パナソニックは、2021年3月期第3四半期(2020年4~12月)連結業績を発表した。売上高は前年同期比15.3%減の4兆8732億円、営業利益は5.8%減の2268億円、税引前利益は7.6%減の2200億円、当期純利益は26.9%減の1301億円と、減収減益の結果となった。
だが、第3四半期(2020年10~12月)連結業績は、売上高は前年同期比5.1%減の1兆8141億円、調整後営業利益は49.8%増の1428億円、営業利益は29.7%増の1302億円、税引前利益は26.6%増の1269億円、当期純利益は5.2%増の812億円と、減収ながらも、増益の結果となり、回復ぶりを示す結果となった。
パナソニック 取締役常務執行役員兼CFOの梅田博和氏は、「第3四半期の売上高は、為替影響や非連結化影響を除く、実質ベースでは増収に転換した。車載機器やホームアプライアンスなどの増収が、コロナ影響による500億円の減収をカバーした。第1四半期はコロナの影響が拡大したが、その後、回復傾向が続き、第3四半期では、前年を上回る水準となった。オートモーティブ、インダストリアルソリューションズ、アプライアンスが、第3四半期で、前年を上回る水準まで回復している。営業利益は第2四半期に続き増益になった。経営体質強化の取り組みが着実に進捗。空調空質、車載電池、情報通信インフラ向けといった社会変化を捉えた事業の増販も寄与した。調整後営業利益は、全セグメントで黒字になった」と総括した。
とくに、空調空質や公衆衛生関連の需要拡大により、同社独自の「ナノイーX」搭載商品が拡充。これらの製品を扱う空調・冷熱ソリューションズとホームアプライアンスで増益となったほか、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」を増産しているパナソニックエコシステムズも増益になったという。
梅田CFOは、「家電については、自宅で過ごす時間が長くなり、コロナが終息しても、働く場所も元には戻らず、生活様式は変化するだろう。そのため、自宅の快適さを求めるニーズは変わらない。くらしアップデートで、最適な形に、家の中をアップデートしたい」と前置きし、「これまでは、気にしないようなことも満足感や付加価値を求めるようになっている。エアコン、冷蔵庫、トイレにもナノイーを搭載し、除菌や消臭、衛生を求めている。高付加価値商品が受け入れられている」とした。
ナノイーXおよび「ナノイー」搭載商品の生産台数は、2019年度の800万台から、2020年度は850万台へ拡大すると見込んでおり、さらに2025年度には1500万台の規模にまで生産を拡大する計画を示した。現在、ナノイーは、エアコンや空気清浄機、冷蔵庫など、40商品に搭載。自動車メーカー8社、鉄道事業者11社に導入しているという。
また、空間除菌脱臭機ジアイーノは、2019年度実績では、「2桁億円の手前」(梅田CFO)であったが、2020年度は100億円を突破し、「3倍ぐらいの伸びになっている」という。中国でも生産を開始するなど増産投資を進めており、2025年度の販売目標として500億円を掲げている。
さらに、「中国の住宅市場向けに、空調と空質を融合したシステムの販売を予定している。単品だけでなく、空調空質ソリューションにも力を注いでいく」と述べた。
セグメント別業績では、アプライアンスの売上高が前年同期比8%減の1兆8911億円、営業利益は20%増の991億円となった。
ルームエアコンを含む空調冷熱ソリューションズの第3四半期の売上高は前年同期比2%増の1020億円。白物家電などのホームアプライアンスの売上高は前年同期比8%増の2630億円。テレビなどのスマートライフネットワークは7%減の1589億円となった。
「第3四半期は、洗濯機や冷蔵庫等の販売好調に加え、コストコントロールの効果があった」という。
ライフソリューションズは、前年同期比27%減の1兆1012億円、営業利益は前年同期比17%減の593億円となった。「第3四半期の売上高は、空質関連事業、海外の配線器具が堅調に推移し、国内市況の悪化をカバーした」という。
コネクティッドソリューションズの売上高は前年同期比25%減の5763億円、営業損失は146億円の赤字となった。「実装機が好調を継続している。一方で、コスト改善に取り組んだものの、アビオニクスなどの落ち込みをカバーできなかった。だが、第2四半期までの赤字は、第3四半期には黒字に転換した」と述べた。
オートモーティブの売上高は前年同期比14%減の9604億円、営業損失は前年同期の292億円の赤字から改善したが、マイナス74億円の赤字。「第3四半期は、円筒形車載電池で、生産ラインの切り替えによって販売が減少したが、車載機器は、第1四半期における自動車減産の反動によって需要が増加した」という。
インダストリアルソリューションズは、売上高が前年同期比5%減の9305億円、営業利益は367%増の458億円となった。「情報通信インフラ向けの好調が継続したほか、システムとデバイスに加えて、プロセスオートメーションが好調。半導体の構造改革の効果などが利益に貢献した」という。
