新型コロナの流行により、2020年は音楽ライブを含めたさまざまなイベントが中止となり、そこからオンラインライブとして、音楽ライブをネット配信する取り組みが急増。それにあわせて、これまでネット配信コンテンツにおける都度課金という形の有料配信についても、視聴者や運営側双方に敷居があったが、それが下がりつつあり、1番組単位で料金を支払って視聴する「ペイ・パー・ビュー」(PPV)のシステムも広がりつつある。
こうしたオンラインで行われる音楽ライブやPPVにおける取り組み、そして今後の展望について、サイバーエージェントの執行役員であり、エンターテインメント産業における収益化のDX支援を専門に行う子会社のOEN 代表取締役社長を務める、藤井琢倫氏に聞いた。
――2020年7月にCyberZとOEN、デジタルインファクトと共同で、国内のデジタルライブエンターテインメント市場調査を発表しました。2020年の市場規模が140億円、2021年には前年比約2.2倍となる314億円、2024年には約1000億円になると予測し、市場が急拡大するとしていました。それから約半年が経過しまして、今の実感をお話ください。
当時の試算と予測から比べると、はるかに成長スピードが早く、市場規模も想定より大きいように思います。テレビ&エンターテインメント「ABEMA」におけるPPV「ABEMA PPV ONLINE LIVE」では、2020年6月の提供開始から約半年間で累計視聴者数も250万人を突破しています。また決算説明会資料として公表しているものですが、2020年9月期第4四半期(2020年6月1日~9月30日)では、「ABEMA」のPPVだけでも売上が23億円ありました。これを踏まえて考えると、今はかなりの市場規模になっているといっていいです。
――リアルな場での音楽ライブ開催が難しいなかで、オンラインライブを取り組むにあたってアーティストや興行主からさまざまな問い合わせがあったかと思います。どのような内容のものが多かったでしょうか。
アーティストやプロダクションサイドからは、厳しい状況があるなかでオンラインライブという形でもしっかりとした収益が見込めるのかどうか、という相談はよくいただきましたし、収益に付随して、還元率を気にするプロダクションも多かった印象です。オンラインライブが一気に普及したことによって、配信プラットフォームが驚くほど増えたため、お問合せも増えたのだと推察しています。
プロダクションサイドは、オンラインライブを実施することで利益もさることながら、宣伝などを通じて既存のコアなファン以外に、多少興味を持ってくれているライト層も関心を示して囲い込めるのかどうか、という要望を持っていたところが多かったです。その観点でいくと、新しい配信プラットフォームはプロモーション力やマーケティングまで手が回らず、結局淘汰されていくと思います。一部の配信プラットフォームに配信が偏っていく流れは、2020年末にすでに感じていますし、2021年にはそれが進んでいくものと感じています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス