2020年で5期目を迎えた神戸市とシリコンバレーのシード投資ファンド 500 Startupsによるアクセラレーションプログラム「500 KOBE ACCELERATOR」。完全オンラインで実施された8週間にわたる集中トレーニングを終了し、参加17チームが成果を発表するデモデイが11月12日にオンラインで開催された。
今回は「COVID-19 Emerging Technology(新型コロナウイルス感染拡大で浮かび上がる社会課題の解決)」をテーマに、医療以外にも教育やニューノーマルに向けてのビジネスサポートなど、さまざまなアイデアが集まった。デモデイの発表は例年と同じく1チームにつき2分間と短く、日本語と英語での発表にはそれぞれ字幕で翻訳が付けられた形でテンポよく進められた。
最初にご紹介する「Health Sensei」(インド)は、テーマのど真ん中といえる、新型コロナの治療のためのソリューションを開発している。入院患者の病床を管理す遠隔ICUのようなヘルスデータ・モニタリングというシステムは、他社の同様のシステムに比べて価格を抑えて迅速に実装できるというメリットがあるという。3月にサービスを開始してから200床以上で1500以上の入院患者をモニタリングし、利用した病院での死亡率を国の平均の6分の1に抑えるという実績を出している。
「Meracle」(シンガポール)は、ぜんそくやCOPDなど慢性呼吸器疾患で薬を吸入する場合にきちんと肺に入るよう可視化できるデバイス「Whizz」を開発している。アプリにはゲーミフィケーションの要素が組み込まれ、子どもや高齢者が定期的に薬を正しく使用するよう促す。2021年のローンチに向けて準備を進めているという。
同じくヘルスケア向けのウェアラブルデバイスを開発する「SenzeHub」(シンガポール)はシニア世代向けの健康管理に特化している介護施設や病院に向けたサービスを、家族の見守り用にも展開を拡げ、2021年のサービス開始に向けて戦略パートナーを募集している。
医療向けロボットの開発に必要なコンピュータビジョンやAIによるデータ解析などの技術を持つ「Brain Navi Biotechnology」(台湾)は、PCR検査などで必要な鼻腔を検査するロボット「Nasal Swab」やロボットアームを活用した手術ナビゲーションシステム「NaoTrac」を開発している。創業者自身も医師で、17年前にSARSで友人を亡くしたことをきっかけに機器の開発に取り組んだと言い、新型コロナへの対応にも強い使命感を持っていることが感じられた。
ヘルステック関連ではほかに、病院向けのオンライン診療を含む施設全体で医療記録を一元化して共有し、病院全体のオペレーションを効率化する遠隔医療プラットフォームを開発する「Telemedizip」(フィリピン)。南米市場に向けて低価格でのヘルスケアプラットホームを提供する「Osana Saluda」(アルゼンチン)。機械学習システムにより処方箋のミスなどを防ぐ「AESOP Technology」(台湾)が参加していた。
AIを活用するスタートアップも複数あり、パーソナルトレーナーのサービスをスマホで提供できるようにする「Sportip」は、AI解析を取り入れてトレーニングをカスタマイズできるサービスを開発している。「Humaxa」(米国)はチャットボットやレコメンド機能でリモートワークを支援するAIアシスタントツール「Max」を開発している。AIを活用して事務作業の削減を目指す企業向けプラットフォームを提供する「LearningPal」(米国)は、書類作業が一切ない世界を目指すドキュメントマネジメントサービスを開発している。
新型コロナの影響を大きく受けているエンターテインメント分野では、バーチャルライブなどでニーズが高まりそうな3DサラウンドのARオーディオコンテンツを提供するソフトウェア"AURA”を開発する「Kalkul」が、現在ベータ版を日本の会社に提供している。ライブオンラインセッションやオンデマンド動画などオールインワンのビデオコマースソリューションを129カ国で8500社以上にサービスを提供する「Yondo」(オーストラリア)のような、これから大きく成長しそうな企業も参加していた。
そのほかには、ペットの気持ちを可視化する愛犬専用デバイス「INUPATHY(イヌパシー)」を開発する「ラングレス」、ラグジュアリー仕様のキャンビングカーをレンタルする「Dream Drive」、飲食店にデジタルメニューのサービスを提供する「Zenu」、オンラインの英語学習をサポートする授業管理プラットフォームを提供する「Pocket Passport」など、すでに国内で事業を進めている会社が複数あった。
また、アフリカのルワンダと連携して社会起業家の育成支援などもしている神戸市らしく、60カ国以上のNGOと100カ国以上の専門的なスキルを持つ個人をマッチングし、企業ボランティアの機会を支援する「CHEZUBA」(インド)のようなスタートアップも参加チームに入っており、5期に参加するチーム全体で対象とするジャンルや規模の幅を持たせようとしたのではないかと感じるところもあった。
今回は例年のように発表会場で投資家や支援者とリアルに交流する場を設けることができなかったが、今後はSlackを利用して引き続きコミュニティをサポートするという。
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