2020年度通期の連結業績見通しを修正した。7月30日の公表値に対して、売上高は1000億円増の6兆6000億円(前年実績は7兆4906億円)、調整後営業利益は800億円増の3000億円(同2867億円)、営業利益は800億円増の2300億円(同2938億円)、税引前利益は800億円増の2300億円(同2911億円)、当期純利益は500億円増の1500億円(2257億円)とした。
「全社では売上高、利益ともに上方修正し、調整後営業利益は133億円の増益の見通しになった」としている。
新型コロナウイルスの影響については、当初は、調整後営業利益で1500億円のマイナス影響を見込んでいたが、1350億円に見直している。「2020年10~12月にかけて、世界の経済活動が順調に推移している。また、社会変化に対応するための製品での増販が図れている。さらに、自動車業界が第1四半期は生産が停止していたが、この挽回が強めに入っている。もし、コロナの影響がなければ、調整後営業利益で4350億円の実力値があると見ており、営業利益率は5%の水準に近づいている」と述べた。
セグメント別業績見通しは、アプライアンスの売上高が7月公表値に対して1100億円増の2兆4800億円、調整後営業利益は320億円増の1050億円、営業利益は320億円増の870億円。ライフソリューションズは、200億円増の1兆5000億円、調整後営業利益は100億円増の850億円、営業利益は180億円増の630億円。コネクティッドソリューションズの売上高は800億円減の8200億円、調整後営業利益100億円減の50億円、営業損失は190億円減の60億円の赤字。オートモーティブの売上高は900億円増の1兆3400億円、調整後営業損失は250億円増としたもの、50億円の赤字、営業損失は320億円増としたが、20億円の赤字。インダストリアルソリューションズは、売上高が500億円増の1兆2500億円、調整後営業利益は180億円増の730億円、営業利益は210億円増の640億円とした。
梅田CFOは、「アプライアンスは、堅調な販売や、コストコントロールなどの進捗を織り込み、売上高、利益ともに上方修正した。ライフソリューションズは、コロナ影響の縮小に加えて、空質関連事業での増販、徹底した固定費削減などにより、売上高、利益とも上方修正した。一方、コネクティッドソリューションズは、固定費削減は徹底したものの、コロナの長期化により、アビオニクスなどの回復が遅れており、売上高、利益ともに下方修正した。オートモーティブは、売上高は車載機器で自動車市場が当初の想定よりも早く回復したことで上方修正。また、車載機器では充電器関連の一時費用を計上したものの、販売回復などにより、赤字が縮小。円筒形車載電池でも、合理化や新製品導入効果が寄与して、利益も上方修正した。インダストリアルソリューションズは、車載向けの市況改善や、データセンター向けの伸長により、売上高、利益とも上方修正した」という。
テレビ事業については、構造改革の効果により、当初予定の1年前倒しとなる、2020年度で赤字解消を目指すことを公表。「メキシコ工場の生産撤退、販路の絞り込みを行い、量を追うのではなく、パナソニックの強みが生かせる高画質、高音質の高付加価値のあるテレビに特化してきた。販売は下降気味であるが、日本を中心に、付加価値商品にシフトできている。2020年度は赤字ではないことが見通せている。だが、テレビ事業には波がある。自社生産にこだわるのではなく、協業も推し進め、収益性をしっかり見ながらやっていく」とした。
また、テスラ事業については、通期黒字化する見通しであることを示し、「2020年度第2四半期(2020年7~9月)で黒字化し、第3四半期も2桁の億円で黒字化している。通期でも黒字が見込める、2021年度以降は、黒字になるかどうかといった議論はなくなる」とした。
また、インダストリーソリューションズは、5%台の営業利益率の見通しだが、「2桁の利益率を目指していく事業であり、今後も成長を見込んでいる」とした。
なお、中期戦略に掲げた経営体質強化による1000億円の効果は、1年前倒しで2020年度に達成する予定であるほか、車載事業の収益改善は、固定費削減や生産性向上などにより着実に進捗。利益率5%の早期実現に取り組んでいくことを強調した。
事業ポートフォリオ改革では、2月1日に太陽電池の生産撤退を発表。今後は、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)、パワーコンディショナー、蓄電池などを組み合わせた、エネルギーソリューション事業を強化するという。アビオニクスについては、「すでに構造改革を実施しているが、航空機の生産、運航などの回復を見極めながら、必要な対策を進めていく」と述べた。
一方で、中長期的な社会変化を踏まえた取り組みとして、ナノイーやジアイーノによる空調空質、公衆衛生に関する需要拡大のほか、地球温暖化対策などによるEV需要の拡大を受けて、パナソニックの技術が生きる円筒形車載電池事業において、北米工場における増産対応、電池の技術開発、欧州事業での戦略的提携などを強化。情報通信インフラへの投資拡大では、実装機や導電性高分子コンデンサ、蓄電システムで、増産投資や開発投資、商品差別化といった取り組みを進めていくとした。
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