KDDIは、12月9日にauブランドの新サービスに関する発表会を実施。新たに「Amazonプライム」をセットにした5Gの新料金プランなど、いくつかの新サービスを発表した。一方で、NTTドコモの新料金プラン「ahamo」への対抗策は打ち出されず、引き続きNTTドコモの出方を見極める考えのようだ。
同社の代表取締役執行役員副社長である東海林崇氏は2020年の5Gに関する取り組みを振り返り、コロナ禍でサービス開始当初から厳しい状況が続いていたものの、2020年9月25日に5Gの再起動を発表。さらに5Gに対応した「iPhone 12」シリーズの投入など端末ラインアップが充実したこともあり、現在は2020年度末の目標である200万契約の「約半分弱」(東海林氏)に達するなど順調に推移しているという。
東海林氏は5Gのエリアにも言及し、従来の5G向けに割り当てられた周波数帯だけでなく、新たに4G向けに割り当てられていた3.5GHz帯を、2020年12月中旬より5Gに転用してエリア整備を進めることを明らかにしている。東海林氏によると「iPhoneとGalaxyは適合認証が通っている」とのことで、具体的な機種名の言及はなかったが対象機種はソフトウェアアップデートで3.5GHz帯での5G利用ができるとのことだ。
その上で、東海林氏が「本日の本題」として新料金プランについて説明した。auでは5Gによるデータ通信の使い放題と、「Netflix」などのOTTサービスをパックにしたセットプランに力を入れているが、東海林氏によるとセットプランの満足度が他のプランよりも高く、20代に絞ればデータ使い放題プランで20GB以上通信する人が61%、月平均の使用量が30GB以上となるなど、使い放題で大容量通信ができる安心感が満足度につながっていると話している。
東海林氏はその上で、さまざまなネットサービスを提供するOTTのプレーヤーが携帯電話会社の品質を選ぶ時代になるとし、そうした時代に向けた施策として米アマゾン・ドット・コムと新たな取り組みをするに至ったと説明する。KDDIはこれまで、同社とクラウドサービスのAWSに関する法人向けの取り組みを積極的に進めてきたというが、アマゾン・ドット・コムは日本に進出して20年、KDDIも設立から20年という縁があることもあって、両社による新しい料金プラン提供の実現に至ったという。
それが2020年12月11日より開始する、アマゾン・ドット・コムの「Amazonプライム」と映像配信サービスの「TELASA」をセットにした、月額9350円の「データMAX 5G with Amazonプライム」。東海林氏はさらに、「データMAX 5G Netflixパック」「データMAX 5G ALL STARパック」にも、Amazonプライムをセットにし「データMAX 5G Netflixパック(P)」「データMAX 5G ALL STARパック(P)」として提供することも明らかにしている。
これらプランは10月16日から提供している「auワイド学割」の適用対象になるそうだが、東海林氏は「22歳までの人の経済基盤はこれからであり、もっとお得になるサービスを作った方がいいと思う」と説明。22歳以下の人に向け、適用翌月より6か月間、プランによって月額1600円から2560円の割引が受けられる「auワイド学割 U22 MAXプラン」を新たに提供することも発表した。
さらに東海林氏は、「Amazon Echo Dot(第3世代)」「Amazon Echo Show」を「au +1 collection」で12月11日より販売することも発表。ただスマートスピーカーに関するKDDIの調査で、利用したい人は多いが固定回線やWi-Fiの接続が障害となり、利用に至らない事が分かったとのこと。そこで東海林氏は、Amazon Echoシリーズの販売に合わせて、固定回線なしでも自宅に無線LAN環境を用意できるLTEルーター「無線LAN STICK」を2021年1月下旬以降に発売するとしている。
東海林氏はこの他にも、スポーツの映像配信サービス「DAZN」との取り組みや、バーチャル渋谷での新たな取り組みとなる「バーチャルクリスマス」を12月20日から25日に実施することなども発表した。一方で、発表後大きな話題を呼んでいる、NTTドコモの新料金プラン「ahamo」への対抗策などは打ち出されなかった。
この点について東海林氏は、「(ahamoは)市場に一定のインパクトがあると思っているが、NTTドコモ全体のサービス設計が分かっていないので詳細なコメントはできない」と回答。NTTドコモが2020年12月中に発表するとしている既存プランの見直し内容を見た上で、対抗策を検討する考えを示した。
その上で東海林氏は、「マルチブランド戦略をずっとやっていくことで、顧客に満足いただけるものを出していきたい」と説明。auとUQ mobileだけでなく、デジタルネイティブ世代に向けオンライン特化型のMVNOによるサービス提供を予定している「KDDI Digital Life」も加えた、複数ブランドの活用による対抗策を打ち出す姿勢を示している。
ただその場合、同じ事業者のサービスでありながら、別のブランドに移行する際に手数料がかかることを、武田良太総務大臣が問題視していることが懸念材料となる。この点について東海林氏は、「総務大臣の指摘は真摯に受け止めている。内容の見直しを前向きに検討したいが、詳細についてはまた改めて説明したい」と、今後手数料を見直す考えを明らかにした。
また、NTTドコモがahamoで非常に分かりやすいシンプルな内容を見せつけたのと比べると、今回発表された料金プランは6ヵ月限定の割引が多く存在する上、プレゼンテーションでも割引前の価格が提示されず本来の料金が分かりにくいなど、仕組みや見せ方で不信感を招いている印象は否めない。それゆえSNSなどでは、発表直後からKDDIに対する不満の声が多く挙がっていたようだ。
そうした料金の分かりにくい仕組みや見せ方について問われた東海林氏は、「(今回は)発表会の場なので、一番顧客が加入しやすい、分かりやすい数字を出した」と回答。キャンペーン終了後の料金に関しては店舗やオンラインショップでの購入時に丁寧に説明しているほか、24か月分の支払金額を提示することも義務付けられていることから、購入時には「顧客に誤解を招かないよう対応していく」と話している。
一方Amazonプライムに関しては、NTTドコモも2019年12月より「ギガホ」などの料金プランに1年間、Amazonプライムが付いてくるサービスやキャンペーンを実施しているものだ。東海林氏はこれに対して「データ無制限も我々だけだし、OTTとのセットプランはうち(au)の象徴」とし、使い放題プランと、契約している限りAmazonプライムが利用し続けられるセットプランであることが差異化要素になると説明している。
ただ、連携するサービスが増えるにしたがってセットプランの数自体が増え、消費者から見ると料金プランが分かりにくくなりつつあるのも事実だ。海外ではセットにするサービスをユーザーが選べるアラカルト形式を採用するケースもあり、人によってはそちらの方が分かりやすいと感じる可能性もある。
だが、KDDIの長谷川渡氏(パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 次世代ビジネス企画部長)は、「日本では欧米などと比べ(OTT)サービスの利用率が高くないこともあり、自信を持って利用できるパートナーのサービスをしっかりくっつけた形で商品説明しながら利用頂く形にするのが良かろうと考えている」と回答。OTTのサービスに詳しくない人にとってアラカルト形式は難しく感じてしまう可能性があるため、料金プランに直接サービスを紐づけた方がシンプルになると同社では捉えているようだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」