親のかけたスマホ制限を自力で解除する子どもたち--逆に自分から「制限」する子も

 「コロナ禍での在宅で、子どもたちのネットやゲームの利用時間が増えた」と多くの先生や保護者から聞いている。「利用時間が増えたことで問題も増えている。学校が再開してしばらく経つが、まだ利用時間は戻ってないようだ」。同様の結果が見て取れる調査結果も多い。

 中高生たちはネット依存に対してどのように向き合っているのだろうか。iPhoneやiPadなどのiOS端末を使う中高生を例として見ていきたい。

自力でスクリーンタイムを解除する子どもたち

 親がスクリーンタイム機能で制限をかけてもその裏をかき、制限を解除することに命をかけている子は少なくない。「誕生日などではないランダムなパスワードにしていたのにどうやってわかったのか」とある保護者は首を傾げていた。便利なスクリーンタイム機能だが万能ではなく、解除することもできるのだ。

 「親からスクリーンタイムで制限されてて、でもどうしても使いたくて、ネットで質問をしたことがある。『親に制限されてるけどどうしてもゲームがしたいから解除したい』と素直に書いたら、親切な人が教えてくれた」とある男子中学生はいう。

 いくつか方法があるが、そのうち一つは時刻設定を変える方法だ。アプリごとにかけられた制限時間を超えると、アプリのアイコンが黒っぽくなる。これをタップすると、制限時間となった旨の表示が立ち上がり、スクリーンタイムのパスワードを入力しないと使えない状態となっている。

 しかし、制限を解除する方法がある。設定の「一般」から「日付と時刻」を選び、「自動設定」をオフにして日付を明日以降にするだけだ。元の状態に戻っているアプリをタップすれば、通常通り使えてしまうというわけだ。「遊んだ後はまた日付を戻しておけばばれない」と、丁寧なアドバイスまでついていたという。

 他の保護者から、「子どもが自力で方法を探してスクリーンタイムを解除していた。子どものスマホを使いたいという欲求を甘く見ていた」と聞いたときも、この方法だった。「もうとっくに制限になっているはずなのに遊んでいる姿を見て、おかしいと気がついた」。

 これ以外にも方法があるようで、インターネット上を検索するといろいろな方法が見つかる状態だ。中にはすでにアップデートでできなくなったやり方もあるようだが、ご紹介した方法はまだ使える上、インターネット上で裏技として堂々と紹介されているものだ。

利用時間を「自分から制限」する子どもも

 子どもたちにおけるスマホやタブレットの利用時間は増加傾向にあり、依存傾向が強まっている子は多い。ネットの利用時間が増えていることは事実だが、そのことに対してどう振る舞うのかは子どもによって大きく異なる。

 「ついついYouTubeを長く見過ぎちゃったり、ゲームやSNSの時間が長くなりすぎちゃったりする。でも本当はもっと勉強しなきゃいけない時期なので、スクリーンタイムを使っている」とある女子中学生はいう。受験生なのもあり、親ではなく、自分を律するために自らスクリーンタイム機能を使っているというのだ。

 悩みは、一度スマホを使い始めるとついつい時間が経ってしまうことだった。友だちから連絡がきて気づいたら3時間近くLINEをやり取りしていたこともある。そこで、スクリーンタイム機能を自ら使い始めたというわけだ。

 具体的には、まずスマホの総利用時間を確認し、利用状況を確認。やはり長過ぎると感じたため、続いてアプリの利用時間制限や休止時間を設定して利用時間を制限しているという。「LINEとかゲームのアプリの通知をオフにしたり、友だちに『夜は9時までしか返事できない』と言って、スマホを見る時間を減らすようにしている。気になって見てしまうアプリは削除したこともある」。

 通信教育にiPadを利用しているZ会では、スクリーンタイムを自分を律するために利用する方法を紹介しているが、これがかなり近い。

子どもが「制限したい」と思うことが大切

 ご紹介したように、本当に使いたいと思ったり制限を解除したいと思ったときは、ネットで検索したり、質問すれば対処できるような状態だ。友だちや友だちの兄弟などに聞いたという例もある。しかし、制限が無意味というわけではない。SNSやゲームなどはもっと使いたくなるようにできており、自力だけでは制限が難しいことが多いものだ。そのような場合に、決めた時間でやめるきっかけになるのだ。

 子どもが本格的に依存状態となってから無理やり制限しても、使いたい子どもを制限することは難しいだろう。そうではなく、子どもが自ら「長く使いすぎている」「利用を制限したい」と思えることこそが大切だ。そのためには、子どもの利用時間を見守ったり、制限機能でやめるきっかけを用意してあげることが重要だ。ぜひ、子どもがうまく利用時間をコントロールするための手助けをしてあげてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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