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「デザインとは何か」--ソニーデザインコンサルティング福原氏が挙げた4つのキーワード

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 CNET Japanが2月に1カ月にわたり開催したオンラインカンファレンス「CNET Japan Live 2021 ~常識を再定義するニュービジネスが前例なき時代を切り拓く~」。ここでは、ソニーデザインコンサルティングでクリエイティブディレクターを務める福原寛重氏が登壇した、2月15日のカンファレンス「ニュービジネスを加速させる ~これまでのデザインと、これからのデザイン~」の内容をレポートする。

ソニーデザインコンサルティングのクリエイティブディレクターである福原寛重氏(左上)
ソニーデザインコンサルティングのクリエイティブディレクターである福原寛重氏(左上)

 福原氏はソニー入社後、現在の「ウォークマン」や「ブラビア」のロゴを手がけ、ソニー内のコミュニケーションデザイン領域全体のチーフアートディレクターを経て、デザインコンサルティング事業の立ち上げに従事している。ソニーコンピュータサイエンス研究所にも所属し、ブロックチェーン関連のビジネスを開発するなど多彩な活躍ぶりを発揮する同氏が、ビジネスでも重要な役割を担う「デザイン」について、活用の仕方や必要になるマインドセットとは何かを解説した。

ショールームから映画内に登場するデバイスまで

 ソニーデザインコンサルティングは、新たな視点・視野・視座で事業を創造する力を生み出すデザインコンサルティングファームだ。ソニーのインハウスデザイン部門として1961年に発足し、製品やサービスのデザイン、ブランドコミュニケーション、経営戦略の可視化など、多様な価値創造を実践しているソニー株式会社クリエイティブセンターの子会社である。

ソニーデザインが手掛けたソニー製品の数々
ソニーデザインコンサルティングが手掛けたソニー製品の数々
手掛けたデザインはコーポレートロゴからおもちゃまで多岐にわたる
手掛けたデザインはコーポレートロゴからおもちゃまで多岐にわたる

 クリエイティブセンターと同じ「Create New Standard(「原型」を創る)」をデザイン哲学としながらも、ポテンシャルを発掘し、可能性の拡大を探ることをミッションに挙げている。以下の4つをコアバリューとし、戦略をデザインしディレクションワークを行うコンサルティング、プロダクトデザインやロゴ制作などソサエティをデザインするサービス、発想のマネジメントなど教育的な面を持ち未来をデザインするマネジメントという、3つで事業を展開する。

(1)事業連携の経験
(2)長期戦略の視点
(3)グローバルな視点
(4)品質追求の視野

 事例としては、京セラの子ども向け骨伝導歯ブラシ「Possi」、中国東方航空のブランドショールーム、廃棄されるリンゴから抽出したエタノールを使用した除菌ウェットティッシュなどがある。さらに、劇場アニメ「ソードアート・オンライン」に登場するARデバイスのデザインや、銀座ソニーパークなどその幅広さに驚かされる。

ソニー以外で手掛けたデザインには社会課題に取り組むものもある。こちらは京セラの子ども向け骨伝導歯ブラシ「Possi」
ソニー以外で手掛けたデザインには社会課題に取り組むものもある。こちらは京セラの子ども向け骨伝導歯ブラシ「Possi」
中国東方航空のブランドショールーム
中国東方航空のブランドショールーム
廃棄されるリンゴから抽出したエタノールを使用した除菌ウェットティッシュ
廃棄されるリンゴから抽出したエタノールを使用した除菌ウェットティッシュ

すべての人はデザイナー、すべてのことがデザイン

 福原氏はソニーデザインコンサルティングの事業の抱負を「大風呂敷を広げるようだが、デザインの業を刷新すること」だと語る。そして、そこで言うデザインとは何かを4つのキーワードで解説した。

1. デザインは全ての人のもの


 欧米ではデザインが広い意味で使われており、工程を考える行為はすべてデザインであると言える。建築でたとえると、同じような建物でも基礎工事をきちんとせず上物を建てると壊れやすく、地固めをする工程が大事になる。表現の前に考察することも含めてデザインであり、誰もが意識せずとも経験しており、すべての人はデザイナーだといえる。

2. 今日必要なマインドセット


 社会変化の先を読むのは難しいが、環境要因や社会要求と必ずリンクしている。経験、知識は有益だが常識ではなくむしろバイアスになり、先入観を持つことが危険になる。店を開業するにしても2年前と同じ考えではできず、「これから先はあらゆるものがニュービジネス」になる。

3. デザインはすべてのビジネスに有益


 求めるものの判断基準(CRITERIA)を明確にすることで、商品の位置付けやトーンなどが早く決められる。判断基準に基づいた結果があるからこそ、ミッション、ビジョンが伝わり、企業の存在意義にまでつながる。そこをデザインすることですべてが成立し、最もパフォーマンスを発揮できるところでもある。

企業の存在意義とミッションは判断基準につながる
企業の存在意義とミッションは判断基準につながる

4. これから先のデザインとは


 UX(ユーザーエクスペリエンス)やサービスデザインという言葉が登場しているが、日本ではデザインというと色や形、ファッションなどまだまだモノに寄りがちで、コンセプトメイクの仕事だとはいわれない。「これからのデザインは自分たちの生活の中にあるすべてであり、広く考えてほしい」と福原氏は述べた。

これからはあらゆることがデザインになる
これからはあらゆることがデザインになる

手応えを感じる瞬間は「相手の領域で評価してもらえたとき」

 カンファレンス後半のQ&Aでは、ソニーデザインコンサルティングという組織に対して多くの質問が寄せられた。社員数は非公開だが、同社は協業や提携の進めやすさや採算性も考え、少人数で構成されているという。「全体としてはモノづくりよりその前のブランディングなど、言葉で仕事していることが多く、そこからもう一段上に向けて非言語化されるまでを言語化することが、バリューともいえる持ち味かもしれない」と福原氏は語る。

 社内は情報分離を徹底しており、他社や競合の仕事を受ける場合は、案件受託フローなどで相手の権利を侵害しないかチェックしていると福原氏。情報分離を徹底しているのは、グループ会社が多いためどうしても競合が多くなるからだという。

 福原氏個人への質問としては、今後手がけたいデザインや方向性について問われた。「どんな仕事も面白く、楽しくできるが、依頼が専門外であればそれをはっきりと言う。また、仕事の中には使用する書体を統一するといった地味なところに取り組む場合もあるが、そうした点を解決することで重要な何かが見えることもある」と答えた。

 このほか、売れるためのデザインもするかという質問も寄せられたが「仕事は期待されていることを聞いてから始めることが多く、必要であればするが、たとえば広告でも売るためとブランド認知では方法が異なり、両方やるとパフォーマンスが落ちる。どちらかといえば地固めやディレクションを明確にするのが仕事」と説明した。

 手応えを感じる瞬間については「日本はデザインが図画工作と思われ、アートの教育を受けている人は少ない。だがアートもデザインも深く、手がける範囲は広く、いろいろ料理する必要もある。職業としてはデザイナーだが、マーケティング担当者と仕事をして『あなたはマーケッターですね』というように、相手の領域で評価してもらえると手応えを感じる」と語った。

 同カンファレンスでは、すべての講演者に対して「あなたにとって常識の再定義とは?」という質問をしている。これに対して福原氏は「時間的な価値を正しく見ること。大昔は植民地政策や士農工商が当たり前だった。それぞれの時代にとっての常識が、時間が経つと非常識になる。時間的な尺度でその価値は長く使えるものなのかを評価すること。常識は常に、日々再定義されていると思っている」と答え、カンファレンスを締め括った。

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