ソフトバンクは12月22日、新たな料金戦略に関する発表会を実施。新たに設立を打ち出した「Softbank on LINE」をはじめとした、3つのブランドに関する新料金プランとその狙いについて説明した。
発表会に登壇した代表取締役副社長執行役員兼COOである榛葉淳氏は、コロナ禍の2020年を振り返り、ショップでのサポートが大切との顧客の声がある一方で、オンラインショップでの取扱数が前年の2倍に伸びているとも説明。「今後デジタルネイティブ世代がどんどん増える。リアル店舗でのサポートと、オンラインのベストミックスが大切と感じた1年だった」と話す。
そこで5Gやスマートフォンが広がる今後に向け、より自身の好みに合ったスマートフォンを選択できるよう、料金プランを見直して新しいサービスを投入するに至ったとのこと。その1つとなるのがオンライン専用の新ブランドを立ち上げることだったという。
それが2021年3月のサービス開始を予定している「Softbank on LINE」(ブランド名は別途発表予定)になるという。同社では従来、メッセンジャーアプリ「LINE」のブランドを冠したMVNO「LINEモバイル」を子会社にして運営してきたが、Softbank on LINEは「LINEモバイルとは全く違うもの」だと榛葉氏は説明する。
具体的には、2021年3月にLINEとソフトバンク傘下のZホールディングスが事業統合するのに合わせ、LINEモバイルをソフトバンクの完全子会社にしたのち吸収合併。ソフトバンクの1ブランドとして直接運営することから、通信品質もソフトバンクと同等になるとしている。なお新ブランドによるサービスは、月額2980円で20GBの4G・5Gのデータ通信が利用できるほか、LINEの力を借りることでLINE使用時の通信量をカウントしない仕組みも提供されるとのこと。
また、店舗での契約やサポートがないオンライン専用のブランドであることから、LINEのアプリ上で申し込みや情報変更などの手続きを実現するという。「ソフトバンク」「ワイモバイル」との違いを明確にするため、LINEのロゴやイメージカラーである緑色を用いて差異化もしていくという。
MVNOではなくソフトバンクのブランドとして展開する理由について、榛葉氏は「ソフトバンクが提供するブランドであることが必要な時代と考える」と回答。既存のLINEモバイルのサービスに関しては、Softbank on LINEブランドがサービスを開始する2021年3月をもって新規受付を停止、順次Softbank on LINEのサービスへの移行を進めるとしている。
ただ、LINEモバイルには通信量500MBで月額1100円といった小容量で一層低価格のサービスも存在し、そうしたサービスを求めるユーザーの受け皿が存在しないのは気になる。この点について榛葉氏は「これから顧客の声が集まってくるので、総合的に考えて検討したい」と答えるにとどまっている。
ソフトバンクでは他の2つのブランドに関しても新たな料金施策を打ち出している。ワイモバイルブランドに関しては、12月下旬での提供予定だった「シンプル20」を改定。5Gの通信にも対応し、なおかつ通話定額をオプションにして料金を引き下げた「シンプルL」として提供するとともに、同じコンセプトで小容量の「シンプルS」、「シンプルM」も用意する。
また、ソフトバンクブランドに関しては、4G・5Gのデータ通信が無制限(テザリング使用時は30GB)で利用できる新プラン「メリハリ無制限」を、月額6580円で提供することを発表。榛葉氏は同社が「メリハリの先駆者」であるとし、通信量が3GB以下の時はさらに1500円を値引きする仕組みも用意するとしている。
一方で、段階制の「ミニフィットプラン」に関しては、当面サービス内容は変えず現行の状態で提供し、状況を見て今後の方針を検討する。他のブランドで小容量のプラン充実が進んでいるが、ミニフィットプランを「すぐ停止することはない」と榛葉氏は答えている。
ソフトバンクとワイモバイルの新料金プランに関しては、「家族や固定回線による値引きの要望が強い」と榛葉氏は話し、「おうち割 光セット」「新みんな家族割」などの割引サービスは継続する。ただし、同社がこれまで提供していた、6カ月や1年間など期間を限定した割引に関しては「(割引終了後)値段が上がるという声があったので一切入れない」と榛葉氏は説明、シンプルで分かりやすい仕組みであることをアピールしている。
また榛葉氏からは、3ブランド間で契約を移行する場合の契約解除料や番号ポータビリティ(MNP)転出手数料、契約事務手数料は全て無料にすることも明らかにされた。ただソフトバンクとワイモバイルに関しては店舗も共通化が進んでおり、手数料がなくなることでブランド間の違いも失われてしまう一方、双方のブランドをまたがった家族割引が提供されていない点も不自然に映る。
この点について榛葉氏は「ソフトバンクとワイモバイルはブランドイメージが確立している」とし、ブランド内でサービスが完結していた方が分かりやすいと説明している。ただ一方で、顧客からの声もあることから総合的に検討を進めていきたいともしている。
榛葉氏は一連の料金施策が、5Gが広く普及する2021年以降を見据え、あらゆる年代の利用シーンやライフスタイルに合わせたサービスを提供するためのものとしているが、その内容を見るとオンライン限定で低価格の「ahamo」などを打ち出したNTTドコモの新料金プランに近く、同社への対抗の意図が非常に強い内容でもある。
この点に榛葉氏は「最終意思決定においては競合を意識しているが、決めるのはお客様」と回答、あくまで総合的な判断で打ち出したとしている。ただ一方で、「競争が激しいので(業界動向を)ウォッチしさまざまな選択肢の中から判断する」と、競合の動向によっては追加値下げをする可能性も示唆している。
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