ライナフ、クックパッド、Yperが宅配の次の一手「置き配」を考える

加納恵 (編集部)2021年08月09日 08時30分
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 非対面、非接触で宅配の荷物が受け取れる「置き配」に注目が集まっている。コロナ禍を経て、急増した宅配はECに留まらず、食品や日用品、飲食までと対応業種は幅広い。しかし、受け取る側は対面もしくは宅配ボックスなど、方法が限られていた。置き配は、急増する宅配需要に対し、確実に受け取れる新たな選択肢の1つになっている。

 ライナフでは「不動産と物流の未来」をテーマにした「置き配カンファレンス」を開催。7月15日にオンラインで実施した。「置き配によってもたらされる入居者のUX変化と次の一手」と題されたトークセッションでは、クックパッド執行役JapanCEOの福崎(漢字は立つの崎)康平氏、Yper 代表取締役の内山智晴氏、ライナフ 代表取締役の滝沢潔氏が登壇。モデレーターは、朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の藤井涼が務めた。

クックパッド執行役JapanCEOの福崎康平氏(下段左)、Yper 代表取締役の内山智晴氏(下段右)、ライナフ 代表取締役の滝沢潔氏(上段右)、朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の藤井涼(上段左)
クックパッド執行役JapanCEOの福崎康平氏(下段左)、Yper 代表取締役の内山智晴氏(下段右)、ライナフ 代表取締役の滝沢潔氏(上段右)、朝日インタラクティブ CNET Japan編集長の藤井涼(上段左)

オンラインでものを買うことが当たり前になった

 まず「置き配が普及するにつれ、人々の行動はどのように変化しているのだろうか」とたずねると、クックパッドの福崎氏は「私たちは、置き配ならぬ『置き出荷』もやっていて、商品を供給してもらう方からの受け渡しも非接触にしている。食は鮮度が重要なので、予め準備しておく必要があり、置き出荷は非常に効率的」と新たな取り組みについて話す。

 一方、Yperの内山氏は「新型コロナ感染拡大防止を受け、宅配ボックスでの受け取りは飛躍的に伸びた。以前は、外出時に使うものという印象が強かったが、現在は感染リスクを避けるため、日常的に使うものという意識に変わってきた。実際、対面で荷物を受け取らなくてもいいのはすごく気楽。非対面のメリットは感染症対策だけではなく、自分の時間の余裕にも結びつく、そんな意識の変化があったと思う」という。

 こうした、日常の変化について滝沢氏は「今までオンラインで購入するのは買いに行くのが面倒なものだったり、オンラインでしか買えないものだったりしたが、その思い込みがなくなり、野菜も日用品も普通にネットで買う人が増えた。加えて、コロナの影響で飲食店に収めるべき生鮮食品が行き場をなくし、それを消費者が直接生産者から購入する、流通自体も変わった。こうした行動変化にあわせ、置き配のニーズも高まっていると思う」とコメント。ネットショップの比率が高まっているが、宅配ボックスの数は変わらず、受け取れないといった課題解決策の1つが置き配と位置づける。

 次に「AIやIoTなど、置き配とテクノロジーをかけ合わせることで、どんな未来になっていくのか」(藤井)と聞くと、滝沢氏は「自社視点になるが、置き配をやっていく上で問題になるのはセキュリティ。通常の荷物であればマンションのエントランスに設置し、スマートフォンや遠隔地からでも解錠ができる『NinjaEntrance』で対応ができるが、自宅前までもしくは家の中にまで届けることを考えると、ゆくゆくは部屋の鍵を一瞬だけ開けたり、料理であれば冷蔵庫に入れたりできるといい。それは、いつ誰が鍵を開けたかがきちんとわかればできること。暮らしの中に一歩踏み込むには鍵の問題が出てくるが、スマートロックであれば解決できる」とスマートロックと置き配の相性の良さを裏付ける。

 「玄関の中まで荷物を届けるのは米国でもすでに始まっているサービス。安心をテクノロジーで担保できれば、日本でも今後盛り上がってくるだろう」(藤井)とした。一方、クックパッドの福崎氏は「冷蔵庫の中身を最適化したい」と冷蔵庫について言及する。

