マンション管理の形を大きく変えようとしているサービスがある。リアークスファインドが手掛けるアプリ「トクミン」は、コスト削減を実現しつつ、部屋や建物修理依頼、駐輪場などの施設申し込みまで、アプリ内で完結できるサービス。紙でのやり取りが主流で、夜間には対応できないなど、今までのマンション管理のあり方を根本から変えようとしている。
住民同士のコミュニケーションが希薄になりつつあり、高齢化など管理組合の担い手が不足している現在、「課題は山積み」とも言われるマンション管理事業をなぜ手がけようと思ったのか、リアークスファインド 代表取締役の大人(おおひと)慶太氏に聞いた。
――マンション管理というある意味ニッチな市場に取り組もうと考えたきっかけを教えて下さい。
リアークスファインドは2013年に設立した不動産会社で、マンションの買取再販事業をメインにしています。この事業を運営する上で、最も効果的に集客できるツールはないかと考えた時に、マンションを管理するポジションが取れれば集客しやすいと考えたのがきっかけです。
実際、マンション管理の現状を見ると、紙の書類がほとんどで、情報共有も難しい状態。さらに、住民の高齢化や建物の老朽化により管理組合の運営自体が厳しくなるなど、社会問題にもなっています。そもそも、マンション管理に興味を持っている住民の方が多いとはいえず、いろいろな決め事も知らないままに決まってしまっていると感じている方もいらっしゃるはずです。
――実際どんなシステムになっているのでしょうか。
トクミンとは「トクする住ミン」の略で、これまで紙や対面が必須だったやりとりのほとんどをオンライン上で行えるようにしています。建物管理のスケジュール表を可視化したり、管理会社と連携して、オンライン上で契約書類のやりとりができます。マンション管理の現状は住民の多国籍化など新たな課題も生まれてきています。そうした課題をアプリで解決できるのがトクミンです。
現在、メインになっているのが「トクミン ARCH」というアプリで、この中にさまざまな申込みやデータ閲覧ができる機能になっています。駐車場や駐輪場の申し込みなど、マンション内で許可ごとが発生したときに、ワークフロー化してウェブ上で手続きが完結できるようにしていることなどが特徴です。
私自身もマンションの理事長をやっているのですが、1週間に2~3通は押印すべき書類がまわってくるんですね。これが結構たいへんで(笑)。そんな時もワークフローを使えばスマートフォン上で承認ができるため、手続きがどんどん進みます。
これとは別に賃貸管理機能も入っていて、こちらはオーナー向けの機能になります。年間収支のデータや収入レポートを出すなど、オンラインでできるようになっています。
現段階では、携帯アプリのトクミン ARCHと、その機能をより詳しく見せるための「トクミン」、建物管理に関する情報集約サイトの「トクミン Forest」の3つを運営していて、7月にはマンションを起点にした近隣コミュニティマーケットプレイス「トクミン Go-Kinjo」、10月にはトクミン ARCHなどのアップデート、2022年1月には自宅での売買相談などができる「トクミン TRADE」をスタートする予定です。
――この先もリリース予定が目白押しですね。
トクミンのようなアプリサービスを提供する時は、常に自分以外の誰かも同じサービスを考えていると前提して取り組んでいます。それが大手企業だったり、大手企業が投資する競合会社だったりすれば、資金力の面でも、アイデアの面でも勝ち目はない。ですから、アプリを作るだけではなく、連続してサービスを提供しビジネスモデルにすることが大事だなと。
シリーズ化することで、競合会社が真似できないようなサービスの全体像を作り出せますし、それが強みにもなります。ですから、トクミン TRADE以降の構想もすでにできています。
ただ、こうしたマンション管理のシステムでビジネスモデルを確立しようとは思っておらず、マンションを管理する上で生まれるマネタイズポイントをしっかり取ることで収益を上げていこうと考えています。
このあたりは私たちの主力事業であるマンションの売買に結びついてくるのですが、売買の相談や売却の依頼などを受けることで収益化ができると考えています。加えて、太陽光システムの設置など、マンションの土地を利用したビジネスも考えられますし、マンションのエントランスにサイネージを設置して広告費を入れるなどの場所貸しや、駐輪場、駐車場のシェアなど、マンションという一つの資産で収益化していくビジネスモデルを展開していきたいと考えています。
マンションの敷地を使ってのビジネスはいろいろと考えられますが、マンション組合が収益化しようとすると税金が発生するなど、かなり手間がかかります。そのため普通のマンション管理組合はやりたがらない。ここを私たちが担うことで、価値あるマンションという資産をうまく管理して収益をもたらし、管理コストを下げる。これが持続可能なマンション管理につながると思います。
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