サイト多言語化のWOVNが36億円を調達--香港タイボーン・キャピタルなど海外投資家らが出資

 ウェブサイト多言語化ソリューション「WOVN.io(ウォーブン・ドットアイオー)」などを提供するWovn Technologies(以下、WOVN)は7月28日、Tybourne Capital Management、MPower Partners Fund、Eight Roads Ventures Japan、インキュベイトファンド、凸版印刷、SMBCベンチャーキャピタル、米国ロングオンリー型機関投資家(独立系資産運用会社)から約36億円の資金を調達したと発表した。

 今回の資金調達は、未上場・上場株式の双方を投資対象とするクロスオーバーの海外機関投資家やESG投資家らを中心としたラウンドになるという。この調達で2014年の創業以来の累計調達額は約54億円となった。

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 同社の提供する「WOVN.io」「WOVN.app」は、既存のウェブサイトやアプリをさまざまな言語に多言語化できるサービス。日々更新されるニュースサイトなどの動的な情報にも対応しており、元サイトの内容が変更されると、その箇所を検知してすぐに反映する。9割以上の内容は機械翻訳で対応し、残りの1割を人力で翻訳しているとのこと。現在は「Google 翻訳」や「みらい翻訳」「DeepL翻訳」など複数の翻訳ツールを組み合わせて最適化しているという。

 同社によれば、これまで三菱UFJ銀行、東急電鉄、JAL、富士フィルム、アース製薬などの大手企業サイトを始めとして、1万8000サイト以上にWOVNのサービスは導入されており、ウェブサイト・アプリを最大43言語・76のロケール(言語と地域の組み合わせ)に多言語化してきたという。

 特にコロナ禍に入ってからは、顧客・社員との対面でのコミュニケーションが難しくなり、デジタル化・DX化の波に乗って、自社サイトやアプリを多言語化する企業が大手企業を中心に増えていると、同社の取締役副社長 COOである上森久之氏は説明する。その目的は、世界中のファンに日本語と同じ情報を届けるプロモーションサイト運用、動的に更新される越境EC サイト運用、グローバル各拠点で働く従業員に向けて日本から情報発信をするイントラネット運用など多岐にわたるという。

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 今回調達した資金は、(1)採用・育成、(2)マーケティング・販促活動、(3)新規事業開発に充てるという。まず、採用・育成について。同社は23の異なる国・地域から集まった約100名のメンバーを抱えており、そのうちの4割が外国人だという。今後は、新たな人材獲得に加えて、WOVNの従業員がこれまで培ってきた知識やノウハウをスピーディに社内に浸透させるための育成プログラムを立ち上げるとしている。

 マーケティング・販促活動では、同社主催の「GLOBALIZED」イベント開催のほか海外での認知拡大に向けた活動などを本格化させる。新規事業開発では、これまでのウェブサイト、アプリに続く事業ドメインとして、新たにオンラインドキュメントなどを翻訳する「ファイル」領域への展開を検討しており、調達した資金で開発を進めるとしている。

 上森氏は、全世界で使用されている言語において日本語が占める割合はわずか3%しかないと説明。その上で同社のソリューションを通じて、多言語化の負担を軽減させることで「世界中の人が、すべてのデータに母国語でアクセスできるようにする、世界的な黒子企業を目指す」と展望を語った。

Wovn Technologies代表取締役社長の林 鷹治氏(右)と取締役副社長 COOの上森久之氏(左)
Wovn Technologies代表取締役社長の林 鷹治氏(右)と取締役副社長 COOの上森久之氏(左)

 なお、今回の出資先の1社である香港Tybourne Capital Managementの持田昌幸氏は、自身も海外で働く上で翻訳や多言語化の作業に苦労した経験を踏まえつつ、今後ますます市場規模の拡大が見込めることや、デューデリジェンスをする中でユーザー企業からの評価が非常に高かったことなどが出資の決め手となったと説明した。

 「社会の環境が大きく変化するなか、日本国内の外国人居住者や就労者の増加、コロナ後のインバウンド旅行の再拡大、イン・アウトバウンドのクロスボーダーECの増加、国内企業の海外進出、海外企業の国内進出の増加など、多言語化の需要は構造的に成長していく。この大きな変化の中で、WOVNのプロダクトはウェブやアプリなど、さまざまな情報の多言語化をよりシームレスに提供するという観点から、非常に大きな成長機会があると期待している」(持田氏)

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