国民生活センターが、若者における情報商材や暗号資産(仮想通貨)のトラブルが増えていると警告している。
情報商材の相談件数は2019年は7452件、2020年は6556件だが、10〜20代の割合は35%から46%に急増。同様に暗号資産の相談件数についても、2019年は2800件、2020年は2894件だが、10〜20代の割合は23%から25%と増加傾向にある。
今回はその中でも、暗号資産の若者におけるトラブル実態に注目していきたい。
「将来が心配だから、Twitterで知り合った人に勧められて50万円のローンを組んで暗号資産の投資契約をした。絶対に儲かると聞いていたのに、説明と違って配当がなくて、これでは元も取れない。ローンは残っているし、一体どうしたらいいのか」と、ある女子大生は青ざめる。このような話は珍しいことではない。
「『先輩の○○さんに預けたら間違いなく儲かる。やらなきゃ損』と聞いた。仮想通貨で儲かっている人の話を聞いたことがあるし、絶対に儲かるならやらなければと思った」と、ある高校生は友人に貯金していた数万円を渡してしまったという。実際は、資金決済法によって規制されており、仮想通貨交換事業は、金融庁・財務局へ登録した事業者22社しか行うことができない。そもそも登録事業者かどうか確認すべきなのだ。
2019年4月、青山大阪大学は公式サイトで「『ビットコインによる配当』名目での勧誘行為について」という文章を掲載した。「本学内並びに学外において、『ビットコインによる配当』名目で勧誘が行われ、金銭トラブルや詐欺被害に巻き込まれかねない事案が発生」「勧誘自体も大学生の本分とかけ離れた行為であるため不適切な行為」と警告されている。
沖縄県でも2020年1月、「県内の高校で仮想通貨(暗号資産)の投資話が広がっています。注意!」という警告が県庁公式サイトに掲載された。
県教育庁が県立高校に対して緊急調査を行ったところ、勧誘を受けた生徒がいる学校は30校あり、勧誘を受けた学生数は134名いた。勧誘時に提示された投資金額は3〜6万円であり、勧誘を受けた方法はSNSでの情報や先輩からの声かけ、同級生・友人などからの声かけなどだったという。全国の高校生や大学生などに、仮想通貨絡みの投資話や、それに関する被害が広がっていることがよく分かる。
仮想通貨に対する投資熱が高まっているのは、もちろん若者だけではない。GMOコインの「暗号資産アンケート調査2021(2021年3月)」によると、暗号資産の今後に対して、「強く期待している」「やや期待している」を合計すると95%が期待しているという結果に。暗号資産を今後どのように活用したいかについては、84.3%が「投資(長期保有)」との意向を示している。
このような話は日本だけのことではなく、たとえば韓国でも、仮想通貨に対して関心を持つ若者が増えている。アルバ天国の2021年5月の調査によると、調査対象の大学生のうち53%が仮想通貨の投資に肯定的で、実際に投資している学生も24%と4人に1人に上る。
肯定的な理由で最多は「高い収益率」(33%)であり、「いまの階層を抜け出す最後の機会」(15%)という回答もあった。安定的な職に就く難しさや不動産価格の高騰により閉塞感を感じ、仮想通貨に人生逆転を期待する若者が多いということだ。しかし、ある大学生(20歳)は仮想通貨に投資して一時約2億ウォン(約2000万円)まで増やしたものの、2020年末に価値が暴落。元金だった2000万ウォンをほぼ失ったことでうつ状態となり、自殺したと見られている。
コロナ禍で収入が減った人も多く、先行きはますます不透明だ。日本の若者たちも韓国の若者同様、一発逆転を狙うしかないという気持ちになっている可能性があるのではないか。
「よくわからないけど、何となく儲かりそう」と期待する若者は多い。しかし、生活のためのお金を投資してしまったり、借金までして投資する若者もおり、そのような投資は非常に問題だ。また、そのような心理につけこまれて、仮想通貨の名を借りた詐欺被害に騙される若者もいる。
そもそも仮想通貨は円やドルなどと異なり、国家によって価値が保証されているわけではない。また、価格が変動することがあり、価格が急落して損をすることがあることは、知っておくべきだ。最近も仮想通貨が暴落したことを覚えている人は多いだろう。「必ず儲かる」ことはありえない。「すぐにもとが取れる」などと言われても、借金をしてまで契約するようなことは絶対にやめるべきなのだ。
もちろん、仮想通貨への投資が悪いというわけではない。しかし「仮想通貨」という話題性を利用した詐欺や悪質商法は非常に多いため、利用する場合はしっかりと見極める必要がある。またリスクについて理解できないのであれば、背伸びした無理な投資はやめておくべきだろう。
トラブルに巻き込まれたときは、消費者ホットライン「188」や、金融サービス利用者相談室「0570-016811」、警察相談専用電話「#9110」などに相談するといい。周囲の若者がこのようなリスクに巻き込まれないよう、見守っていただければ幸いだ。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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