 「家の中まで荷物を届けるのはセキュリティが担保できれば実現する話。そこからさらに発展させて冷蔵庫の中身を最適化できたら面白いと思っている。現状、冷蔵庫は料理を担当する人が管理していて、食材を腐らせてしまったとかお子さんが勝手に何か入れてしまったりとか、冷蔵庫のスペースが取り合いになっている。しかし、卵は注文しているから、もう頼まないでいいなど、そういう最適化をしていきたい。レシピサービスを長年やっていて感じる課題は、家で作るレシピは大体決まってきてしまうこと。食事の楽しみよりも合理化が優先されてしまう。その根本である冷蔵庫に介入することで、食べる楽しみを増やしていきたい。一方、食品は価格変動が起こりやすいので、魚や野菜が大量に余ってしまったという時に直接消費者に届けられるような仕組みができればいいなと思う」(福崎氏)とした。

 これに対し滝沢氏が「AI冷蔵庫のようなものあるが」と質問すると福崎氏は「パッケージ化されているものは認識できるが、難しいのが生鮮食品。例えばキウイはゴールドかグリーンかを画像を見ただけで見極めるのは難しい。画像だけではなく、いくつかのテクノロジーを組み合わせることで、食材の悪くなる時期を知らせるなどの技術革新が必要」とした。

 すでに、置き配バッグ「OKIPPA」による置き配事業の一方、自動配送ロボット(AMR)事業を担うYperの内山氏は「広島県で中山間地域における自動配送ロボット実証実験に参加しているが、配送ロボットの時速は約6km。長距離を走るのは難しく、バスなどに牽引してもらい、到着したら切り離して自動配送するなど組み合わせが必要。自動配送ロボットは集荷もできるので、荷物を届けた後にそこで育てた野菜を入れてもらい、今度はそれを道の駅などに出荷するなどにもつなげられる。このインフラを維持できれば地域の生活も維持できる」と新たな試みを示した。

置き配が不動産の価値を変える

 すでにテクノロジーとの組み合わせで、新たなサービスが生まれつつある置き配だが「次なる一手をどう考えているか」(藤井)と聞くと、内山氏は「宅配ボックスの需要はコロナで伸びるかと思ったが、実はそこまで伸びていない。宅配ボックスで問題になるのは、2つ目の荷物が受け取れないこと。置き配と併用することで、この2つ目の荷物も受け取れるようになる。この2つをシームレスに使い分けられるようにしたい。OKIPPAに関しては、玄関の前に吊るしておくだけという習慣を作っていきたい。自動ロボット配送については、道路交通法の規制や技術課題などもあるが、日本だからこそ、ロボットという最先端技術で労働人口減を補って行きたい。これが実現すれば1つの価値を出せると思っている」と意気込む。

 自ら「引っ越し貧乏」というほど、頻繁に引っ越しをするという福崎氏は、コロナ以前とは住む場所に対する価値が変わってきたことに着目する。「これまでは商業施設が近くにあるなど、都市生活者が有利とされてきたが、最近は住んでいる場所がどういう配達の仕組みを整えているかが重要になってきているように感じる。まさしくトヨタ自動車の『Woven City』は街を作って次世代の仕組みを使う。こうした変化はものすごくワクワクするし、私たちもワクワクするようなことをやらないといけないと思う」とした。

 滝沢氏は「置き配にしても集荷にしてもインフラを整備して不動産の中にサービスが入っていくようなことをやりたい。例えば洋服のサブスクリプションサービスは、一歩進んでクローゼットの中まで入ることで、いつでも着たい服がクローゼットにかかっている状態を作り出せる。これは冷蔵庫でも同じこと。生活が豊かになると思う。置き集荷までできれば、自動的に収納、集荷がされ、そう考えると収納自体はものすごくミニマムでいい暮らしができるようになる。今収納の少ない物件は人気が出づらいと言われているが、そうした物件にも新しい価値が生まれる。置き配を不動産の価値向上にもっといかしていきたい」とコメントした。

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