パナソニック、楠見CEO「ムダや滞留を撲滅」して目指す専鋭化--2030年CO2排出量実質ゼロへ - (page 2)

競争力強化を狙う「現場プロセス」「エナジー」「くらし」の取り組み

 会見では、環境問題への貢献を広げつつ、競争力を強化していくための主な事業の取り組みとして、「現場プロセス」、「エナジー」、「くらし」の3点から説明した。

 現場プロセスでは、BlueYonderの100%子会社化によって、世界一のサプライチェーンソリューションプロバイダーになることを宣言。パナソニック コネクティッドソリューションズ社が持つデジタルやデータの力を活用し、サプライチェーンを構成する現場のムダや滞留を撲滅し、現場の改善を自律化させる取り組みと、BlueYonderによるサプライチェーン全体のつながりによる最適化により、大きな改善のサイクルを継続的にまわし、サプライチェーン全体を自律的に改善できるソリューションを提供。経営改革と資源の有効活用、働き方改革にも貢献できるとした。ここでは、「オペレーション力強化という観点から、パナソニックの現場でもBlueYonderを先行導入していく」という。

現場プロセス
現場プロセス

 エナジーでは、この領域で中核となるテスラとの円筒形車載電池における戦略的協業について説明。「テスラの急激な需要変動に対応するためのモノづくりのオペレーション力が十分ではなく、これまでは収益改善に注力せざるを得なかった。急激な需要拡大に対して、2021年度は北米工場の生産ラインを増強。オペレーション力を徹底的に磨き、業界をリードする原価力を実現しながら、生産能力の向上を図る」とした。

 さらに、新たな円筒形車載電池である「4680」においても業界をリードすると意欲をみせたほか、非車載電池分野では、データセンターの安定稼働に向けて、高い信頼性を武器に貢献していることや、電力の安定供給に貢献する家庭向け蓄電池システムにも取り組むことを示し、「電池の性能や信頼性、原価力を徹底的に磨き、環境問題の解決を図るとともに、社会インフラの発展にも貢献したい」と述べた。

エナジー
エナジー

 くらしでは、「心も物も豊かな理想の社会」の実現に向けて、世の中に先駆けて価値創出を目指す姿勢を強調した。ここでは、空質および空調事業を、「新たなパナソニックにおいて成長の軸と位置づける事業」とし、ジアイーノやナノイーといった除菌技術だけでなく、ウイルスの抑制に重要な湿度制御技術、高効率熱交換技術を活用するという。「コロナ禍を背景に空質への関心がグローバルで高まるなか、空質技術と空調技術を高度に統合した商品のニーズに応える。アプライアンス社とライフソリューションズ社が別々に確立してきた製品技術を統合し、ひとつの商材やシステムとしてパッケージ化し、健康で快適な空気など、パナソニックらしい新たな価値を創出する。すでに第1弾製品として、温度環境にあわせて最適な湿度の制御が可能な商品を中国で投入した。今後は非住宅領域での大型システムの展開を加速し、ソリューション型事業の拡大を図る」と述べた。

エナジー
エナジー

 そのほか、中国の家電事業において、コスト力およびスピードを強化してきた実績を、グローバルに展開して競争力を強化すること、配線器具で成功している海外BtoB事業においては培ってきた販路と信頼を足掛かりにビルや店舗向け事業を成長させることを示した。

環境に軸を置きながら競争力を高める

 一方、楠見CEOは、これまでの津賀社長時代のパナソニックの取り組みを振り返り、「2011年度、2012年度には連続して大きな赤字を計上し、厳しい状況のなかで、津賀社長体制がスタートした。それ以来、赤字の止血を含む徹底した業績改善、事業の選択と集中、二次電池などの伸ばす領域への積極投資、中国に軸足を置く事業体制の構築など、さまざまな成長戦略に取り組んできた。現在の中期戦略においても、低収益体質からの脱却に向けた取り組みを着実に進捗させている。結果として、コロナ影響がありながらも、調整後営業利益率で5%に近い水準を確保できている」とする一方、「競争力強化を目指してきたが、苦しい環境のなかでは、戦略議論が多くならざるを得なかった。今後は、戦略とオペレーション力が大切であるということを社員に認識してもらいたい。これは延長線上の取り組みであり、強化していく部分である。パナソニックが目指している『専鋭化』とは、それぞれの分野で競争力をつけて、誰よりもお役立ちをすることである。専鋭化の主役は事業会社である」とした。

 また、2019年の創業100周年にあわせて津賀社長が掲げた「くらしアップデート」について、「変えていくというわけではないが、これを進化させるとしたらどうなるのかということを考えている。言葉を発信するフェーズではなく、具現化していくフェーズにある。それぞれの事業会社は幅広い事業を行っており、くらしアップデートという言葉で表現できるものもあれば、そうでないものもある。くらしの領域やオートモーティブ領域では、くらしアップデートをどう具現化していくか、という考え方ができるが、くらしという言葉が捉えにくい事業もある」とした。

 また、「今後は、環境に正面から向かい合い、それぞれの事業が、環境に軸を置きながら競争力を高めることになる。いままで以上に、未来の社会において貢献をし、人々から信頼を得る会社にしたいと考えている。それを、ひとつの言葉で表現するのには、もう少し時間がほしい」と述べた。

 なお、楠見CEOは6月24日に開催予定の定時株主総会および取締役会で代表取締役社長に就任する。また、2022年4月には、パナソニックホールディングスによる持株会社制へと移行し、各事業会社を分社化して完全子会社化する。

 楠見CEOは、「外部からは持株会社制と言われるが、私は事業会社制と呼びたい。事業会社の自主責任経営が主役であり、事業会社の傘下にある事業部が、自主責任経営をスピーディーに行っていく体制になる。本社に遠慮するというメンタリティがこれまで働いていたが、そうした制約を取っ払う。松下電器の本来の事業部制とはそういうものである。そこに立ち返って、事業部による自主責任経営を行ってもらう」とした。

 また、「今後の具体的な取り組みについては、各事業において検討を深めている段階である。2022年5月頃に予定している新体制での中長期戦略の発信のなかで、詳しく説明する」とした。

パナソニックグループの新体制
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