――記録時の姿勢など、何かアドバイスがあれば教えてください。
木村氏:リラックスして記録しましょう。力が入った状態や、動いている状態だと、筋肉の動きがノイズとして記録されてしまい、アプリケーションはうまく波形を解析できません。座って肩の力を抜いて、ぎゅっと押しつけるのではなく、軽くDigital Crownに触れ、30秒間安静にしましょう。脈拍や血中酸素ウェルネスは動いていても測ってくれていますが、心電図に関しては自発的に記録する必要があります。リラックスタイムに、ふと心電図を記録してみようかな、という感じで定期的に記録してみましょう。
――もし不整脈が記録された場合は、どうすればいいでしょうか?すぐに病院にかかった方がいいですか?
木村氏:一番大事なことは、心電図アプリケーションの結果に関わらず、体調が不良なときは、医師に相談することです。アプリケーションの結果が大丈夫だから病院にはいかない、というのは絶対にいけません。心電図アプリケーションは心房細動があるかどうかしか報告してくれません。洞調律と表示されても、心臓には不整脈以外の病気もありますから、医師の診察、判断を仰ぐ必要があります。もし、不規則な心拍の通知や心電図アプリケーションで心房細動が記録されたら専門医に相談しましょう。それが本当に心房細動なのか、治療をする必要があるのかに関して、適切な検査につなげましょう。
――専門医にデータを見せることで、さらにわかることもあるのでしょうか?
木村氏:心電図アプリケーションが判断するのは今のところ心房細動だけですが、医師がApple Watchで記録した心電図を見れば更に情報が増えることがあります。他の不整脈や、狭心症、心筋梗塞の早期発見になったという報告もあります。ですから、症状があるときの心電図をPDFに書き出して医師に相談するのが良いと思います。ぜひApple Watchで気づいた自分の健康状態の変化を、適切な医学的検査を受けるきっかけにしていただきたいです。
Apple Watchで個人が記録した心電図は、病院で技師さんが決められた方法でいくつも電極を装着して記録する心電図とは異なるものです。医療従事者側もそういったデータだということを理解して適切に扱う必要があります。医療機器に承認されたアプリケーションだとはいっても、直接、医学的判断に利用してはいけません。あくまで補助的に活用することで、適切な検査をおこない、早期診断、治療につなげることが必要です。
――今回、心電図アプリケーションに加えて、不規則な心拍リズムを特定したときに通知してくれる機能も追加されました。この機能はどう活用すれば良いでしょうか?
木村氏:不規則な心拍の通知に関しては、心電図と違って能動的に記録する必要はありません。Apple Watchが自動的に計測をして、脈拍が一定時間バラバラに揺らぎ、心房細動だと判断したときに知らせてくれる機能なので、通知をオンにしておけば、症状がない心房細動を発見してくれる可能性があります。
もし通知があったときは、専門医に相談しましょう。せっかくの通知を無視せず、早期発見に活用するべきです。しかし、この通知機能は常に脈拍を見てくれているわけではありません。ですから、通知がないから心房細動は無いということは言えません。心房細動の発作があったときにモニタリングしてくれているとは限らないからです。Apple Watch Heart Studyではこういった検出漏れを少なくするようなアルゴリズムを構築したいと思っています。
――Apple Watchで心電図アプリケーションが利用できるようになったことで、医療現場にはどのような変化がもたらされると思いますか?
木村氏:いつでも、だれでも、どこでも心電図を記録できるのですから、医療従事者はそれを補助的な材料として活用し、病気の早期発見が増えることにつながってほしいです。
こうしたデジタルヘルスケアの革新をきっかけに、心電図や心房細動がどういうものか、どういうリスクがあるのか、健康や病気の知識が広がることも大切だと思います。ヘルスケアアプリには様々なデータが保存されていますので、自分のライフスタイルを見直すきっかけにもしていただきたいです。たとえば、糖尿病の方であれば、運動不足解消のため、生活習慣を具体的な数字で振り返ることで健康増進に役立てることができます。
デジタルヘルスケアの拡充は、医療に提供されるデータ量を増やします。それをどう評価し、扱うのかという、共通の認識を構築していくことが今後の課題です。デジタルヘルスケアが医療への橋渡しとして機能し、国民の健康増進に寄与することを期待します。
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