Zホールディングス(ZHD)は3月23日、同社傘下のLINEにおけるデータガバナンスを検証・評価する特別委員会を開催した。座長は、宍戸常寿氏(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)。同日に第1回目を開催し、今後複数回に分けて開く予定という。
委員会の冒頭で宍戸氏は、「LINEのデータが第三国に移転していたり、第三国からデータへのアクセスがあったことが明らかになった。LINEは日本社会で多くのユーザー数を抱えており、民間企業や公的機関も利用するなど、デジタル社会のインフラになりつつある」とした上で、「当委員会が公正な第三者の立場として、徹底的に、総合的に明らかにする。部会を設け、技術的観点やガバナンスの観点から検証し、評価結果も適宜にわかりやすく公開したい」という。
また、「日本発のプラットフォームを目指すZHDが、競争の激しいグローバルのデジタル社会において、これらの要請を満たしながらイノベーションを実現し、どのようにガバナンスを整理して利用者や社会への責任を果たしていくかは、一企業グループを超えた重要な公共的課題がある」と説明。委員会は、消費者の代表者、デジタル経済、セキュリティ、法律、経済安全保障の第一人者で構成されており、プライバシーとセキュリティ保護のあり方、これらを実現するガバナンスのあり方を提言するようだ。
委員会の様子はメディアには公開されなかったが、委員会終了後に宍戸氏と、ZHD常務執行役員GCTSOの中谷昇氏への質疑応答の場が設けられた。LINEは委員会の冒頭で、データの国内への完全移転を発表。こうした対策について両社の説明を受けた宍戸氏は、「今日の説明は、今現在利用者に対する安心・安全を確保するためにやらないといけないもの。手術だと止血した状態。病巣の発見と手術はこれから」と説明。
また、「一般的なアプリならともかく、LINEは非常に多くの方が利用している。中国の委託先からアクセスできるとか、海外のサーバーにデータがあることとか、今の高い期待や信頼があるがゆえに傷が付いた」としたほか、「同時並行でLINE、ZHDともに個人情報保護委員会、総務省や他の省庁とも次々と調査が進んでいる。大変だが、できるだけすみやかに事実を解明して、可能な限り順次公表していきたい」と述べた。
今回の問題は、プライバシーポリシーの不備、中国からのアクセス、データの海外保管など複数の問題が重なっている。問題の所在について宍戸氏は、個人の考えと前置きしつつ、「どこでどういうデータが取り扱われていたのか、必要な説明を利用者に説明しないといけない。求められてるデータガバナンスの体制がしっかり構築されていたのか、それに不備があったのではないかが問題の本丸」という。プライバシーポリシーの不備は、あくまでも派生的な問題と指摘する。
さらに、ZHD常務執行役員GTCSOの中谷昇氏は、「今回の件については、1月の終わりに外部からの指摘で判明。2月にZHDの調査部で調べた結果、中国において、Naver China(LINE China)の求人情報がたくさんあった。それをきっかけとしてわかった」という。「2月中にZHDからLINEに質問を投げかけていたが、遮断については(経営統合後の)3月になり、あとから報告を受けている。2月にどういう作業をしていたかについては、委員会で技術的に検証していく」としている。
なお、宍戸氏はICT教育の普及を目指す独立組織「LINEみらい財団」の理事に就任していたが、座長への就任にあたり、利益相反の観点から3月19日付で辞職している。財団への参加は、「理念に共感して理事を仰せつかった」としており、無報酬だったという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」