成層圏に飛行させた無人航空機を通信基地局のように運用し、広域のエリアに通信サービスを提供する、いわゆる“空飛ぶ基地局”を展開する、ソフトバンク子会社のHAPSモバイルは10月8日、9月21日(米国山岳部時間)に、米国ニューメキシコ州のSpaceport America(SpA)で、ソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「Sunglider(サングライダー)」の5回目のテストフライトを実施したと発表した。
このテストフライトでは、自律型航空式のHAPS(High Altitude Platform Station)において、飛行高度6万2500フィート(約19キロメートル)を記録。20時間16分の飛行時間のうち、成層圏には5時間38分滞空した。加えて、飛行前に充電したバッテリーとソーラーエネルギーだけでフライトを完結することにも成功。最大風速58ノット(秒速約30m)、最低気温マイナス73度という厳しい環境の中、テストフライトを完遂させたという。
同社によると、機体開発の開始から約3年という短い期間で、成層圏での飛行に成功したという。また、今回のテストフライトでは、ペイロードと呼ばれる成層圏対応無線機(Loonとの共同開発)によるインターネット通信試験にも成功した。同社によると、自律型航空式のHAPSによって、成層圏からLTEの通信に成功するのは世界で初めてだという。
搭載した成層圏対応無線機は、世界最大級および、最重量(一式約30kg)となっており、飛行中にMIMO技術を用いたLTE通信を約15時間(成層圏では5時間38分)実施した。通信試験では、成層圏対応無線機を通してインターネットに接続されたスマートフォンを持つ、SpAにいるLoon社やAeroVironment社のメンバーと、日本にいる同社のメンバー間でビデオ通話を行った。
700MHz帯(LTE Band 28)の周波数によるSungliderからのサービスリンクと、70〜80GHz帯の周波数によるSungliderと地上のゲートウェイをつなぐフィーダーリンクによって構成。Sungliderからの電波は、既存のスマートフォンなどの端末で直接受信できるため、SpAにいるLoon社やAeroVironment社のメンバーは、普段使用しているスマートフォンで低遅延かつ高解像度なビデオ通話ができたという。
そのほか、今回のテストフライトでは、HAPS向けとして検討が求められている周波数帯の一部について、国際電気通信連合の無線通信部門(ITU-R)のSG3に提案されている干渉評価用のHAPS電波伝搬モデルを評価するための電波伝搬基本測定を実施。これによって、HAPS向け周波数帯の国際標準化に向けて、成層圏・地上間の電波伝搬データの取得に成功しているという。
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