コロナの影響によってZoomなどのビデオ通話アプリを利用した会議やコミュニケーション、リモートワークが世間一般に浸透し始めた。どこにいても世界中の誰とでも繋がり、仕事もできることが一般化され始めたことは、今後の社会発展に大きく影響するであろう。一方で、世界には「VR SNS」と呼ばれる、まるで目の前に人がいるかのようにコミュニケーションを取ったり、一緒に遊んだり、イベントに参加したりできる空間がある。その一つが「VRChat」である。
VRChatはGraham GaylorとJesse Joudreyによって開発され、米国の企業であるVRChat Inc.によって運営されているソーシャルVRプラットフォームである。
現在は、SteamまたはOculus Storeにて無料でダウンロードでき、Oculus QuestやHTC Viveなどに対応したVRヘッドセットを使用してプレイすることができる。VRプラットフォームとあるが、必ずしもVR機器を所有している必要はない。VR機器を持っていないプレイヤーのためにデスクトップ版も用意されているため、Windows環境があれば誰でもプレイ可能だ。ただし、デスクトップの場合は、アバターの手足を自由に動かすことができないなどの制限がある。
VRChatは2017年にリリースされてから、現在は全世界で43万人のユーザーがプレイしており、VR上で友人たちと交流したり、イベント会場として利用したりと、2021年現在も大きな盛り上がりを見せている。本記事ではVRChatとはどういった世界なのか、魅力の紹介、また入門の手引きなど、VRChatに関する情報を、実際にVRChatで学校や美術館などの運営を行なっている筆者がまとめて紹介する。
VRChatはVRの技術を用いてVRとSNSを組み合わせたもので、世界中の人とコミュニケーションを目的にした無料で始められる新しいサービスである。VRゲームとは差別化されており、アバターを通して複数のユーザー同士で会話したり、自らオブジェクトを制作したり、バーチャル空間で社会的な交流が可能だ。
VRChat内には無数の「ワールド」と呼ばれるバーチャル空間が用意されており、好きな場所で他の世界中からログインするユーザーとの交流を楽しむことができる。近くにいるユーザーとはボイスチャットを通してバーバルコミュニケーションを取ることはもちろん、身体の動きをトラックしているため、実際の動きがアバターに反映され、身振り手振りのノンバーバルコミュニケーションも可能であり、まるで目の前に人がいるかのような感覚に陥る。
VRChat上のワールドはユーザー自ら制作し、アップロードすることで、他ユーザーを自分の作ったワールドに招待して交流したりイベントを開いたりすることができることも、魅力の一つだ。ゲームを遊べるワールドや本の読めるワールド、CLUBのようなワールドなどもある。筆者自身も、私立VRC学園という学校生活の送れるワールド(筆者は副学長)やWESON MUSEUMという画家の作品を展示した美術館ワールドを創作・運営している。
2021年6月時点でVRChatは日本語に未対応だが、国内でも「バーチャルマーケット」をはじめとした多くのイベントがすでに開催されている。最近では日本サーバーが設置され、今後より活発になることが予想される。
では、実際にどのように交流するのだろうか。まず、VRChatに登録し、ログインをするとワールドが出現し、その世界の中で、世界中のユーザーと交流をすることができる。
「Rec Room」などの他のVR SNSと比較し、VRChatは、ユーザーがUnityやBlenderなどを使って制作したワールドやアバターをアップロードできるなど、VRChatコンテンツに直接手を加えられることが魅力のひとつとして挙げられるだろう。ユーザー自体が文化やコミュニティを形成し、育てていくことができる。
イベントやユーザーの集まるワールドに行くと、話し声や叫び声が聞こえてくる。自分の作ったアバターを見せあったり、歌を歌ったり、ダンスをしたりと活気と熱気がそこにはある。
世界中のユーザーで溢れかえっているため、英語での会話が多い。しかし、日本人コミュニティも存在感を放ち、ユニークな発展の仕方をしている。実際に、独特なイベントやコミュニティも多く存在し、現実世界では顔も名前も知らないユーザーと毎日バーチャルワールドを巡ったりしている。
海外ユーザーは現実の中にバーチャル生活があるような感じがするが、日本人ユーザーは現実と乖離したような生活をVRChatで過ごしているように思える。さまざまなアバターが存在する中、日本人ユーザーは特に可愛いアバターの利用率が高い。お互いに「可愛い!」と褒めあったり、頭をなでなでしあったりと(中身は男性がほとんどである)、なかなか現実では見られないコミュニケーションのやり取りがしばしば見られる。
現実世界の自分とは違う自分を生きられるという点も魅力的だ。同じアバターを使うことで結束を感じたり、アバターを使うことで一時的にそのアバターになれるような感覚、移人称視点を体験できることで、自分の中に新たな人格が誕生するのかもしれない。実際の自分の顔や個人情報が公開されることもなく、別の人格・キャラ設定などで、楽しむことができる。
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