日本の老舗大企業が持つ力を引き出す--膨大なデータで新規事業開発を支援する「MONJU」

 日本能率協会総合研究所 マーケティング・データ・バンク(以下、MDB)、アツラエ、スペックホルダーの3社は、デジタルを活用した新規事業創出を目指す企業を一気通貫で支援する「MONJUプログラム」の提供を開始した。

「MONJUプログラム」
「MONJUプログラム」

 このプログラムは、リサーチからコンサルティング、UX/UIデザイン、システムの構築、プロモーション活動まで幅広く支援するもので、3社に共通しているのは「老舗企業の新規事業開発を支援し、日本企業すべての底上げにつなげたい」という思いだ。

 日本市場を見渡すと、多種多様な形で新規事業創出を支援するサービスが無数に存在する。それは、大企業は既存事業を維持しながら、新たな事業を生み出さなければ生き残れないが、現実には旧態依然の発想では次の収益の柱になるような事業アイデアを生み出すことが容易ではないためだ。

 そのため、今ではレッドオーシャンとなった新規事業創出支援サービス市場だが、なぜ新たな業務に3社が取り組むのだろうか。長らく新規事業創出支援を手がけてきたスペックホルダー代表取締役社長の大野泰敬氏は、その理由を次のように語る。

 「新規事業創出に取り組む事例は数多くあるものの、成功例は決して多くない。自身の経験を振り返ると、(勝率が低いケースは)データが圧倒的に不足している。デジタル、そしてモバイルに対する知識が必要だ。そしてデータは羅針盤になる」。その上で「実力と実績を持つ企業と組むのがベストと判断」(大野氏)した結果、データや知見を備えたMDBとアツラエに声をかけたという。

日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 カスタマーセンター部長の菊池健司氏(左上)、ジェーエムエーシステムズ 兼 アツラエ代表取締役社長の坂倉猛氏(右下)、スペックホルダー 代表取締役社長の大野泰敬氏(左下)
日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 カスタマーセンター部長の菊池健司氏(左上)、ジェーエムエーシステムズ 兼 アツラエ代表取締役社長の坂倉猛氏(右下)、スペックホルダー 代表取締役社長の大野泰敬氏(左下)

 2月末にジェーエムエーシステムズ(以下、JMAS)の100%子会社として設立されたアツラエは、スマートフォンやタブレット向けのアプリ開発、UI/UX関連のコンサルティングワークショップを開催する企業である。

 JMAS 兼 アツラエ代表取締役社長の坂倉猛氏によれば、「日本能率協会の一員として、ソフトウェア産業の黎明期である1971年に設立。それから大型ホスト開発など幅広く手がけてきたが、10年前からモバイルやクラウドにも積極的に取り組んでいる。アツラエの前身となるJENAのクリエイティブコンサルティング事業部とは、互いに協力しながらモバイル分野で活動してきた。両社を合わせると開発した法人向けアプリは2000を超える」という。

 同社はアツラエが持つUI/UXデザイン、JMASのシステム開発能力を組み合わせることで、新規事業開発に貢献できると自信を見せる。

 メンバー企業2000社超のビジネス情報提供サービスを運営するMDBも、1969年に日本能率協会総合研究所の事業部門として設立され、50年を超える歴史を持つ。官公庁や民間調査、海外ネットワークといった広範な情報源を持ち、約50名を数える情報コンサルタントを通じて、企業の技術用途開発や現業の成長、新規事業開発に携わってきた。

 MDBの強みは、昭和44年から破棄していない膨大なデータだ。「倉庫に何千箱もの紙媒体がある。版権や著作権の関係でデジタル化が難しく、老舗の図書館をイメージしてもらうと分かりやすい」(日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 カスタマーセンター部長の菊池健司氏)。

 日本では1995年ごろから普及が始まったインターネットだが、残念ながら古いデータほど見つけにくい。だが、MDBには「50年分のデータがある。また、新たな市場調査をする部署を設けて、高齢者など特定ニーズをくみ上げることも可能。『新規事業の入り口となるデータ』を提供できる」(菊池氏)ことが最大の強みとなる。

 このように三者三様の強みを持ち寄り、「3人寄れば文殊の知恵」のことわざから名付けたMONJUプログラムは、日本の老舗大企業が持つ力を正しく発揮させることが主たる目的だ。

「MONJUプログラム」の支援内容
「MONJUプログラム」の支援内容

 スペックホルダーの大野氏は「日本の老舗企業は培ってきた企業文化、新規開発力、知見を生かしきれていないことが多い。また、デジタルで(データや技術力を)表現する方法も知らないことが多い。そこを引き出して新規事業創出に結びつけたい」と意気込みを語る。

 MONJUプログラムでは、スペックホルダーは企画、アツラエはIT、MDBは調査と異なる役割を担う。新規事業開発が企画段階の場合は、MDBのデータやスペックホルダーによる事業戦略が中心となり、サービスイメージを開発する段階に入るとスペックホルダーとアツラエが参画する。顧客の検討段階に応じて各社が持つ資源を提供する仕組みだ。

3者のそれぞれの役割
3社のそれぞれの役割

 すでに複数の大企業で案件が走り始めているという同プログラムだが、今後のアイデアとしてスペックホルダーは、「アナログ作業をデジタル化し、事業全体をサポートするシステム開発を検討している。たとえば市場調査データを依頼したら、瞬時にグラフ化してダウンロード可能にする。事業計画書や資料の自動作成など、新規事業創出の支援に取り組みたい」(大野氏)と語る。

 MDBは「入り口から出口まで老舗企業を支援し、(新規事業開発の)成功率を3社で高めていく。もう1つは念願のデジタル化。完成すると魅力的なプラットフォームとなる。我々の頭脳をお披露目したい」(菊池氏)。アツラエも「システム開発にこだわってきたJMASがアツラエを得て、本当の意味で顧客の事業開発支援に挑めると考えている。デジタル時代は自分たちの活動範囲が広がった。我々の経験が顧客支援につながることを楽しみにしている」(坂倉氏)と展望を語った。

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