課題山積のマンション管理を根本から変える「トクミン」--お客様に一番近いポジションをとる - (page 2)

不動産業をやっているからこそ気づいた最も顧客に近いポジション

――これは不動産事業をやっているがゆえにわかる世界ですね。アプリ側から考えたサービスでは決して思いつかない。

 思い描いている構想が壮大なので、時間はかかるだろうとは思っています。ただ、アプリ開発やマンション管理の受託などを着実にやっていけば、いまの社会にはない、新たなマンション管理の体系や収益モデルが作れると思っています。

――電子取引を見据えた、トクミン TRADEまでできると売買自体の仕組みも変わってきそうですね。

 売買不動産における「IT重説」や「電子取引」は、まだ法律的に認められていないので、認可が下りてから本格的になるかと思いますが、自宅の売買を考えている人の行動は主に、インターネットで売却金額を調べるか、近所の不動産会社へ相談しに訪れるのかの2パターンですよね。トクミン TRADEでは、オンライン上で売買の相談をしつつ、そのまま契約まで完了できる商流を作りたいと思っています。法整備が進まないとできない部分ももちろんありますが、自宅で気軽に相談ができて、やりとりが自宅完結する。こういう環境を作っていきたいと思っています。これも、お客様に近いポジションがとれる取り組みだと思っています。

――現時点で、マンションの買取再販ビジネスに関する集客の影響は出ていますか。

 まだこれからという感じですね。マンション管理を受託するフェーズにあるので、この管理受託数を増やし、一定数を超えれば集客への影響が出てくると思っています。

 受託するには、マンション管理組合の方とマンションオーナーの方にお話させていただく2パターンがあって、管理組合は住民の方との調整もあり、時間がかかります。管理受託の営業は、さまざまな手法を同時並行しながら営業を進めているのが現状です。マンション住民の方に一番メリットを感じていただけるのは、手軽に管理の情報をやり取りすることと、管理費の削減ですから、その部分を積極的に打ち出していきたいと思っています。

――マンション管理というビジネスを手がけられている点もユニークですが、不動産テック会社ながら、独自のキャラクター展開をしている点も非常に面白いと感じています。

 利用者や製作者に愛着を持ってもらうために、独自の世界観を創りました。トクミンという森の住民たちが、マンションの良好な管理をお手伝いしてくれるという設定です。キャラクターをデザインしたノベルティなども作っています。「不動産売買の会社」というと、採用時などあまりイメージが良くないことがあります。我々が売買だけではなく、より生活に近いコミュニティ形成を目指して管理も行っているという事を、キャラクターをフックにして事業内容として知ってもらえることもありますし、採用やエンゲージメント効果などは非常に高いと思っています。

20種類程度いるというオリジナルキャラクター。性格などキャラクター設定もしているという
20種類程度いるというオリジナルキャラクター。性格などキャラクター設定もしているという

不動産業界のなかでテック事業を手掛けるということ

――不動産事業をやりながら、アプリやオンラインサービスまで手掛けていらっしゃいますが、大変だと感じることはありますか。

 アイデアや企画を作れても、技術的に可能かどうかわからないところですね。開発は外部のエンジニアの方に委託しているので、そのあたりのすり合わせは非常に難しいです。スケジュールに関しても、エンジニアの方と私たちでは時間軸にずれがありますし、それを想定しながらスケジュール管理をしなければなりません。

 こうした経験を経て、少なくとも最低限の知識は持っていたいと思い、2021年はシステムに関する勉強もしたいと考えています。

――その考えは素晴らしいですね。不動産業はある意味特殊な業態ですから、そのあたりの気持ちの入れ替えは絶対に必要ですね。

 不動産業界は、情報の価値が非常に高い業界です。そんな業界だからこそ、情報を独り占めするのではなく、他社や業界内で協力し、意見や技術を出し合っていくことが今後は重要だと思っています。そうしないといいものは作れないです。この記事をご覧の方でご協力いただける方はぜひご連絡をお待ちしております。

――不動産テック会社がサービスを展開する難しさはそこにあるのかもしれませんね。今後の展開を教えて下さい。

 現在管理戸数が150程度なので、6月の2020年度末には600~700程度にまで持っていきたいと思っています。2022年の6月には5000戸の管理を目指し、徐々に増やしていこうと計画しています。将来的には8年くらいかけて50万戸を管理していきたい。そこまでいくと管理受託のシェア日本一になれると思っています。

 ただ、トクミンシステムとして外販することは考えておらず、自社内のリソースとして買取再販のビジネスと組み合わせて展開していきます。これまでなかなか興味を持たれなかった不動産管理業界全体を良くしていく。ユーザーの利益を優先していく。という強い意志のもとやっていきたいと思っています。

インタビュアー

赤木正幸

リマールエステート 代表取締役社長CEO

森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3500億円以上。2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。 

 

川戸温志

NTTデータ経営研究所 シニアマネージャー

大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。

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