7月15日には、ソフトバンクがオンライン専用プラン「LINEMO」に、通信量3GBで月額990円の「ミニプラン」を追加しているが、これについては「すぐ手を打とうと思っているわけではない」と回答。UQ mobileのでんきセット割で、単身者でも同額の料金を実現できることから、当面はそちらで対抗していく考えのようだ。
また、auブランドを主体とした5Gの普及状況については、6月末時点で5G端末の累計販売台数が340万台を突破したとのこと。今後も鉄道路線を中心として5Gのエリア拡大を進めるとしているが、気になるのは半導体不足の影響だ。
実際、楽天モバイルが半導体不足で、人口カバー率96%のエリア整備目標を2021年夏から2021年度内へと後ろ倒ししたことが話題となったが、高橋氏は設備を調達している大手基地局ベンダーが半導体を事前に確保しているため、「今のところ大きな支障になるとは聞いていない」と説明。ただ、伝送装置など一部に影響は出ているそうで、今後の動向を慎重に見極めながら、ビジネスに影響が出ないよう対応を進めるとしている。
まだ実現していないUQ mobileとpovoの5G対応に関しては、「5Gに対応することは心に決めたので対応する」と意気込みを示す一方、時期については「できるだけ早く対応したい」と答えるにとどまり、具体的な明言は避けた。
なお、菅義偉内閣総理大臣が一部メディアでさらなる携帯電話料金引き下げに言及したことへの受け止めを問われた高橋氏は、「料金値下げをして、顧客に還元されることは競争の結果」と回答。携帯4社による料金引き下げ競争は今後も続くとの見解を示した。
携帯各社の料金引き下げは、低価格に強みを持つMVNOに影響を与える可能性も高いが、この点については「料金が下がり、MVNOの競争する領域の範囲が狭まるのは、国の方針としてはそうなのかなと思う」と答え、MVNOの生き残りが厳しくなるとの見解を示した。
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