atama plusと立命館は12月22日、AIや学習データなどを活用した高大接続、入試企画の検討に関わる連携協定を締結したと発表した。
加えて、新しい高大接続と入試の在り方を考える共同研究会を立ち上げ、2021年1月より、立命館大学に進学する附属校生を対象に、atama plusの学習システム「atama+」を活用した大学入学前基礎学力定着の実践研究を開始。2021年4月より、学習歴を踏まえた新たな入試企画やオンライン入試プラットフォームの開発検討に取り組むという。
EdTechスタートアップのatama plusでは現在、生徒ひとりひとりに自分専用カリキュラムを作成するAIを活用した学習システム「atama+」を、全国の塾・予備校2000教室以上に提供している。
一方の立命館は、立命館大学など2つの大学、4つの中学・高校、1つの小学校で、約5万人の児童・生徒・学生を擁する総合学園を運営。11月には、社会共生価値を創出する「次世代研究大学」を目指す中期計画R2030チャレンジ・デザインを策定し、同じ志を有する連携企業や組織とともに、創発性人材の育成、さらなる教育・研究のイノベーションへの挑戦を進めている。
両者によると、大学の学部・学科ごとに入学後に必要となる基礎学力は異なるが、試験当日の対象科目の点数のみで評価されることが多い現在の一般入試制度では、大学側は入学後に必要となる学力を十分に測れず、生徒は高校での学びの成果を十分にいかせていないという課題があるという。結果として、各分野の高校範囲までの基礎学力の不足が原因となり、大学入学後の授業についていけない学生の存在は社会的な問題となっていると指摘する。
立命館では、現行の学内推薦入試で調査書における全科目の評定平均値を主な評価軸としていることから、特に理系学部において、学部・学科ごとに入学後に特に求められる基礎学力との接続が必ずしもできていないという課題を抱えていたという。また、筆記試験を指定日に会場で実施するという入試形式については、従来から生徒の居住地による入試機会格差は問題となっており、新型コロナウイルス感染拡大の影響でさらに深刻化していると説明する。
そこで立命館は、他大学に先駆けて全国多くの拠点に受験会場を設け、地元(近畿エリア)外からの入学生が全体の半数以上を占めるほど入学生出身地の多様化を進めてきたという。しかし、それでもなお居住地の問題で入試を受けることができない生徒が存在しているという。立命館では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で会場試験の定員減を求められる中、既存の会場実施という形式そのものを見直し、次世代の入試形式を検討することが急務だと考えている。
このような背景もあり、両者はAIや学習データなどのテクノロジーを活用することでこれらの課題に対応し、新しい高大接続や入試のかたちを追求したいと考え、共同研究会を立ち上げるに至ったとしている。同会では、(1)附属校生の学内推薦合格後の基礎学力定着モデル構築、(2)学習歴を踏まえた新たな入試企画の検討、(3)オンライン入試のプラットフォームの開発という3つのテーマに取り組むという。
附属校生の学内推薦合格後の基礎学力定着モデル構築では、立命館守山高校の立命館大学理系学部および、経済学部への進学が決定した3年生を対象に、合格決定後に学内補習を実施していたが、さらに基礎学力向上を図るため、同生徒を対象に2021年1月よりatama+を活用した入学前教育モデルの構築を開始する。また、2021年9月を目処に対象生徒の大学授業理解度を検証し、その結果をもとに次年度の入学前教育や授業改善につなげていく予定。
学習歴を踏まえた新たな入試企画の検討では、附属校の学内推薦入試を現状の調査書における評定平均値を基準としたものから、探究型学習などにより培った力と基礎学力を共に評価できる新たな入試に転換していく研究を開始する。
2022年度入試(現高校2年生対象)以降の学内推薦入試での適用を目処に、調査書の評定平均値だけでなく、各生徒の理系科目の分野別習得状況などを加えて合否を決める入試の仕組みの研究に取り組むという。まずは、2021年4月より立命館守山高校内でatama+の授業内活用を開始し、入試の参考情報となる分野別習得状況を可視化。同時に生徒の基礎学力を高めることで、附属校生の学内推薦合格後の基礎学力定着モデル構築とも連携させるという。
オンライン入試のプラットフォームの開発では、すべての生徒に公平・平等に入学の機会を提供するため、オンラインでの入試の可能性を検討する。atama plusのオンライン模試実施経験などを踏まえ、実際の一般選抜で利用する場合の課題などを明確化し、オンライン入試のプラットフォームを開発するという。
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