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【企画書全公開】すむたす、大規模プレゼンに臨んだ「削ぎ落としてわかりやすい企画書」

加納恵 (編集部)2020年12月11日 08時30分
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 会社やサービスを立ち上げた時、その内容を伝えるため必要になる企画書。その中にはどういった情報が盛り込まれ、どんな思いが詰め込まれているのか。ここでは、数多くのプレゼンをこなす起業家、ビジネスパーソンらが手掛けた企画書の中身を公開。企画書を作る上でのこだわりや気をつけていること、アイデアなどを紹介する。

「TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル」でのプレゼン資料
「TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル」でのプレゼン資料
  • 「TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル」でのプレゼン資料
  • ページ数:22ページ

スライドの真ん中に文字を集中「端まで使い切らない」理由

 今回は2018年に設立した不動産テックスタートアップである、すむたす代表取締役の角高広氏に、設立した直後に登壇した「TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル」での企画書を紹介していただく。

 すむたすは、査定から買取までをオンラインで一括して手がける「すむたす買取」や売り手も買い手も手数料無料のリノベマンション販売サイト「すむたす直販」、マンションの売却価格「すぐ売る」と「高く売る」が同時にわかる「ウレタ」などのサービスを手掛ける不動産テック企業。米国では「iBuyer(アイバイヤー)」として知られる、AIを活用した不動産の買取再販を日本で初めて手掛けた。

 創業3年未満のスタートアップによるピッチイベントになる「TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトル」には、100社以上の企業が応募。すむたむは、その中からファイナリスト20社に選ばれている。最終のピッチイベントには約1000人が来場し、その中で約7分のプレゼンと3分の質疑応答を実施した。

 「約1000人が来場される広いスペースだったため、プレゼン資料は文字要素を極力真ん中に寄せ、後列に座っている人からも見やすいことを心がけた。プレゼン資料1枚には、数多くの情報を入れ込みたくなってしまいがちだが、上下左右すべてで『端まで使い切らない』ことを意識した」。

後列の人からも見えやすいよう文字や図表はできる限り中央に配置している
後列の人からも見えやすいよう文字や図表はできる限り中央に配置している

 ただし、伝えたい情報量は決して抑えてはいない。不動産を売却したいと考えるすむたす買取のユーザー層の紹介に「住み替え」「離婚」の2つを挙げているがそれぞれ文字とイメージ画像のみのスライドを2枚続けて入れ込む。

 「ユーザーケースで紹介している住み替えと離婚の2つは、1枚の情報量が極端に少ない。2つを1枚のスライドに収めることもできるが、大人数に向けてプレゼンする際に、まとめてしまうと伝わりにくいのではないかと思った。これが30~40人規模のプレゼンであれば、1枚に詰め込んだかもしれないが、1000人規模になると全員の集中力はバラバラ、どこから聞いて、どこで離脱するかもわからないので、あえて2枚に分けた」と大規模プレゼンならではの作りだったとのこと。

 「大規模プレゼンはテレビ番組みたいなもので、テレビ番組はCMを挟むと、CM前の内容を10秒程度繰り返したりする。そういった『どこからも見てもわかる』ことを意識した。今この企画書を見返してもかなり情報量を少なくしていると感じる」。

ユーザーケースを紹介するスライドでは2つのケースをあえて、1枚ずつにして情報量を抑えている
ユーザーケースを紹介するスライドでは2つのケースをあえて、1枚ずつにして情報量を抑えている

 すむたすでは、投資家向けやメディア向けなどに企画書を作成するケースが多いというが、「投資家向けならばこの2~3倍の情報量を入れ込み、スライド枚数も3倍くらいになる。PCなどを使い、目の前でプレゼンするため余白も少なめ」とのこと。そのためピッチ用の企画書については「元々倍くらいあった情報量を削ぎ落として、短い中にメッセージを入れ込んだ」という。

 実際、一度目に作成した企画書で模擬プレゼンをしてみたところ7分に収まらず、そこから削ぎ落としながらこの形にまでまとめ上げていったという。

iBuyerという耳慣れない業種をどう知らせるか

 すむたすが企画書を作る際、難しいと思われるのがiBuyerという職種の伝え方だ。2020年に入り、手掛ける企業がいくつか出てきたが、設立当時は日本で唯一のサービス。言葉自体も聞き慣れず、馴染みが少なかった。そのためか企画書内ではiBuyerという言葉のほとんど登場しない。22枚ある企画書の20ページ目にはじめて出てくる。

「iBuyer」という言葉は、22ページのスライドのうち20ページ目のここにしか出てこない
「iBuyer」という言葉は、22ページのスライドのうち20ページ目のここにしか出てこない

