スマートフォンネイティブが見ている世界

なぜ、子どもたちはSNSで「裸の写真」を送るのか--リベンジポルノ被害も

 警察庁の発表によると、2020年の1年間に警察に寄せられたリベンジポルノの相談は1570件で過去最多を更新した。この件数は過去5年間で1.5倍になっている。

 年代別では20代が42%で最も多いが、19歳以下が27.3%と続き、合わせて7割を占める。被害者の最年少はわずか10歳。前年の最年少は8歳であり、年少者でも被害にあっている実態がわかる。女性が90.9%と大半を占めるが、男性の割合も前年より5割近く増加している。

 両者の関係は交際相手(元を含む)が54%を占めるが、ネット上だけの知人友人も前年比で4割増の16.4%いた。相談内容(重複あり)は、「画像を公表すると脅された」「画像を所持されている、撮影された」「画像を公表された」「画像を送りつけられた」などとなっている。

 なぜ、若者たちは裸の写真をネットだけの知人友人などに送ってしまうのか。対策はどうすればいいのだろうか。

みんながシェアするものを「自分だけ止められない」

 被害者は画像を撮られてもいるが、自分で撮ってもいる。10〜20代の若者たちは、物心ついた頃からインターネットに触れてきた世代だ。自撮りにも慣れており、写真を撮ることにも撮られることにも抵抗が少ない。スマホやSNSの利用が広く普及したことが特に大きく影響している。

 警察庁によると、2019年における児童ポルノ事犯の被害児童の被害態様別の割合は、「児童が自ら撮影した画像に伴う被害」が37.5%と約4割を占めている。被害児童は高校生が39.6%、中学生が39.8%と中高生が大半を占めるが、小学生も15.4%、未就学児も3.3%おり、年齢が低くても被害がおよぶ可能性がある。

 講演先の複数の中学校で、リベンジポルノ問題が起きたと聞いた。多くのトラブルは、付き合っている関係同士で裸の写真を撮影して送りあうことから始まっている。別れた後に、多くは彼氏のほうが腹いせに彼女の裸の写真をクラスメイトなどに送ってしまうことがある。送られた方は面白半分にシェアを繰り返し、その結果、一気に学校中に裸の写真が広まってしまうというわけだ。

 中にはクラスのLINEグループなどに投稿する生徒もおり、それによって一般の生徒が目にして、保護者などに相談してことが発覚する。被害にあった女生徒の中には学校に来られなくなる例もあり、教員がシェアされた生徒を一人ひとり呼びつけてスマホを持ってこさせ、目の前で画像を消させたという。しかし、そのようにしても全部の画像を消しきれないことは多い。

 「回ってきたものをシェアしないのは難しい。みんながシェアしてるし、シェアは普通のこと。自分だけしないのは『なんで?』となる」とある中学生は言う。そもそもみんなが回してくるものは、自分も回すのが当たり前であり、自分で止めることは難しいという。「自分がシェアしたものはそう(裸の写真)ではなかったけれど、いじめには加担したと思う。反省している」

ネットの友だちに請われて送ってしまう

 知らない人とSNSやオンラインゲーム経由でつながったり、やり取りすることは、すでに子どもたちの間でも当たり前のことになっている。ネットのみの友だちでも、やり取りして心を開いていればすでに友だちという認識になっている子は多い。

 友だちには嫌われたくないと考える子は多く、ネット上の相手に「しつこくお願いされて断るのに疲れて」「強く言われて」断れずに裸の写真を送ってしまう子がいる。中には、強く脅されて言うことを聞いてしまう子もいる。

 被害にあったある男子生徒は、きれいな女性とネット上で親しくなり、「好き」と言われて舞い上がってしまった。そのうち女性から裸の写真が送られてきたため、お返しにと自分も撮って送ったところ、相手は実は成人男性で、「写真をばらまく」と脅迫されたという。

 このように、性別や年齢などの素性を偽って児童生徒たちと交流している加害者もいる。「同級生の女の子」「中学生の男の子」などのふりをして近づき、送らせるケースもあるので注意が必要だ。

 裸の写真を撮ったり、送ったりすることでどんな結果が待っているのかがわかっていない子どもは多い。スマホを持っていなくても、タブレットやゲーム機などでも交流することはできる。子どもには、知らない人と交流するリスクを教え、対策を施した上でインターネットを使わせるようにしてほしい。低年齢でも被害が起きているので、そもそも裸の写真は撮らない、送らないことを約束させたい。

 裸の写真を送ってほしいと言われたり、送ってしまった場合は、東京都都民安全推進本部が運営する「こたエール」などの機関に相談するよう、子どもにも伝えてほしい。また、インターネット上にアップロードされてしまった場合は、セーファーインターネット協会に相談すると削除してもらえる可能性が高いので、諦めずに相談してほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

 

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