 「この時のプレゼンでは特にiBuyerという言葉を使わないことを意識した。iBuyerは米国では認知が進んでいるが、日本ではまだまだ。それを使うのは不親切になるのでは考え、『不動産がより早く売れ、より安く買える』という、できるだけわかりやすい言葉に置き換えた。iBuyerが何かではなく、家を売る行為にAIを活用することで新しいサービスを提供しているのがiBuyerというように、言葉よりも、何ができるかを先に説明できるようにしている」とわかりやすさに重点を置く。

 逆に投資家に向けて説明する時は、iBuyerという言葉を早めに伝えるようにしているとのこと。「米国のビジネスにも精通されている方たちなので、iBuyerという言葉を用いたほうが伝わりやすい。このあたりはプレゼンさせていただく相手の方を見て伝え方を変えているが、基本的には自分の両親や祖父母が聞いてもわかることを念頭においている」という。

 わかりやすく伝えるという点では、使っている言葉全体にも気を配る。例えば5ページ目で登場する「実際いくらで売れるか、成約するまでわからない。」というフレーズ。ビジネス的に伝えるのであれば「売却価格は成約時期までわからない」という言い方で伝わる。

フレーズはできる限り身近な言葉に置き換えて表現するようにしている
フレーズはできる限り身近な言葉に置き換えて表現するようにしている

 「もう少し硬い表現にもできるが、『売却価格』を『いくらで売れるか』、という日常の言葉に置き換えることで理解度を挙げたかった。その一方で図表内にある『売出価格』と『成約価格』はデザイン的にも短い言葉で記載したほうがよいと思い、そのままの言葉を使っている」とデザインにも気を配る。

最短2日を伝えるために用いた身近なツール

 わかりやすさを意識した作りは図表にも及ぶ。すむたすの企画書では計3ページでカレンダーの図表が登場する。これは、家の売却にかかる日数が3カ月~半年と長期間必要だった従来のサービスに比べ、最短2日で売却が完了する、すむたす買取の最大のメリットを打ち出す上で重要な部分。これを、カレンダーを使ってわかりやすく解説している。

 「当初は、棒グラフのような図表を使っていたが、作ってみるとわかりにくい。棒グラフや折れ線グラフは企画書の中でもよくでてくる図表だが、時期を示す時には最適ではないように感じ、社内で議論した結果、もっとも親しみやすいカレンダーを使った。実際カレンダーを入れてみるとスピード感がわかりやすい。もう一つのし掛けとして査定依頼日をピッチイベントの当日に設定することで、今日頼むといつ販売が完了するのかを、思い浮かべやすくした」と、身近な言葉やツールを用いることで、家の売却という人生で何度も経験する人は少ないであろう事柄を自分ごととして伝える工夫をしている。

すむたす買取の最大の特徴である「最短2日」を従来サービスと比べるための図表。カレンダーを使うことで日数表現をわかりやすくしたほか、依頼日をプレゼン当日にすることで、身近に感じてもらいやすくした
すむたす買取の最大の特徴である「最短2日」を従来サービスと比べるための図表。カレンダーを使うことで日数表現をわかりやすくしたほか、依頼日をプレゼン当日にすることで、身近に感じてもらいやすくした

 角氏がプレゼンする上で、念頭に置いているのはTPOだという。「企画書にもTPOみたいなものがあって、相手や状況に合わせて最適化することを第一にしている。すむたすの手掛ける事業は前例があまりなく、理解してもらいにくいことも多い。それを前提として、わかりやすく伝えることを意識している」という。

2冊の参考書籍と「カッコイイ」ジョブズ氏のプレゼン

 主に参考にしている書籍は「プレゼンテーションzen」(ピアソン桐原)と「ノンデザイナーズ・デザインブック」(マイナビ出版)の2冊。「どちらもシンプルさを追求している内容で、資料作成をする際は指針にしている」という。

 「自分が見て、カッコイイと思うプレゼンをするのはやはりアップルのスティーブ・ジョブズ氏。真似はできないが、夢を語りかけるようなテンションが素晴らしい。真似をすることはおこがましくてできないが、立ち振舞には学びがあると思っている」と話す。

 最近はオンラインでのプレゼンが増えてきた。それに対しては「オンラインでは、PCなどで見ていただく機会が多く、プレゼン資料は端まできちんと見えるため文字量を多くしている。ただ、相手の反応がわからないため、相当やりづらい(笑)。そこを補うためにも、資料にメッセージを多く盛り込み、完結できるようにしている」とした。

【次ページのダウンロードボタンから、今回紹介した企画書全ページをPDFでダウンロードいただけます。なお、ダウンロードするにはCNET IDが必要になります】

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